「はやぶさ2」小惑星を出発 地球への帰還目指す

 小惑星への2度の着陸に成功した日本の探査機「はやぶさ2」は、11月13日午前10時すぎ、地球への帰還を目指してエンジンを噴射し、小惑星「リュウグウ」を出発した。

 日本の探査機「はやぶさ2」は、3年半かけて小惑星「リュウグウ」に到着し、岩石の破片を採取するため2度の着陸に成功するなど、およそ1年半にわたる探査を終えた。

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、「はやぶさ2」に対して、帰還のために姿勢を制御するエンジンを噴射する信号を送り、13日午前10時すぎに無事に噴射して「リュウグウ」を出発したことを確認した。

 「はやぶさ2」は今後、姿勢を変更するなどしたあと、今月20日からおよそ2週間、メインエンジンであるイオンエンジンの試験運転を行い、来月3日以降にイオンエンジンを本格的に噴射して地球に向かう計画だ。

 また、「はやぶさ2」は、「お別れ観測」として搭載しているカメラで離れていく「リュウグウ」の撮影を行った。

 「はやぶさ2」は、来年11月から12月に「リュウグウ」の岩石の破片が入ったとみられるカプセルを分離して、オーストラリアの砂漠地帯に落下させる計画で、その後、国内の研究者などが岩石の破片を詳しく分析することになっている。

 小惑星探査機「はやぶさ2」とは何か?

 「はやぶさ2」は、「はやぶさ」後継機として小惑星サンプルリターンを行うミッション。「はやぶさ」は世界で初めて小惑星からその表面物質を持ち帰ることに成功したが、そのミッションには多くのトラブルがあった。

 「はやぶさ2」では、「はやぶさ」の経験を生かして、よりトラブルの少ない確実なミッションを目指している。そして、「はやぶさ」が探査した小惑星イトカワ(S型)とは別の種類の小惑星(C型)を探査することにより、惑星の起源だけでなく地球の海の水の起源や生命の原材料をも探求するミッションになっている。

 「はやぶさ2」は、基本的には「はやぶさ」で行ったサンプルリターン方式を踏襲する。ただし、より確実にミッションを行えるよう、信頼性を高める様々な改良が加えられた。またその一方で、小惑星表面に人工的なクレーターを作り、地下のサンプルを持ち帰るといった、新しい技術を使ったミッションにも挑戦する。太陽系天体探査技術を向上させることが、「はやぶさ2」の重要な目的だ。

 S型小惑星からC型小惑星へ

 「はやぶさ」が探査した小惑星イトカワはS型に分類される小惑星であるが、「はやぶさ2」が探査を行う小惑星リュウグウはC型に分類されている。C型小惑星には、水や有機物が多く含まれていると考えられている。

 「はやぶさ2」が目指す小惑星は、(162173)リュウグウ。リュウグウはC型の小惑星だが、太陽系が生まれた頃(今から約46億年前)の水や有機物が、今でも残されていると考えられている。地球の水はどこから来たのか、生命を構成する有機物はどこでできたのか。そのような疑問を解くのが「はやぶさ2」の目的だ。

 また、最初にできたと考えられる微惑星の衝突・破壊・合体を通して、惑星がどのように生まれたのかを調べることも「はやぶさ2」の目的になる。つまり、「はやぶさ2」は、太陽系の誕生と生命誕生の秘密に迫るミッションなのだ。

 「はやぶさ2」は2014年12月3日に打ち上げられた。2015年12月3日の地球スイングバイを経て、2018年に小惑星に到着し、2020年末に地球に帰還する予定である。「はやぶさ2」の新たな挑戦により、太陽系天体への往復探査技術を確実なものにするとともに、太陽系誕生や生命誕生の秘密にさらに近づくことができると期待されている。

 「はやぶさ2」ミッション

 「はやぶさ2」は、目標の小惑星「Ryugu」(リュウグウ)に到着した後、様々な遠隔観測機器と小型の着陸機とローバにより観測を行った。

 はやぶさ2では国際協力により、ドイツ・フランスの着陸機(MASCOT)と日本のローバ(MINERVA‐II)を搭載。探査機から切り離された着陸機とローバは、小惑星に着陸し、小惑星表面の詳細な観察を行った。

 はやぶさ2は、その後、小惑星の表面にタッチダウンを行い、小惑星表面の物質を採取。更に、新規設計の衝突装置により人工クレーターを作り、そこから物質採取を行うことで、小惑星内部からのサンプルリターンも試みた。

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)の探査機「はやぶさ2」が小惑星「りゅうぐう」の探査を終え11月、地球に向けて出発した。2回の着陸と人工クレーターの作製に成功し、計画は順調に進んだ。地球に持ち帰る試料の分析にも大きな期待が寄せられている。

 1年かけて地球帰還へ ・ポストはやぶさ2

 「想定をはるかに超える成果を得られた」。津田雄一プロジェクトマネージャは12日の記者会見でこう語った。 はやぶさ2が掲げた目標は、探査機の性能に関わる工学的目標と新発見につながる科学的目標の2つがある。りゅうぐう出発までの項目は達成済みか達成見込みだ。達成見込みの目標もデータは十分に得られ、事実上の達成とみている。

 残るのは地球帰還と帰還後の試料の分析だけだ。工学的目標では、ピンポイントの着陸に成功し、金属を打ち込んで人工クレーターを作る実験も目標を上回る精度で達成した。着陸は当初、半径50メートルの精度を予定していた。りゅうぐうに着いてみると表面は岩だらけ。この精度では安全な着陸は不可能と判断し、急きょ着陸の誘導方法を改良するなどして2度の着陸を成功させた。

 正確に着陸する技術は今後の宇宙開発で重要になると考えられている。将来、小惑星に眠る水や金属などは貴重な資源になる。世界に先行して小惑星探査の技術を蓄積すれば、日本の貴重な財産になる。

 小惑星に人工クレーターを作って内部の岩や砂を採取したことも大きな成果だ。太陽系が生まれて間もない時期の物質がそのまま保存されている可能性が高いからだ。プロジェクトサイエンティストの渡辺誠一郎名古屋大教授は「内部物質の採取は今後20年くらい他国ではできないだろう」と強調する。

 この実験では、小惑星の構造や強さなど科学的目標に関する成果も多く得られた。クレーターの大きさや分離カメラで撮影した映像から、りゅうぐうが弱くてもろいことなどもわかった。

 生命のもとになる有機物などが宇宙から地球にもたらされたとする仮説がある。隕石(いんせき)のように硬いと高速で落下し大気との摩擦で燃え尽きやすい。細かなチリになるとふわふわ漂いながら燃えずに落ちる。

 渡辺教授は「小惑星の強さは地球にどのくらい物質をもたらすかに関係する。これから重要なテーマになる」と説明する。 帰還は2020年12月ごろの予定だ。持ち帰ったサンプルから生命の起源解明につながる物質の発見なども期待される。 (日経新聞 小玉祥司)

参考 サイエンスポータル: https://scienceportal.jst.go.jp/news/newsflash_review/newsflash/2019/11/20191113_01.html

 

  

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