夏といえば海、海といえばマイクロプラスチック?

 夏といえば「海」、ギラギラ太陽、熱い砂浜、海からの風が気持ちが良い。遠くまで見渡せる水平線、波の音...。きれいな砂浜を歩くのもよいのだが...海岸を歩くとどうしても気になるのがゴミ。植物の枯れ枝とともにプラスチック製の袋や容器、キャップなどが混入している。

 地元の人が大きなプラゴミなどは海岸清掃をしていて環境を保護しているのだが、それでも小さいものはあたり前のように存在し、私たちももう慣れてしまっている。

 この中には、さらに細かくなった「マイクロプラスチック」も存在する。マイクロプラスチックとは、5 mm以下のプラスチックのこと。プラスチックのゴミがきちんと回収されずに雨に流され川に入ってしまうと、海に運ばれる。その一部は波に乗って砂浜にたどり着く。もともとは大きなサイズだったペットボトルなどのプラスチックも、海の中や砂浜で、紫外線を浴びてボロボロになっていく。

 プラスチックの洗濯ばさみも、外にずっと出していると、陽に当たり続けてだんだんボロボロになっていく。それが海や砂浜で、さまざまなプラスチックゴミで起きる。ボロボロに小さくなっても、プラスチックはプラスチックのまま。生き物がマイクロプラスチックから栄養を吸収したり、分解したりすることはできない。

このままだと、海の生き物も、私たちも危ない?

 海の生き物はプラスチックを食べてしまいる。実際に、魚や貝、動物プランクトン、海鳥などの体からはさまざまな種類・大きさのプラスチックが見つかっている。目に見えないほど小さなプランクトンも、小さなマイクロプラスチックなら食べられる。

 プラスチックには、その表面に有害な化学物質を吸着しやすいという特徴がある。そして、プラスチックをたくさん食べた海鳥の体では、化学物質が多く蓄積しているという報告がある。

 海の生き物がプラスチックを食べてしまうと有害物質が体に取り込まれると懸念されている。そしてこれは海の生き物だけの問題ではない。海の生き物を食べる私たちにも影響すると考えられている。人体への悪影響についてはまだきちんと調べられてはいないが、人の便からもマイクロプラスチックは見つかっている。

 いま、海に流入するプラスチックの量は、年間およそ800万トン。ジャンボジェットの重さにして5万機分にも相当する。この大量のプラスチックは、元をたどればすべて私たち人類が作り出したもの。このままプラスチックゴミが海に流れ込み続けたら、海はどうなってしまうのだろうか?プラスチックゴミの問題を解決できるのは、プラスチックを作り出した私たち自身ではないだろうか。

どこに、どのくらい、どんなプラスチックがあるのか?

 そんな海や砂浜のプラスチック問題を解決するために、まず大事なことのひとつは現状を把握すること。だが、どこに、どのくらい、どんなプラスチックがあるのか、そしてそれらがどこからやってきたのかは、あまりわかっていない。そんな中、神奈川県の相模湾の海岸に注目してマイクロプラスチックの実態を明らかにしよう!というプロジェクトが動いている。主導するのは、神奈川県環境科学センターの三島聡子さん。このプロジェクトとはどんなものだろうか。

 クラウドファンディングで、資金と関心・参加者を集める。三島さんたちのプロジェクトでは、クラウドファンディングを活用中。研究支援に特化したクラウドファンディングサイト「アカデミスト」で『相模湾のマイクロプラスチック汚染実態を明らかにしたい!』と題して、プロジェクトに賛同して資金を支援してくれる人を募集している(8/19が期限)。

 また同時に、無償で海岸のマイクロプラスチックを採集してくれる人を募集中(8/19以降も募集)。なぜこれが必要なのか?

 2017年度から、三島さんを中心としたセンターの職員のみなさんで、相模湾のいくつかの海岸でマイクロプラスチックの調査を行った。その結果わかったのは、海岸によってマイクロプラスチックの量も種類も異なるということ。

 相模湾全体の現状を知るためには、各海岸で、たくさんの数の調査を行わなければならない。しかし、そのためにはセンターの職員だけでは限界がある。

 そして分析にはお金がかかるので、研究資金の支援があると、スムーズに研究を進めやすくなる。「マイクロプラスチックは元をたどれば私たちが出したゴミ。嵐の日に外に出しっぱなしにしたプラスチックの洗濯ばさみや植木鉢が風に飛ばされたら、最終的に行きつくのは海や海岸なんです。このプロジェクトへの支援・参加を通して、多くの人にプラスチックの問題を考えてほしいし、少しだけプラスチックの使い方を変えてもらえたら嬉しいです。天気が荒れる日はプラスチック製のものを家の中にしまう、というだけでも意味があるはずです」と三島さんは語る。

 マイクロプラスチックの調べ方

 次に、どうやってマイクロプラスチックを採集して分析するかの流れを説明する。採集方法は、誰でもできるよう、事前調査の時に模索して決定した。採集したマイクロプラスチックがどの素材のプラスチックであるかを特定するには、実験室にしかない分析装置が必要だが、見た目だけでわかりやすいものもある。相模湾はちょっと遠い......という方は、お住まいの近くの海で拾ってみるだけでもおもしろい発見があるかもしれない。

 それでは、まずは採集の手順。必要な道具は、参加者に無料で貸し出している。その道具を持って、海岸へ行く。海岸のゴミが流れ着いてたまっている場所をみつけ、40 cm四方のロープの枠を置いて固定する。

 その中の砂を深さ3 cm程スコップで集め、2つのふるいを重ねたところに入れていく。上のふるいは5 mm、下は2 mmの目。こうしてふるいにかけると下のふるいには2~5 mmの大きさのものが残る。

 今回はこのサイズのマイクロプラスチックのみに注目。ふるいに残ったものをバットに広げ、プラスチックと思われるものを取り出す。カラフルな色のついたものは、だいたいプラスチックである。他にも、白やグレーのものもある。どんなマイクロプラスチックが採れたか、観察をしてみよう。人工芝の破片やクッションビーズの中身は、比較的よく見つかる。

 マイクロプラスチックの分析

 採集したマイクロプラスチックはセンターまで持ってきてもらい、分析できる。ここからはセンターの職員さんの作業。まずは顕微鏡で、大きさを測定しつつ写真を撮る。その後、素材を特定するために赤外線を照射する装置にかける。赤外線の吸収の仕方を見ると、その特徴からどんなプラスチックなのかがわかる。

 実際に分析をする上での苦労についても聞いてみると、「小さいものをひとつひとつ見ていくので、かなり細かい作業です。もっと楽に、一気に測定できる装置もあるのですが、高くてなかなか買えません」と教えてくれた。効率的に研究を進めるにはお金がかかる...!

 こうして分析したマイクロプラスチックの材質や形態は、採集してくれた人に個別でお知らせしてくれる。自分が拾ったものがどんなマイクロプラスチックだったかわかるとは、興味深い。そして、たくさんの人が拾ってくれたマイクロプラスチックの結果を集めて、三島さんたちは相模湾全体のマイクロプラスチック分布マップを作る。

 細かいマイクロプラスチックをひとつひとつ扱う根気のいる作業ですが、協力してくれるみなさんのためにも、相模湾のマイクロプラスチック問題解決、ひいては地球全体のマイクロプラスチック問題解決につなげるためにも、がんばって!そしてこのブログを読んでいるみなさんも、ぜひ採集やクラウドファンディングの支援に参加してみてはいかが?

参考 マイナビニュース・Miraikan: https://news.mynavi.jp/article/20190809-874871/

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