民間宇宙ロケットといえば...

 民間宇宙ロケットというと、米国が進んでいる。昨年世界で初めてアメリカの民間企業の宇宙船で国際宇宙ステーションに向かう計画が発表されている。アメリカ航空宇宙局(NASA)は、民間企業に資金を援助するなどして宇宙開発への参入を促しており、アメリカの宇宙開発ベンチャー、スペースXと大手航空機メーカーのボーイングが有人宇宙船を打ち上げ、国際宇宙ステーションに宇宙飛行士を送り届ける。

 スペースXは世界最強の自社ロケット「ファルコンヘビー」打ち上げに成功している。米航空宇宙局(NASA)ではなく、イーロンマスク氏が創業したベンチャーであることに驚かされる。開発に約10億ドルを投じたファルコンヘビーの積載能力は、現役で最大のロケットの2倍もある。再利用を目的とした第1段ロケット回収にも成功した。宇宙輸送に価格破壊を起こし市場を切り広げる試みは称賛に値する。

 日本はどうなのだろうか?日本の民間企業には残念ながら宇宙ステーションまで届くロケットを開発できる民間企業はこれまでなかった。しかし、今回、民間企業のロケットが高度100kmを超す宇宙空間に初めて到達することに成功した。

 打ち上げに成功したのは、元ライブドア社長で実業家の堀江貴文さんが出資する宇宙ベンチャー、インターステラテクノロジズ(IST)の小型ロケット「MOMO」3号機で、5月4日午前5時45分、北海道大樹町から打ち上げられた。

 日本の民間企業ロケット「MOMO」打ち上げ成功

 ロケットは数分後、民間単独のロケットとして国内で初めて高度100キロの宇宙空間に到達。打ち上げは成功した。機体は太平洋上に着水した。堀江さんはツイッターに「宇宙は遠かったけど、なんとか到達しました。高度約113km」と投稿した。

 MOMO3号機は全長9.9メートル、直径50センチ、重さ1150キロの液体燃料ロケット。市販の部品を使うなど低コストで開発した。今回の打ち上げ費用は数千万円。当初4月30日に打ち上げる予定だったが、燃料の液体酸素漏れが直前に分かった。部品の交換や発射場近くの強風のため、3度延期していた。

 ISTは、前身企業が始めた宇宙事業を継承して2013年に設立。MOMOで高度100キロ超の宇宙空間への到達を経て、高度500キロに重さ100キロ程度の小型衛星を打ち上げる新型ロケット「ZERO(ゼロ)」の開発をめざしている。

 MOMO1号機は2017年7月、打ち上げ約1分後に通信が途絶え、高度20キロから海上に落下。2号機は2018年6月、打ち上げ直後にエンジンが停止し、機体が落下して爆発した。

 2号機の失敗を受け、ISTは外部の専門家を含む対策委員会を設立。姿勢を制御する小型エンジンの誤作動が原因と特定し、エンジン内部の設計を見直し、打ち上げに近い状態での燃焼試験を初めて実施するなど対策を重ねていた。

 ISTが狙うのは、需要が高まってきた小型衛星の打ち上げ事業への参入だ。部品の高性能化により、衛星の小型化が進み、年間数百機が打ち上がる一方で、打ち上げは大型ロケットに頼っている。ただ、コストは最低数十億円と高く、他の衛星との相乗りで待ち時間が長いなどの不都合が多く、世界中で安価で小回りのきく小型ロケットの開発が進んでいる。

 ISTは、今回の成功を機に、ZEROの開発を加速させたい考えだ。商業化すれば、1回のコストは6億円以下、年数十回の打ち上げ需要を見込んでいる。早ければ2022年末に打ち上げる予定だ。(石倉徹也)

堀江貴文さん「やっと成功 ほっとしている」

 「インターステラテクノロジズ」の創業から関わり、現在、取締役を務める実業家の堀江貴文さんは午前10時から北海道大樹町で会見しました。

 この中で堀江さんは「やっと打ち上げに成功し、ひとまずほっとしている。ほぼパーフェクトに次につながる結果を残せた。打ち上げの直後、みんなが涙を流しているのを見て、心からよかったと思った」と述べた。

 今回のロケット打ち上げでは、機体にハンバーグを載せるというユニークな取り組みも行われた。この取り組みは、神奈川県相模原市の飲食店の運営会社が、ロケットを打ち上げる「インターステラテクノロジズ」のスポンサーになった記念で行った。

 ハンバーグは生の状態で、ロケットの機器類に影響を及ぼさないよう断熱材にくるみ、機体の上のほうにあるタンクの隙間に載せられた。ハンバーグは着水した機体から回収される予定で、会社の吉田茂司社長は「ロケットの機体は上昇する際に中が高温となるので、載せたハンバーグがどのような状態になっているのかも見てみたい。ばかげた取り組みにも見えるが、このようなことができるのも民間開発ならではだと思う」と話した。

 堀江さんも「おもしろい、くだらないことに使われてこそ宇宙産業のマーケットは大きくなると期待している。日本は海に囲まれ、工作機械の工場もあって、宇宙基地としては世界一の立地だと思う。今後、工場を拡張し人も雇って、産業振興にも寄与して、大樹町を日本の有力な宇宙港として発展させたい」と話した。

 「インターステラテクノロジズ」の稲川貴大社長は「打ち上げの瞬間は興奮する暇もなく数字を追っていたが、高度が100キロを超えたと分かった瞬間、思わず声が出た。宇宙空間に到達するという大きな目標を達成し、大成功だった。低価格のロケットが技術的に可能と実証できたと思う。今後さらなるコスト削減と精度が上がるようにロケットを改良して、衛星を軌道に投入する次の開発につなげたい」と話した。

 ミニロケット開発競争

 北海道の「インターステラテクノロジズ」が開発に取り組んでいるロケット「MOMO」のように全長が10メートル前後の小さなロケットは「ミニロケット」と呼ばれ、ここ数年各国の民間企業が開発に力をいれている。

 去年1月には、アメリカのベンチャー企業が開発した全長17メートルのロケットが、超小型衛星の打ち上げに成功した。

 また、去年5月には、中国のベンチャー企業も軍の協力を得て全長9メートルのロケットの打ち上げに成功している。

 日本でも、「インターステラテクノロジズ」のほかに、キヤノン電子など4社が共同で設立した「スペースワン」が2021年の打ち上げを目指し、ロケットの開発を進めている。背景には超小型衛星を打ち上げる需要の高まりがある。

 「インターステラテクノロジズ」も、今回の「MOMO」の成功を踏まえて、2023年には超小型衛星を打ち上げるロケットを開発、打ち上げる計画を打ち出している。

 超小型衛星は、重さが数キロから数十キロ程度と軽量で、製造も安価なことからベンチャーや中小企業、大学なども開発を進めている。

 また、数十基の衛星を同時に運用すると地球全体をリアルタイムに観測できるため、漁場や農場、森林などの資源管理や災害の被害の把握など、幅広い用途が期待されている。

 アメリカのベンチャー企業「プラネット」は、超小型衛星130基以上を使い、地球全体を常時撮影していて、画像データを企業などに販売している。日本でもベンチャー企業の「アクセルスペース」が、地上の様子を定点観測するビジネスにつなげようと、2022年までに50基の超小型衛星を打ち上げる予定だ。

 また、福岡にあるベンチャー企業「QPS研究所」は、レーダーで夜間も地上を撮影できる超小型衛星をことしから打ち上げ2024年ごろに36基の運用を目指している。

 さらに、東京のベンチャー企業、「Synspective」も25基のレーダー衛星の運用を目指して、2020年に最初の衛星を打ち上げる計画だ。

 アメリカの調査会社によりますと世界で打ち上げられる超小型衛星は2010年に、年間30基ほどでしたが2022年には、457基にまで増えると予測している。

参考 NHKnews: https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190504/k10011905021000.html