日本発37番目の新血液型承認

 血液型というとABO型でふだんは性格診断や人間関係の相性として話題になることが多い。実際は手術や事故などで、輸血が必要になるとき問題になるものだ。赤血球については同じ血液型であれば固まることはないが、O型はどの血液型の人にも輸血できる。AB型の人にはA型,B型からも輸血できるが、AB型からは他の血液型に輸血できない。血漿ではこの逆の関係がある。

 その他、Rh型(+)、Rh(-)という血液もあり、この型は同じでないと輸血できない。ちなみに父はA型のRh(-)で200人に1人の血液型だった。高校1年の時父が交通事故に遭い数週間入院したことがあり、たいそう心配したが無事に天寿をまっとうした。

 今回、ABO型やRh型といった血液型の分け方に続く37番目の血液型を、国立国際医療研究センターや日本赤十字社のグループが見つけた。国際輸血学会に認められたのは「KANNO(カノ)」と呼ばれる血液型で、日本発の血液型が国際的に認められるのは初めてである。

 KANNOは1991年に福島県立医大付属病院で初めて確認されたもので、Rh(+)とRh(-)のように、KANNO(+)と(-)があり、99.5%の人は(+)型だという。

 よく知られた血液型はABO型で、A、B、O、AB型の4種類がある。このほかにも血液成分の違いによって血液型はたくさんあり、同じA型でもRh(-)の人にRh(+)の血液を輸血すると成分が固まってしまう。命にかかわりかねないため、医療現場では輸血する前に患者の血液を取って輸血と混ぜ、固まらないか確認している。(朝日新聞 10/24)

 新しい血液型「KANNO」プリオンタンパク質に関係

 2019年6月、福島県立医大総括副学長の大戸斉教授(輸血医学)らが新しい血液型「KANNO(カンノ)」を発見し、論文が米国の学会誌に掲載された。スイスである国際輸血学会に申請していたところであった。

 血液型は血球の表面などにある抗原と呼ばれる物質で決まり、一般にも知られるABOやRhをはじめ36種類の分類がある。KANNOは1991年、同大病院で採られた血液から未知の抗原の存在が浮上し、提供者の名前を取って暫定的に命名されていた。

 大戸氏らは東大、日赤と共同で血液型が「KANNOマイナス」の18人の遺伝子を解析した。体内で作られるプリオンと呼ばれるタンパク質の組成の一部を変化させる遺伝子変異が全員にあり、このプリオンが新たな血液型を決める抗原であると分かった。

 大戸氏によると、新しい血液型の特定に取り組み始めた10年ほど前は1人分の遺伝子解析に億単位の費用を要した。しかし近年、解析装置の急速な進歩によりコストが数十万円まで下がり、一気に研究が進んだという。

 プリオンは脳に多く含まれるタンパク質で、構造が異常化して脳にたまるとクロイツフェルト・ヤコブ病などのプリオン病を引き起こす。大戸氏は「KANNOとプリオン病の関係についても今後研究が進むことを期待したい」と話した。

 血液型とは何か?

 血液型とは、血球の表面または内部にある血液型物質(抗原)の有無によってつける個人の区別であり、「ヒトの血清学的体質」、「血液の個人性」、「個人を血清学的に識別する方法」ともいえる。

 血液型は初め血液の型として出発してきたが、その後の研究によって血液以外(他の体液や細胞、毛髪のように生きていない組織も)にも分布する特徴であることが分かっており、内容的にその意義が著しく広くなっているため、慣習的に今でも「血液型」と呼んでいるが、厳密には今日の観点では不適当になってきている。ヒトの血液型として国際輸血学会が認定している型は37種類ある。

 上記のように抗体と抗原による反応をみるため、血液の成分が違っても判定は可能で、異種動物はもちろん、血液のない細菌にも血液型は存在する。

 抗原は数百種類が知られており、その組み合せによって決まる血液型は膨大な数(数兆通り以上という説もあり)になる。世界を捜しても、一卵性双生児でもない限り自分と完全に同じ血液型をしている人はいないとすら言われる。この性質を利用して畜産、特にサラブレッド生産の分野において血液型が親子関係の証明に使われていた(現在は直接DNAを鑑定する手法が用いられる)。

 輸血をする場合、ABO式血液型など一部の分類は自然抗体が形成され、型違いの血液を混ぜると凝集や溶血が起きるため、型合わせする必要がある。また、血液型によって、凝集や溶血反応はそれぞれである。

 また、70万人に1人程度といわれている低確率で一人の人間が複数の血液型を持っている場合は、「血液型キメラ」と呼ばれる(例:A型99% AB型0.1%等)。血液型と性格との関連性には科学的根拠がない。いくつかある血液型を紹介する。

 ABO式血液型

 赤血球による血液型の分類法の一種。1900年から1910年ごろにかけて発見された分類法で、最初の血液型分類である。

 A型は赤血球表面にA抗原を発現する遺伝子(= A型転移酵素をコードする遺伝子)を持っており、血漿中にB抗原に対する抗体が形成される。B型は赤血球表面にB抗原を発現する遺伝子(= B型転移酵素をコードする遺伝子)を持っており、血漿中にA抗原に対する抗体が形成される。

 O型はどちらの遺伝子も持っておらず、赤血球表面にA/B抗原はない。血漿中にA抗原、B抗原それぞれに対する抗体が形成される。AB型は赤血球表面に両方の抗原(A抗原およびB抗原)を発現する遺伝子を持っており、血漿中の抗体形成はない。

 Hh式血液型は1932年に発見され、ABO式血液型の元になるH物質(=フコース)が抗原。これがない場合(h型)はボンベイ型になり、A型やB型の遺伝子を持っていてもA抗原やB抗原が赤血球に結合できなくなる。

 Rh式血液型

 赤血球膜の抗原による分類法。1940年ごろから明らかにされた。現在は40種以上の抗原が発見されている。 そのうち主要なものはC対c・D対d・E対eの3対6種類の因子で、その中でも特に強い反応をするD抗原の有無についての情報を陽性・陰性として表示することが最も多い。

 すなわち、Rh+(D抗原陽性)とRh-(D抗原陰性)である。 なお、抗原Dは「抗原Dがあれば大文字D、なければ小文字dの表現型。」になるため、Dとd双方の遺伝子を持つ場合は普通にD抗原が作られるので完全に優性遺伝をする(遺伝子がDDでもDdでもD型、ddのみd型)が、CやEの場合は「C(E)という種類の抗原がある」と大文字、「c(e)という抗原がある」と小文字の表現型になるので両方の遺伝子を持つと不完全優性遺伝をして、遺伝子型がCCとCcとcc、EEとEeとeeでそれぞれ表現型が異なるためCcやEeという表現型になる、このため基本6因子だけでも18通りの血液型がある。

 Rh-型の人にRh+型の血液を輸血すると、血液の凝集、溶血などのショックを起こす可能性がある。Rh-型の女性がRh+型の胎児を妊娠することが2回以上になると病気・流産の原因となることがある。日本人の99.5%はRh+である。

 MNSs式血液型

 MN式は1927年ランドシュタイナーとレヴィンによってウサギを免疫して得られた血清より抗体が発見され、抗M、抗Nとの反応で表現型はM・MN・Nの3通りに分けられ、この血液型は遺伝するが、ABOの遺伝子と異なりM遺伝子とN遺伝子に優劣はなく、両方ある場合はMN型となる。

 一方Ss型は1947年にワルシュとモントゴメリーらによって大文字S抗体、1951年にレヴィンにより小文字s抗体が新生児溶血性疾患の子供を持つ女性や頻繁に輸血を受けて副作用を起こした患者の血清中に発見された、表現型はS・Ss・sの3通りに分けられる。白人190人で調べたところS因子はM因子に明確な相関性があり、S陽性の比率がM型は73.4%なのに対し、MN型は54.1%、N型は32.3%となる。

 後に本来は別々の血液型だが遺伝子の位置が染色体上で近く、見かけ上一緒に遺伝することが分かったため、現在は一緒に扱うようになっている。

 ABO式と異なりMN式の抗体は体温で反応しにくいため輸血時に問題を起こしにくいが、まれに抗M抗体が不適合妊娠・輸血時に問題を起こす場合があることと、一緒に持っているSs式抗体は元々新生児溶血性疾患の子供を持つ女性や頻繁に輸血を受けて副作用を起こした患者の血清中に発見されたことからも分かるように、自然抗体ではないが問題を起こす。

 P式血液型

 1927年にランドシュタイナーらによってウマの血清より抗体が発見された型で、表現型はP1、P2、P1K、P2K、pとあり、P1型=P1抗原とP抗原、P2型=P抗原、P1K型=P1抗原とPK抗原、P2K型=PK抗原、p型=抗原なしという組み合わせだが、P1KとP2K(いずれも稀血)は本来はGloboside式血液型による型で、こちらの遺伝子を持っていないとP抗原が完成されずに不完全なPK抗原ができてしまうため、P抗原を異物として自然抗体を持つようになる。

 このため本来のP式は大半の人にあてはまる抗P1抗体に反応する(P1型、日本人の35%)かしない(P2型、同65%)であり、このため表現型をP(+)(=P1)、P(-)(=P2)と書く場合もある。

 Q式はUM型とも呼ばれ[14]1935年に日本の今村昌一がブタの血清から抗体を発見し、ブタ血清の抗体に反応するこの抗原を「Q」と名付け、Q抗原を有する血球を大文字のQ型、持たぬ血球を小文字のq型としたが、PとQの抗体は同じものであるという指摘が1968年にはすでにされており、現在は先に発見されたP式にまとめられている(P1=Q、P2=qになる)。

 遺伝的にはP1(Q)が優性遺伝する(P1P2遺伝子の表記型はP(+)になる=Qq遺伝子型はQ型になる)ため、P1(Q)型が片方でも親にいる場合は両方の型が生まれる可能性があるが、P2(q)型同士の子供は基本的にP2(q)型になる。

 P2型の抗P1抗体は体温では反応しにくいため通常は輸血時に問題は生じないが、遅延型輸血副作用を招いた例があるほか、他の型(p、P1K、P2K)は多数派のP1型やP2型の輸血で不適合問題を起こす。

 ルセラン(Lutheran)式血液型

 キャレンダーとレースによって1946年瀰漫性紅斑性狼瘡の患者の血液から抗体を発見される。この患者は何度も輸血を受けていたが既存血液型と無関係の反応であったため抗ルセラン抗体と呼ばれるようになり、抗体に反応する物をLua、反応しないものをLubとしたが、1956年カットブッシュなどによってにLub内でも別の抗体(後の抗Lub抗体)に反応する人がいたため、抗原が2種類あることが判明する。

 このため当初はLuaがLubに対し優性遺伝する(=Lub型はLu抗原がない型で1つでもあればLua型になる)と考えられていたが、その後の調べでABO式のA型とB型のように複数の抗原があるため、表現型はLu(a+b-)、Lu(a+b+)、Lu(a-b+)、Lu(a-b-)と4通りに分けられるようになった。

 日本人ではほぼ100%がLu(a-b+)でごく少数(1%以下)がLu(a-b-)だが、Lua遺伝子は未発見。

 ケル(Kell)式血液型

 クームスらによって1946年にケラッヘルという一児を産んだ女性の血液中に抗体(抗ケル抗体)を発見される。

 抗ケル抗体で凝集される血球をK+もしくは大文字K、凝集されない血球をK-もしくは小文字kとして表し、Kはkに対し優性遺伝するため表現型のK+はKKとKkが存在するが、K-はkkのみとなる。

 日本人ではK遺伝子は未発見でほぼ全員がK-である。Kx式は1975年に発見されたX染色体上に遺伝子があり(ケル式は7番染色体)、ケル抗原の元になるKx物質(赤血球と白血球上にある)を抗原とする血液型で、Kx抗原の欠落を起こしたMcleod型ではケル関係抗原の減少に加え、赤血球や白血球の機能不全や低下が起きる。

 Gerbich式は1960年に発見された型で、大半の人の抗原はGE2・GE3・GE4だが、GE2とGE3がない人(GE4はあってもなくてもよい)はK抗原の発生が抑制され50%ほどになる。 日本人では稀血だが、GE2とGE3がなくGE4はある(-2,-3,4)型はマラリア耐性を持つのでパプアニューギニアでは50%もいる。

 ルイス(Lewis)式血液型

 1946年、イギリスのムーラントによって溶血性疾患にかかった新生児を産んだ母親2名から抗体が発見され、2年後の1948年に、ムーラントとは別にデンマークの血液学者アンドレセンは新しい抗体2種類を発見し、後にムーラントの報告と同じ物と分かったのでアンドレセンは2種類の抗体・抗原をLea・Lebと命名した。

 ルイス抗原の大きな特徴として出生時に完成されておらず(このため新生児溶血疾患は招かない)、成長するに従い型が変化することがあり、新生児はほぼ全員Le(a-b-)だが、9割ほどは成長するに従いLe(a+b-)やLe(a-b+)に変化し6歳くらいまでに完成される、これの移行期である生後1年未満の幼児にはLe(a+b+)が見られる場合もあるが、成人には極めてまれで白人では成人を238人調べてLe(a+b+)が0人だった例がある。

 これ以外にもルイス式はABO抗原同様に血液以外の体液にも検出される場合(分泌型)とされない場合(非分泌型)に分かれる特徴を持ち、Le(a+b-)は非分泌・Le(a-b+)は分泌型になる(Le(a-b-)は両方のパターンがある)他、Le(a-b-)の人のみ癌の診断に使われる消化器系腫瘍マーカーのCA19-9を作る遺伝子が欠落する副作用があるので、癌があってもマーカーが検出されないという変わった特徴を持つ血液型である。Lea・Leb抗体ともに自然抗体だが体温では反応しないものが多いため通常は輸血時に問題を生じないが、たまに体温で反応する抗体を持つケースがあり、こちらは不適合だと輸血副作用の原因となる。(Wikipediaより)

参考 朝日新聞: https://www.asahi.com/articles/ASM9H54MYM9HUBQU001.html

  

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