All for one, Crew-1 for all !
 野口聡一さんたち4人の宇宙飛行士が搭乗したクルードラゴン宇宙船が11月17日、国際宇宙ステーションとドッキングした。野口さんは2010年6月以来3度目となる宇宙滞在をスタートした。

 「日本の皆さま。クルードラゴン運用初号機、無事にISSにドッキングしました。国際パートナーの一員として民間宇宙船のドッキング成功に立ち会えて、とても幸せです。」
 「われわれ、レジリエンス・クルーは、訓練の間、そして打ち上がった後も、様々な困難な状況に直面しましたが『全集中』で乗り切ってきました。これから半年間の宇宙滞在も皆さんと感動を分かち合いましょう。All for one, Crew-1 for all !」(ドッキング直後に行われた地上との交信にて野口さん談)。

 ISSとクルードラゴンとの間で気圧調整などが行われた後、15時14分ごろにハッチが開かれ、野口さんたちはISSへ入室した。ISSには今年10月から3名の宇宙飛行士が滞在しており、野口さんたちが加わったことで過去最多の7人体制となった。

 野口さんの宇宙滞在は2009年12月~2010年6月以来で自身3度目(長期滞在としては2度目)となる。約半年間の滞在中、「きぼう」日本実験棟を利用した様々な実験等が予定されている。

 野口さんは石川島播磨重工業(現IHI)を経て1996年に宇宙飛行士候補者に選ばれた。2005年にスペースシャトル「コロンビア」の空中分解事故後のシャトル初飛行に搭乗。2009〜10年には日本人では初めて「ソユーズ」でISSと地上の間を往復した。

 来年春ごろには、野口さんに続き星出彰彦さん(51)がクルードラゴン本格運用2号機で飛行予定。日本人2人目となるISS船長を務める。

 クルードラゴン「スペースX社」

 米・スペースX社の宇宙船「クルードラゴン(クルー1)」 は、アメリカの民間宇宙企業スペースXが開発した有人宇宙船である。

 アメリカの宇宙船としては、2011年のスペースシャトルの退役後では初めて有人で飛行した宇宙船であり、スペースシャトル初飛行から計算すると実に40年ぶりとなる新型の、地球周回軌道に到達した有人宇宙船である。

 スペースXは2000年代に多数創設された民間宇宙ベンチャーの一社であるが、新興企業にも関わらず、低コストのロケットで商業衛星市場で大きなシェアを獲得している。2002年にイーロン・マスクによりカリフォルニア州エルセグンドで設立される。設立時には、同年に買収された宇宙開発大手のTRW社から、ロケットエンジン開発に携わっていたトム・ミュラー(英語版)とそのチームが合流している。

 打ち上げロケットファルコン9やファルコンヘビー、ならびにファルコン9で打ち上げるドラゴン宇宙船を開発している。スペースXは、費用と品質を管理するために、大部分のコンポーネントを自社で開発しており、その中にはマーリン、ケストレル、ドラコといったファルコンロケットで使われているロケットエンジンとドラゴン宇宙船が含まれる。

 拠点はカリフォルニア州ホーソーンに所在し、この拠点には本社機能と組立工場に加えてロケット発射時とミッション中の管制を行うコントロールセンターも備えている。完成した機体は工場から射場までをトレーラーに乗せられてトラックで引かれて道路を移動する。

 2006年にNASAと国際宇宙ステーション (ISS) 物資補給のための打上げ機の設計とデモ飛行を行う商業軌道輸送サービス (COTS) を契約した。2010年12月にファルコン9ロケットとドラゴン宇宙船によるCOTSデモ飛行を行い、民間企業としては世界で初めて軌道に乗った宇宙機の回収に成功した。2012年にはISSに民間機として初のドッキングも成功させ、補給物資や実験装置を送り届けた。

 2014年には、NASAと有人型のドラゴン宇宙船の開発とデモ飛行を行う宇宙飛行士の商業乗員輸送開発 (CCDev) プログラムを契約した。2020年5月に再び民間企業として史上初となる有人宇宙船の打ち上げ並びにISSドッキングを成功させていた。

 目標は火星定期飛行

 スペースXは成功したベンチャー企業にも拘わらず、2018年現在いまだに株式公開 (IPO) を行っていない。同社の評価額は2017年7月時点で212億ドルと見積もられており、これはアメリカの株式未公開企業(ユニコーン企業)の中では4位に位置する。

 イーロン・マスクは2013年に「IPOは火星移民船が定期的に飛ぶようになってから」と、また2014年には「どこかのPEファンドに経営を支配され、短期的な利益を得ることに使われるのだけは勘弁してほしい」と語っており、スペースXが創業時からの目標である火星移住構想から離れないよう株式を公開しない考えを示している。

 イーロン・マスクが宇宙船開発とともに進めているのが火星探査ミッションだ。火星探査ミッションは火星と地球の位置関係から26カ月に一度しかチャンスがやってこない。イーロン・マスクは早ければ2024年に有人ミッションを行いたいという。本プロジェクトには同じく火星探査を目標としているNASAも技術支援を行う予定だ。

 米国はスペースシャトルの廃止後、有人飛行をロシアの宇宙船「ソユーズ」に依存してきた。米航空宇宙局(NASA)は自国の有人船復活を目指し、宇宙船開発と運用を2社に委ねた。このうちスペースX社は現役の物資補給機「ドラゴン」をベースに、有人仕様のクルードラゴンを開発した。
 ボーイング社の「スターライナー」は昨年12月、無人試験飛行に臨んだものの、エンジン噴射のタイミングがずれてISS到着に失敗。年内にも再挑戦するという。

参考 サイエンスポータル:野口さん、米国の新型宇宙船でISS到着 「『全集中』で頑張りたい」と抱負 

  

ブログランキング・にほんブログ村へ 人気ブログランキングへ   ←One Click please