働き方改革とは何だっけ?

 働き方改革とは何だろう。政府が進める大改革の大義は「一億総活躍社会の実現」とされている。厚生労働省のホームページには、“「働き方改革」の目指すもの”として次のように書かれている。

 “我が国は、「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」「育児や介護との両立など、働く方のニーズの多様化」などの状況に直面している。こうした中、投資やイノベーションによる生産性向上とともに、就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境を作ることが重要な課題になっている。

 「働き方改革」は、この課題の解決のため、働く方の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現し、働く方一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指しています。”

 少子高齢化の進行により、我が国の生産年齢人口は1995年の国勢調査を、総人口は2008年をピークに減少に転じている。総人口に占める65歳以上人口の割合である高齢化率は2015年時点で26.6%とすでに4人に1人が高齢者という日本社会だが、2020年には30%を超え、2065年には38.4%と推計されている。

 経済活動の側面から見ると、労働力不足が見込まれ、一般的な消費が先細る一方で、医療サービス等の需要は高まることが予想され、「働き方改革」を通じて労働生産性と賃金を上げ、生産と消費の双方を支えていくことが重要な課題といえる。

 私たちが社会全体として、精神的にも経済的にも豊かな暮らしをしていくために、「働き方改革」が欠かせなくなっている。

 過労死ラインを超える職場とは?

 働き方改革の中では、労働生産性と賃金の向上、生産と消費の双方を支えていくことが重要な課題とされてはいるが、労働条件が良くなっているという実感はなかなか感じられない。そんななかで過労死ラインという言葉が目についた。

 過労死ライン(かろうしライン)とは、日本において、健康障害リスクが高まるとする時間外労働時間を指す言葉。労働災害認定で労働と過労死・過労自殺との因果関係判定に用いられる。

 発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働(1日8時間勤務で1か月の労働日を20日として月160時間の労働とする。1日4時間の時間外労働をして、1日12時間勤務が続く状態。

 厚生労働省は、脳や心臓疾患による過労死の労災認定基準として、発症前1カ月間に約100時間、または発症前2~6カ月間に1カ月あたり約80時間を超える時間外労働(残業)があった場合に、過労死の危険性が高まり、業務と発症との関連性が強いとしている。

 1日12時間労働と聞くと驚くが、私の職場は勤務日ではほとんど12時間労働だ。土日に働くことも多い。それが当たり前という感覚である。過労死ラインはとうに超えている。それが続いていて死なないというのは、生産性が著しく低下しているか、健康状態も悪化しているかである。

中年男性が11時間を超えて働くと心筋梗塞リスクが増加

 そんな中、1日に11時間を超えて働く中年男性は、標準的な勤務時間の男性と比べて急性心筋梗塞を起こすリスクが1.6倍になる...。こう警告する研究成果を国立がん研究センターと大阪大学医学部(公衆衛生学)の研究グループが3月15日発表した。

 働き過ぎは心臓に負担をかけることは容易に想像できるが、1万5千人を対象にした大規模調査が働き過ぎは少なくとも心臓に悪影響があることを裏付けた形だ。50代の男性会社員のリスクは2.6倍だったことから特に注意が必要なようだ。

 労働時間の長い人は標準的な労働時間の人と比べて健康状態が悪くなることは明らかだが、多くの日本人を対象に長期間調べた調査はこれまでなかったという。国立がん研究センターと大阪大学の研究グループは、1993年に茨城、新潟、高知、長崎、沖縄の5県に住んでいた当時40~59歳の男性約1万5000人を対象に、労働時間を含めた生活内容や健康状態を2013年までの20年間追跡調査した。

 その結果、212人が急性心筋梗塞を発症していた。この数字を、心筋梗塞のリスクを高めるとされる喫煙や睡眠時間といった要因で差が出ないように疫学研究上の調整をして勤務時間との関係を分析した。すると、1日11時間以上働いていた長時間労働のグループは急性心筋梗塞になるリスクが標準的なグループと比べて1.6倍高かった。

 分析対象を会社勤務の男性に限ると、11時間以上のグループは7~9時間のグループと比べてリスクは2.1倍。11時間以上のグループの中でも調査開始時年齢が50~59歳の人に限定して分析するとリスクは2.6倍も高くなっていた。経営者や自営業の人は長時間働いてもリスクの上昇はみられなかった。長時間労働と脳卒中との関係についての関連性は確認できなかったという。女性については、急性心筋梗塞になる割合が男性に比べて低いなどの理由から今回は分析対象になっていない。

 同グループは、さまざまな生活習慣とがん、脳卒中、心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防や健康寿命の延伸に役立てる研究を続けている。今回の結果について「調査対象が地方の労働者であるため、都市部をはじめ、日本全体の労働者に対して一般化することには慎重にしたい」としつつも、長時間労働のために睡眠時間が短くなっての疲労回復が十分できなくなったり、精神的ストレスが増加することが関係しているとみている。

参考 サイエンスポータル: https://scienceportal.jst.go.jp/news/newsflash_review/newsflash/2019/03/20190315_02.html

ブログランキング・にほんブログ村へ 人気ブログランキングへ   ←One Click please