国内初「ゲノム編集食品」誕生
ゲノム編集食品が販売を認められるという。知っての通り日本では遺伝子組み換え作物の販売には安全審査が必要である。加工食品であっても、豆腐や醤油などのパッケージに表示義務がある。「本製品は遺伝子組み換え大豆を使用していません」などの表示を何度も見てきた。食の安全性に対してはそれほど厳しい壁がある。
ゲノム編集でも遺伝子を変えることに変わりはない。ゲノム編集ならば認められるというのはどういうわけだろうか?食の安全性は確保されるのであろうか?ゲノム編集と遺伝子組み換えでは何が違うのだろうか?
今回、遺伝子を自在に操作できる「ゲノム編集」の技術を使って開発された、血圧を下げるとされる成分を多く含むトマトについて、厚生労働省の専門家会議は12月11日、国内初の「ゲノム編集食品」として販売の届け出を認め、今後、ゲノム編集食品の流通が始まる見通しとなった。
販売の届け出が認められたのは、ゲノム編集の技術を使って遺伝子を操作し、血圧を下げるとされる「GABA」と呼ばれるアミノ酸を多く含むようにしたトマトで、筑波大学とこのトマトの販売を目指す企業が共同で開発した。
厚生労働省の専門家会議はこのトマトについて、本来、トマトが持たない遺伝子が入っていないことや、アレルギーの原因物質や毒性がある物質が増えていないことなどが確認されたとして、11日の会議で国内初のゲノム編集食品として販売の届け出を認めた。
別の生き物の遺伝子など本来その作物が持たない外来の遺伝子を入れた遺伝子組み換え食品を販売するには、国の「食品安全委員会」による安全性審査が義務づけられているが、ゲノム編集食品については厚生労働省の専門家会議が安全性審査の必要がないと判断すれば、国に届け出を行ったうえで販売できる制度が去年から運用されていて、この制度が適用される初めてのケースになる。
これを受けて企業では11日、国に届け出を済ませ、今後ゲノム編集食品の流通が始まる見通しとなった。企業によると、インターネットでの申し込みを通じて来年春ごろから家庭菜園向けに苗の無料提供を始めるほか、早ければ再来年にも果実の流通を目指していて、販売する際にはゲノム編集を行ったことを示すマークを付けるということである。
品種改良の期間を大幅短縮
「ゲノム編集」の技術を使った国内初の「ゲノム編集食品」の販売の届け出が認められたことを受けて、開発した研究者らが会見を開き、「ゲノム編集はノーベル賞を受賞し、人の未来に貢献できる技術だと世界的に認められたと思う。やっと人の役に立つものができた」と期待を述べた。
今回、販売の届け出が認められたゲノム編集食品を開発した、筑波大学生命環境系の江面浩教授は、共同で研究を進めている企業とともに11日会見を開いた。
このなかで江面教授は、「ゲノム編集はノーベル賞を受賞し、人の未来に貢献できる技術だと世界的に認められたと思う。やっと人の役に立つものができた。次のステップに行けることにわくわくしている」と述べた。
「ゲノム編集食品」と「遺伝子組み換え食品」の違い
2019年10月1日から、ゲノム編集食品の販売が日本で解禁されている。ゲノム編集食品とは、遺伝子を操作して作った野菜や魚などの食品のことだ。
このゲノム編集食品販売解禁を目前に、NHKのクローズアップ現代+で、「解禁!ゲノム編集食品」の特集が組まれた。番組では、養殖しやすい「サバ」、血圧を下げる成分GABAが多い「トマト」、アレルギー成分は少ない「タマゴ」、身の量が多い「真鯛」などの、ゲノム編集食品が紹介された。
例えばサバは、養殖しようとしても共食いしてしまい、1割ほどしか成長できないそうだ。そこで、遺伝子の中から攻撃性の部分を切る(ゲノム編集する)ことで、養殖の可能性を高めることができた。これにより、サバが安く食べられるようになる。
ところで、ゲノム編集食品と聞くと、これまでの遺伝子組み換え食品を思い浮かべる方も多いだろう。その違いは何なのか。
たとえば、害虫に強い「遺伝子組み換えのトウモロコシ」の場合。害虫を駆除するタンパク質をつくるバクテリアに着目し、その遺伝子を組み込む。つまり、遺伝子組み換え食品は遺伝子を入れるわけだ。
一方のゲノム編集食品は、冒頭で紹介したサバのように、すでに持っている遺伝子の一部を切る。なるほど。同じ遺伝子操作でも「遺伝子組み換えは入れる、ゲノム編集は切る」という違いがあるわけだ。
気になるのは、やはり安全性だ。まず、遺伝子組み換え食品は、人に害を及ぼすことがないか、国の安全性審査を受けることが義務付けられている。企業は、成分解析や動物実験などを行い、アレルギーの原因物質や発がん性物質が新たに生み出されていないことを確認。そして、そのデータを内閣府の食品安全委員会へ提出。厳格な審査を受けた上で、販売の許可を得る必要がある。
しかし、ゲノム編集食品は、安全性審査を受ける必要はありません。なぜなら、元々ある遺伝子を切るだけなので、国は安全性審査は必要ないと決定したからである。ゲノム編集食品とは手法が違いますが、「元々ある遺伝子を操作するのは、これまでの品種改良でも行われて来た」という背景もある。
EUでは「安全審査は必要」
ちなみに海外では、アメリカは日本と同じスタンス。「従来の品種改良と区別できないので、安全性審査は必要無し」としている。
しかしEUでは、2018年に「安全性審査は必要である」と裁判所の判断が出ている。遺伝子組み換えと同じ規則を適応すべきだ、という。番組に登場した、消費者団体アナリストのジェイディー・ハンソンさんは、ゲノム編集食品にはリスクがあると言う。
江面教授によりますと、今回届け出が認められたトマトは、血圧を下げる効果があるとされる「GABA」と呼ばれるアミノ酸を通常のトマトよりも4倍から5倍多く含んでいて、ゲノム編集の技術を使うことでこれまで10年以上かかっていた品種改良の期間をおよそ1年半にまで大幅に短縮することができたという。
江面教授は、「1990年代くらいから世界の研究者が農作物の遺伝子を調べる研究を行ってきたが、長年の研究で培ってきたことが世の中に出たことがよかった。限られた農地の中で食料を増やしていく意味でもゲノム編集食品の広がりは意義のあることだと思う」と話した。
オフターゲットとは?
オフターゲットとは、狙った遺伝子を切るはずのハサミが、別の遺伝子を切ってしまうこと。 もし、これが起きるとどうなるのか?
たとえばジャガイモ。ジャガイモは、毒が生成されると緑色に変色する。でも、ジャガイモが緑色にする遺伝子が誤って切られていたら、毒に気づかないで食べてしまう恐れがある。
ジェイディー・ハンソンさんは、さらにこう警鐘を鳴らします。 ジェイディー・ハンソン ゲノム編集には、まだまだ解明されていないことが沢山ある。しかし科学者のなかには、「ゲノム編集は世界を飢餓から救う。この技術には良いことしかない。リスクなどもすべてわかっている」という人もいる。
そうした人は、まるで自分が神だと勘違いしているように思えるという。
【表示義務】遺伝子組み換え食品はあり、ゲノム編集食品は無し 日本では、ゲノム編集食品を販売する際、そうであるという表示義務がない。なぜなら、従来の品種改良と化学的に区別できないなどの理由がある。
一方の遺伝子組み換え食品については、表示義務がある。食品ラベルで見かけたことがある方も多いだろう。つまり、消費者へゲノム編集食品であるかどうかを伝えるか・伝えないかは、ゲノム編集食品を販売する企業に委ねられている。
遺伝子組み換え 表示義務「あり」
ゲノム編集食品は、オフターゲットなど未知のリスクがあるので、私たち消費者としては、せめて選べるようにして欲しい。ゲノム編集食品はこれから販売が開始され、「小さな子どもにも食べさせて良いのか?」「妊婦や、妊娠を望む男女が食べても大丈夫なのか?」など、不安の声が高まってくると思う。そうした世論を政府や企業が受け止め、より安全で、消費者が選択できる環境を整えてもらえるのを望みたい。あなたは、ゲノム編集食品は気にせず食べれるだろうか?
参考 NHK news: 国内初「ゲノム編集食品」トマト 販売認める 厚労省専門家会議
��潟�<�潟��