謎の多い新型コロナウイルス
今回の新型コロナウイルス、日本ではまだマスコミや一部の科学者の書いた論文のおかげで、中国の武漢市のコウモリの持っていたものが突然変異をして、有毒性が強くなり人の間で広がったと信じている人が多いようだが、これにはおおいに疑問を感じる。
というのは、中国政府が感染が広がった初期の段階で、事実を公表しなかったことなどが問題を大きくした指摘があり、欧米などが武漢市への査察を申し込んでも中国政府は拒否しているからだ。武漢市には細菌・ウイルスの研究所があり、そこにあった細菌が漏れた可能性も指摘されている。
まだまだ謎は多い。それは欧米に比べて日本人感染者に死亡者が少ないということだ。NHK特設サイトによると、2020年5月24日現在、世界の感染者数は 5,310,362人、死亡者数は 342,097人。
死亡者数の多い国を順に見ていくと...第1位 アメリカ 感染者数 1,622,612人 死亡者数 97,087人、第2位 イギリス 感染者数 257,154人 死亡者数 36,675人、第3位 イタリア 感染者数229,327人 死亡者数 32,735人 第4位 フランス 感染者数 179,306人 死亡者数 28,167人、第5位 ブラジル 感染者数347,398 死亡者数 22,013人、...日本 感染者数 1万6569人 死亡者数 825人、韓国 感染者数 11,190人 死亡者数 266人。
なんと死亡者数、第1位~4位までが欧米である。5位にブラジルがきて、日本はアメリカの100分の1、韓国はアメリカの400分の1、死亡者数が異常に少ないのが分かる。この原因は何だろうか?
新型コロナウイルスのタイプの違いか、BCGの接種なのか、手洗いの励行なのか、マスクなのか、握手やハグをほとんどしない文化なのか...いろいろと説はあるが、マスコミの報道を見ると2つの観点で原因を追究しているように見える。一つは遺伝子の違い。もう一つは抗体の有無である。順に見てみよう。
新型コロナ 東洋人の遺伝子の違いか?
読売新聞では次のように報道している。
慶応大など8大学・研究機関は5月21日、新型コロナウイルスに感染して重症化しやすいかなど、遺伝的要因を調べる共同研究班「コロナ制圧タスクフォース」を発足させた。
日本人が欧米に比べ人口当たりの死亡者数が少ない点に注目し、日本人の重症化に関係する遺伝子を探すという。
日本などアジア諸国では欧米に比べ新型ウイルスに対する死亡率が低い。高いマスク使用率や医療システムの違いのほか、地域集団や民族による遺伝的な要素が背景にあるとの見方もでている。
研究班は、国内約40病院から新型ウイルスの感染者600人の血液を収集し、全遺伝情報(ゲノム)を解析する。軽症・無症状者と重症・死亡者の間に遺伝的な違いがあるかどうかを調べ、9月ごろに研究成果をまとめたいとしている。(読売新聞 2020.5.22)
新型コロナ 抗体の有無に違いが?
日本のノーベル生理学医学賞受賞者の山中伸弥教授は日本人や東洋人にはある要素を「ファクターX」と名づけその原因を探るように訴えてる。
「ファクターX」とは耳慣れない言葉だが、山中伸弥教授は、ファクターXこそ、今後の日本人と新型コロナウイルスとの闘いの行方を左右する重要な要素だという。
「ファクターX」の解明のため、山中氏が重視しているのは、ウイルスに対する抗体(ウイルスに反応して毒素を中和する物質)を持っているかを調べる「抗体検査」だ。
厚労省は6月から、東京・大阪・宮城の3カ所で1万人規模の大規模な検査を開始すると発表したばかりだが、山中氏と元大阪府知事の橋下徹氏が、科学者と政治家それぞれの観点から、新型コロナウイルスとの闘い方について語りあった対談でも、この抗体検査のことが話題になった。
抗体検査で「大事なのは国産でやること」
文芸春秋6月号の記事で山中教授と橋下氏は次のように述べている。
山中 僕は、PCR検査に加えて、抗体検査が重要だと考えています。実際にどの層の人が、どれくらいの割合で抗体を持っているのかがわかれば、ファクターXが見えてくる可能性もありますから。
橋下 抗体検査にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
山中 抗体検査は、ワクチンや治療薬の開発よりはるかに早くできます。コストも安い。大事なのは国産でやることで、これを外国産に頼ってしまうと、後手後手で質の悪いものを使わされてしまう恐れがあります。国産で品質管理をしっかりして検査キットを作らないといけません。これはPCR検査キットも同じで、変異した後のウイルスまでちゃんと検出しているかわからないという話も出ています。院内感染対策にも使える
橋下 感染が広まっていない状況で抗体検査をやっても意味がないけれど、現在の東京や大阪であれば、社会がウイルスに対してどれだけ強くなっているかを見る指標の一つにもなるということですよね。
山中 そうです。抗体検査の意義をもう一つ挙げるなら、院内感染対策にも活用できます。今の日本は市中の感染爆発よりも、院内感染による医療崩壊のほうが心配な状況で、ベッドや医療機器が足りていても、医療関係者の数が足りなくなってしまう恐れが出てきました。そういう大変な現場で頑張っている医師や看護師の抗体の有無がわかれば、抗体を持っている人だけに現場に入ってもらうこともできる。現段階でも、医療従事者はかなりの方が感染している可能性があると考えています。(文藝春秋 6月号)
免疫で体を防ぐ仕組み
「抗体」という言葉が出てきた。もちろん私たちの体を守る仕組みだが、ここでおさらいをしておく。
知らず知らず体内に侵入するバクテリアやウイルス、花粉などに対して私たちはどのように対処しているのだろうか? これらの生物性の侵入者に対しては「免疫」という方法で私たちは日々戦っている。
免疫ではまず「自然免疫」が感染源に対応する。自然免疫にはある特殊な細胞が備わっており、それらは侵入物が自己を再生産したり宿主に対し重大な被害をもたらす前に発見、排除する。
自然免疫を突破した感染源に対応するのは「獲得免疫」である。獲得免疫は一度感染源に接触することで発動し、発動後は感染源を発見し次第選別、強力に攻撃を仕掛けていく。
獲得免疫は抗体や補体などの血中タンパク質による体液性免疫の他に、リンパ球などの細胞による細胞性免疫によって担われている。リンパ球には分化成熟して免疫グロブリンを産生するB細胞のほかに、胸腺で分化成熟するT細胞などがある。
その他、食作用によって抗原を取り込んで分解してT細胞に提示する樹状細胞なども免疫機能の発現に関与する。 これらの細胞は骨髄で産生され、胸腺やリンパ節、脾臓などのリンパ系組織での相互作用をへて有効な機能を発揮するようになる。一般的に「免疫」と聞いて多くの人が思い浮かべるのは「獲得免疫」である。
自然免疫と獲得免疫
人体の免疫は、大きく「自然免疫」と「獲得免疫」に分けられる。この2つを分かりやすく表現すると、自然免疫は警察官、獲得免疫は軍隊のようなイメージだ。
自然免疫は最前線を常にパトロールし、ウイルスなどの外敵が侵入してきたらすぐに潰していく役割を担っている。代表的なのがリンパ球の一種であるナチュラルキラー細胞(NK細胞)や、白血球の一種である好中球やマクロファージなど。
自然免疫が外敵と戦っている段階では、特に症状はない。そして自然免疫が勝利すれば、人間は外敵が自分の体に侵入してきた事実にすら気付くこともない。
ところが、自然免疫、特にNK細胞は、色々な要因で戦力ダウンすることがある。その結果、自然免疫だけでは勝ち目がなくなった時、今度は獲得免疫が出撃していく。
獲得免疫は軍隊なので、攻撃も大掛かり。そのため、この戦いが始まると人間も気付くことになる、つまり症状が出ることになる。
おもな症状は「発熱」。熱が出るということは、獲得免疫が働いていること、言い換えれば、免疫が本気で外敵と戦っていることを示している。
最初に戦う自然免疫は、加齢とともに弱体化する。70歳を過ぎると防御・戦闘能力が低下していく。
その点、獲得免疫は年齢の影響は小さい。計算上では200歳まで生きても若い頃と変わらない強力な防衛力を維持すると言われている。
ならばなぜ、人間は200歳まで生きられないのでしょう。それは、たとえ免疫は強固であっても、脳や心臓、肺や腸などの臓器のほうが経年劣化するから...。もしこれらの臓器が200歳まで正常に動くなら、獲得免疫はそれを守り続ける力を備えている。それほど強力なのだ。
ワクチンは免疫の「軍事訓練」
免疫には戦う相手によって得意不得意がある。免疫はがん細胞や細菌のような「サイズの大きな敵」は苦手だ。
その証拠に、BCGの予防接種をしていても、目の前で結核の人が咳をすれば簡単に感染してしまう。現代の人間は「抗生物質」という兵器を持っているので、たとえ細菌に感染したとしても、対抗することはできる。
一方、免疫は「小さな相手」には俄然力を発揮します。中でもウイルスの退治は得意だ。
その意味でワクチンは、「闘いの準備」のようなものと言える。事前にワクチンを接種することで免疫に軍事訓練をさせておき、本物のウイルスが来た時には「待ってました」とばかりに総攻撃をかけられるように準備をしておく。
人間がウイルスを滅するための免疫を獲得する手段は2つしかありません。1つはそのウイルスに自然感染すること。もう1つはワクチンを打つこと。どちらも「感染を経験する」という点は同じですが、ワクチンは「より積極的に、予防のために感染する行為」と言える。
ただ、今回の新型コロナウイルスのような未知のウイルスの場合、ワクチンを作るには時間がかかる。製品ができ上がって国の認可が下りるまで、最短でも1年は見ておく必要がある。
最終手段として「血清療法」もある
このような状況では、感染して回復した人が“無敵の人”。一度感染すると、インフルエンザの場合であれば、年単位の免疫が維持できる。その間、いくら人混みの中に入っても無敵である。しかしコロナウイルスに関しての免疫反応は何故か弱い人も時々いるようだ。インフルエンザウイルスに比べ、抗原性が弱いのかもしれない。
一方、感染した人の血液の中には新型コロナウイルスの抗体があるので、その血清を使えば重症患者を救える可能性がある。これはいわゆる「血清療法」とよぶもの。
ジフテリアやハブの毒に対する血清はウマを使って作る。新型コロナウイルスに対する血清もウマで作るが、異種の抗体なので副作用が出る危険性もある。
命を落とすジフテリアやハブの毒には副作用も覚悟の上で使う必要があるが、新型コロナウイルスはそのリスクを負ってまで使う相手ではない。もちろん、最後の手段としての血清療法についての研究は進んでいる。
参考 msn news: 日本でコロナ死亡者が少ない理由「1月中旬に集団免疫獲得」説
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