「ハイパーループ」初の有人試験
「ハイパーループ」というと、高架チューブ内を減圧して空気抵抗を減らし、人が乗る「ポッド」をリニアモーターの原理で浮上させ、高速で走らせるシステムである。
最高速度1287km/hは、音速(1224km/h)を超えているので、ソニックブームが心配だが、飛行機と違って真空中を移動するから、音も聞こえない。ソニックブームの轟音を心配する必要がないのだ。
今回、ヴァージン・ハイパーループ社が開発を進める高速輸送システム「ハイパーループ」が米ネバダ州ラスベガスで初の有人による試験運用に成功。商用化に向けた大きな節目となった。 今回の試験運用では時速100マイルまでの到達となった。軌道が500メートルの長さしかなかったためで、速度が制限されたのだ。それでも、会社の幹部は今回の試験を大きな節目であり、商用化に向けた前進とみている。
最初の試験運用には同社の幹部2人が搭乗した。2人乗りの乗り物でシートベルト、シート、小さな窓がついている。 同社幹部は、ハイパーループは航空機の速度で移動できるが、エネルギー消費はわずかだと述べた。
ハイパーループは各都市を結ぶことを想定している。将来的には乗り物には25~30人が搭乗し、1時間あたり数万人を輸送することを目指している。 同幹部はハイパーループのシステムは2025年か2026年には承認を受け、10年以内にプロジェクトを実現するとの見通しを示した。
ハイパーループとは何か?
ハイパーループ(英: Hyperloop)は、アメリカ合衆国の実業家のイーロン・マスクが構想を発表した次世代交通システム。2013年8月に公表された。
2016年にカリフォルニア州の州間高速道路5号線沿いの街にテスト路線を建設し、2018年を目処に旅客輸送を予定している。サンフランシスコとロサンゼルスを結ぶカリフォルニア高速鉄道の計画(総工費約700億ドル)が、イーロンには建設コストが高過ぎて遅過ぎるうえに実用的でないとの認識があり、自身が経営するスペースX社とテスラ社の従業員からアイデアを募った。
減圧されたチューブ内を高速で列車を運行するという概念は1970年代にランド研究所の物理学者であるロバート M.サルター (Robert M.Salter)がロサンゼルス-ニューヨーク間を21分で輸送するVery High Speed Transit System または VHSTという高速輸送システムを提案していた。
減圧(100Pa程度)されたチューブをガイドとして、チューブ内を空中浮上(非接触)して進む。当初の計画では先頭車両は鋭角ノーズとし、1車両あたり28人を想定。チューブ内の空気を車両前面に搭載したファンで吸い込み、底面から圧縮排出して車体を浮上させる構想だった。
建設を想定している区間はロサンゼルスとサンフランシスコ間(全長610km)で、加速度0.5G程度で加速し、30分で結ぶ。最高速度は時速1,220km。建設には、期間が20年以上で全体建設費用見込みは75億ドル(7,100億円)を見込む。チューブの建設費用が必要経費の主要部分を占め、車体の経費は合計で10億ドル未満。
現在はロサンゼルスを拠点とするHyperloop Transportation Technologies(HTT)、Hyperloop Genesis と、Hyperloop One(旧称Hyperloop Technologies)の2社が開発を競う。ポッド等、各要素技術はコンペ形式で採用する見通しだ。
現状と課題
綿密に調査を進めていくと様々な課題が浮上した。減圧した管内の維持に必要なエネルギー、車両へのエネルギーの供給(車載の蓄電池を使用する案があるものの、それでは不十分であることが判明)、減圧下での浮上高の維持、管内の放熱、高速走行時の空気抵抗(管の直径が不十分だと空気抵抗が増すことが判明)等、問題が浮上している。それらの課題の中には空気浮上、空気推進という当初の概念を維持する限り解決の目処の立たないものもある。
上述の理由により、従来進めてきた空気浮上を放棄してHyperloop Transportation Technologies (HTT)は2016年5月9日、ローレンス・リバモア国立研究所(LLNL)との間で、ハイパーループ・システムの浮上方式としてローレンス・リバモア国立研究所のリチャード・ポスト博士により開発されたインダクトラック方式(磁気浮上方式の一つ)を独占的に使用するライセンス契約を締結したことを発表した。
リニアモータを推進に使用する場合、トランスラピッドで使用されたような車上集電の不要な地上一次式リニア同期モータが想定される。その場合、軌道の全線に渡りリニアモータの界磁を配置しなければならず、車上一次式リニアモータと比較して建設費が高騰する要因となる。
チューブに鋼鉄のような磁性体の材料を使用した場合、浮上用の希土類磁石と十分な距離を離さなければ吸引力が生じて浮上に悪影響を与える可能性がある。また、チューブを金属製にした場合、走行時にリニアモータから生じる磁場で管壁に誘導電流が生じて、IH調理器のように発熱する可能性がある。
インダクトラック方式
起業家・イーロン・マスク氏が考案し、細い筒状のレール(チューブ)の中を時速1200kmという飛行機よりも速い速度で走る次世代交通システム「ハイパーループ (Hyperloop)」の開発を進める企業「Hyperloop Transportation Technologies」が、その核となる技術ライセンスを獲得したことを発表した。
今回発表された内容によると、ハイパーループの車両「ポッド」は永久磁石を「ハルバック配列」と呼ばれる特殊な方法で配置する「インダクトラック方式」を採用することで、コストを抑えながら高い効率性を実現するようになっている。
インダクトラック方式は、同研究所の故・Post博士が長年にわたる研究を進めてきた方式で、博士の死後もHTTとLLNLの両者は1年間にわたる受動的磁石浮上(passive magnetic levitation)方式を用いたシステムの開発を進めてきた。
このインダクトラック方式の核となるのが、複数の永久磁石を特別な向きに並べた「ハルバック配列」(またはハルバッハ配列)と呼ばれる配置方法。矢印の方向に磁界が来るように複数の永久磁石を並べた「ハルバック配列」ユニットが、ハイパーループの車両に搭載される。
インダクトラック方式を採用するハイパーループがどのように走行するのだろうか。ハイパーループは、既存の「リニアモーターカー(英名:Maglev)」と同じく、磁石の力を借りて浮上走行する乗り物。しかし、従来型のリニアモーターカーは、その運用に多額のコストが必要になる。
その大部分を占めるのが、大量の電力と軌道に敷き詰める必要がある大量の電磁石(コイル)。ハイパーループは、そんなインフラにかかるコストを大幅に削減することが可能とのこと。そのコアとなる技術が、電力を必要としない軌道(アルミニウム製チューブ)と、車両に搭載された磁気システム。
そのシステムは大きく2つに分けることができます。まずは、車両に搭載されたバッテリーからの電力を制御する「Power Conditioning Unit(電力調整ユニット)」と、リニアモーター方式で車両に推進力を与える「Thrustcore(スラストコア)」。
そして、車体を地面からわずかに浮上させるために用いられるのが、ハルバック配列(Halbach Array)を持つインダクトラック方式の浮上システムである。ハイパーループは、この2つの磁気システムを組み合わせることで、推進と浮上の力を得る仕組みになっている。
加速・浮上・減速
「フェーズ1:加速」
列車として前に進むためには、なによりもまず駆動力が必要。ハイパーループは、その駆動力をリニアモーターで生みだします。車体側面に配置されたリニアモーターを使い、磁力で加速力を得ます。
時速20マイル(約32km/h)に達した頃から、車体底部に配置したインダクトラックと軌道チューブの間に誘導電流が生じます。この仕組みこそが、インダクトラック方式の要となる部分である。
「フェーズ2:浮上」
ハイパーループは一定の速度に達することで、インダクトラックによる浮上力を得るようになる。その仕組みは次のとおり。
先述の通り、車体にはハルバック配列を持つ永久磁石が搭載されている。一方、軌道チューブの底にはコイルが埋め込まれている。このコイルには電力が供給されておらず、かつ両端が閉じた「閉回路」となっているのがポイント。ハルバック配列を持つ永久磁石がコイルに近づくと誘導電流が生じ、車両と反発する向きの磁力が発生する、つまり浮上力を発生させるという仕組みとなっている。
つまり、インダクトラック方式は車両に推進力を与えるだけで浮上力が得られ、浮上のための電力を必要としないという、非常に高い効率が備わった方式となっている。これは日本のリニアモーターカーの浮上原理と同じである。
軌道と接触する車輪を持たず、減圧されたチューブの中を走行するハイパーループは走行抵抗が非常に少ないため、最大時速760マイル(約1200km/h)という、音速を超えるスピードでの走行が可能。従来型の駆動方式では絶対に実現できない速度をハイパーループは可能にするというわけだ。
「フェーズ3:減速」
減速時には、加速に用いていたリニアモーターを逆方向に働かせることでブレーキとして使う。もちろん減速時には電気エネルギーを回収してバッテリーを充電する回生ブレーキのシステムが搭載されており、電力効率のアップに一役かっている。
速度が落ちると、インダクトラック方式による浮上力も失われる。そのままでは車体が軌道チューブに接触するので、低速時にはタイヤまたは車輪を使うようになっている。
参考 CNN: 高速輸送システム「ハイパーループ」、初の有人試験
��潟�<�潟��