「はやぶさ2」が無事帰還

 日本時間2020年12月5日14時35分、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、小惑星探査機「はやぶさ2」の搭載カプセルが計画どおり分離されたことを確認した。カプセルは、日本時間2020年12月6日2時28分(JST)頃に大気圏に再突入。その後ヘリコプターでカプセル本体を捜索した結果、日本時間2020年12月6日4時47分(JST)にオーストラリアの砂漠地帯(WPA)内にて発見された。

 回収されたカプセルはヘリコプターに搭載され、現地本部へ到着した。JAXAは、現地本部において、回収したカプセル本体から小惑星リュウグウのサンプル由来と考えられるガスの採取作業を行う。
 また、小惑星探査機「はやぶさ2」の本体は、カプセル分離後、12月5日15時30分から16時30分(日本時間)にかけて、地球圏離脱軌道への遷移のための軌道変更を3回に分けて実施。探査機は正常。この後、拡張ミッションで2つの地球近傍小惑星探査に向かう。

 それにしても凄い。「はやぶさ1」の帰還も感動的だったが、さまざまな問題が発生しその道のりは容易ではなかった。その反省をしっかり「はやぶさ2」では生かし、大きな問題もなく無事の帰還となった。今回のミッションは既に科学者らを興奮させてきたが、JAXAはカプセル回収後もはやぶさ2のミッションを拡張し、今後10年以上かけて別の小惑星2個の探査に挑む計画だ。

 2026年7月に「2001 CC21」という小惑星に接近して写真撮影などを行った後、2031年7月に地球から3億キロ離れた位置でメインのターゲットである「1998 KY26」という直径約30メートルのボールのような形の小惑星に接近する予定。1998 KY26は自転周期が約10分と非常に短く、その観察や写真撮影は容易ではないという。地球に試料を送るための十分な燃料がないため、着陸や試料の採取は行わない見通し。

 「はやぶさ2」、拡張ミッションで小型高速自転小惑星へ

 JAXAはすでに、2020年7月28日「はやぶさ2」が小惑星リュウグウのサンプルを地球に届けた後に行う「拡張ミッション」の詳細と対象天体の候補を発表している。 

 「はやぶさ2」は、イオンエンジンには十分な燃料が残されるため、金星や地球でフライバイを行いながら別の小惑星を目指す。プロジェクトチームは地球軌道を通過する合計1万8002個の小惑星・彗星の中から、なるべく燃料消費を抑えつつ10年前後でランデブー(接近した上で近くに留まること)が可能な天体を探した。

 条件に合う天体は354個見つかり、その中から到達や観測のしやすさ、研究対象としての価値を考慮して2つの小惑星「2001 AV43」と「1998 KY26」が最終候補に選ばれた。

 2001 AV43:金星で1回、地球で2回のフライバイを経て2029年11月にランデブー可能となる。ちょうどこのタイミングで2001 AV43が地球まで約30万kmという、月よりも近い至近距離へ到達するのが特徴。

 1998 KY26:別の小惑星2001 CC21への超接近フライバイを実現させてから地球でさらに2回のフライバイを行い、2031年7月にランデブーする。レーダー観測によりある程度形状がわかっている。炭素質(C型)小惑星である可能性が指摘され、リュウグウやベンヌ(探査機オシリス・レックスが探査中)との比較という観点からも興味深い。

 2つの小惑星はいずれも直径が30~40mと小さいが、この規模の天体は統計的には100年から200年に1度の割合で地球に衝突し、1909年のツングースカ爆発に匹敵する局地的な災害をもたらす可能性がある。安全上の観点からも天体の性質を調べる意義は大きいものの、探査機による接近観測が行われたことはない。また、どちらも自転周期が約10分と短く、大型小惑星であればバラバラになってしまうほどの速さだ。

 そのような高速自転小惑星がリュウグウなどのようなラブルパイル(瓦礫の寄せ集め状態)なのか一枚岩なのかは注目に値する。道中でのフライバイは航行技術の進展と追加の科学観測を実現するチャンスとなる。また、航行中はイオンエンジンの長期運用に関する知見が高まるほか、黄道光や系外惑星の観測も計画されている。

参考 NHK: はやぶさ2 地球帰還|NHK特設サイト

  

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