ATPとは何か?

 ATPは、すべての植物・動物・微生物の細胞のなかに存在しているエネルギーが蓄えられている物質のこと。ちなみに、ATPに蓄えられているエネルギーは、ATPがADPとリン酸に分解されるときに放出される。

 そんなATPの何がすごいのかというと、エネルギーを必要とするありとあらゆる状況で、エネルギーとして使われているところだ。

 エネルギーの利用例としては、身体を動かす •心臓を動かす •筋肉を動かす •胃や腸を動かす •呼吸をする •代謝をおこなうなど、私たちが生きていくうえで必要なエネルギーはすべて、ATP(アデノシン三リン酸)から得ている。

 私たちが食事をする理由は、このATPをつくるためである。

 「ATPがエネルギー物質として重要なことはわかったんだけど、食べ物もエネルギーになってるでしょ。だから、最悪、ATPが足りなくても食べ物からエネルギーを取り出せばいいんじゃないの?

 それに、ATP以外にもなにか似たような物質があるんじゃないの?」... こういう風に思う人もいるかもしれないが、これは大きな間違い。たしかに、食べ物のなかにもエネルギーが蓄えられていて、そこから私たちはエネルギーを得ている。

 しかし、残念ながら食べ物をそのままの形からエネルギーとして使うことができない。私たち生物は、いったん「食べ物→ATP」という変換をしてからでないと、エネルギーを利用することができない。言い換えれば、私たちはATPを作るために食事をしている。

 じゃあ、ATP以外にもATPの代わりになるような物質があるのかというと、たしかにあるが、ほとんどの場合、ATPが使われている。ちなみに、ATP以外の物質としては、GTP、GDP、UTP、CTPなどがある。

 ATPをなにか他のものに例えるとしたら、電車に乗るために使うプリペイドカードの「PASMO」や「Suica」がイメージしやすいと思う。「PASMO」や「Suica」は、前もって現金をチャージしておくことで、改札をとおるときにカードをかざすだけで電車料金を支払うことができる。

 このカードに現金をチャージしておけばいくらでも電車に乗ることができる。しかし、現金がいくらあってもカードがなければ電車に乗ることはできない。必ず現金を、プリペイドカードの「PASMO」や「Suica」にチャージしてからでないと改札をとおることはできない。ATPもこれとほぼ同じようなものだ。食べ物をいったんATPという形にしておかないと、わたしたちはエネルギーとして利用することができない。

 1978年ノーベル化学賞のテーマは「ATP」

 ピーターミッチェルは1920年、ロンドン近郊のミッチャムで生まれた。クイーンズ大学では成績はあまり振るわず、校長の推薦で先客39年にケンブリッジのジーザス大学に入学した。自然科学学士課程で、物理学、化学、生理学、数学と生化学の勉強して、生化学では優等学位を得た。

 1942年、生化学ののダニエリ教授のもとで研究生となり、ペニシリンの作用機構の研究で、1951年に博士号を取得した。ジーザス大学で1950年から1955年まで、生化学の助手を務めた。

 1955年にエジンバラ大学に招かれ、学内で生化学研究室の立ち上げに関わる。1961年に上級講師となり、1962年には准教授となった。1963年にエジィンバラ大学を辞めると、コーンウオール州にグリン研究財団を創立・主宰し、1964年にグリン研究所の研究部長に就任した。

 ミッチェルは比較的早い時期から生物細胞がいかにして酸素や太陽光線中のエネルギーを取り込むのかについて研究し、その理論化に努めた。生物体で用いられるエネルギー保存及び利用に関与するアデノシン三リン酸(ATP)と言う物質は、ヌクレオチド(タンパク質)であり、細胞内でリン酸化によりATP生成されると推定されていた。

 彼は生物の細胞膜の内外における物質の移動、膜を隔てての化学反応などから、ATP合成が電気化学勾配によることなどを証明してノーベル化学賞を受賞した。

 ピーターミッチェル

 父親は公務員のクリストファー・ギブス・ミッチェル、母親はケイト・バートライス・ドロシー・タプリンである。彼はトーントンのクイーンズ大学とイギリスのケンブリッジ大学ジーザス校で生化学を学んだ。

  彼は1942年にケンブリッジ大学の生化学部局で研究職を得、1951年の初めに、ペニシリンの作用機構の研究により博士号を取得した。1955年にはマイケル・スワンに招かれ、エディンバラ大学の動物学分野の一部として、生化学部局の立ち上げに尽力した。

 彼はそこで1961年に研究職を得、1962年から病気で退任する1963年まで研究リーダーを務めた。1974年王立協会フェロー選出。1981年コプリ・メダル受賞。その後、彼は1965年まで、コーンウォール州ボドウィンに程近い、グリンハウスと呼ばれるレジェント様式の建物の修復を監督した。この建物は研究所として使われた。

 彼と同僚のジェニファー・モイレは、グリンハウスでの生化学研究の財政を支援するためグリン研究所という慈善団体を設立し、電気化学勾配反応の機構を研究する計画を立ち上げた。

 電気化学勾配による生体内でのエネルギー伝達に関する研究への貢献により、1976年にはローゼンスティール賞、1978年にはノーベル化学賞を受賞した。

 電気化学勾配仮説とは何か?

 酸化的リン酸化ミッチェルは、学生時代から生物細胞がいかにして酸素や太陽光線中のエネルギーを生体にとって不可欠な化合物、アデノシン三リン酸(ATP)に伝達するかを研究し、その理論の完成に努めていた。

 1960年代にはATPは生体内でのエネルギー通貨であることが知られていたが、ミトコンドリア内で基質レベルのリン酸化により生成されると推定されていた。

 ミッチェルの電気化学勾配仮説は、実際の酸化的リン酸化を理解する基礎となるものである。その頃、酸化的リン酸化によるATPの生成機構は全く分かっていなかった。

 ミッチェルは、電気化学ポテンシャルに従うイオンの動きがATPの生産に必要なエネルギーを作っていることに気づいた。彼の仮説は1960年代に既によく知られていた事実に基づくものであった。

 彼は、生きている細胞は全て、内部が負になる膜電位を持っていることを知っていた。彼はまた、ミトコンドリア内膜と外膜の電位差(約150mV)の存在をさまざまな研究者と立証した。

 膜を横断する電荷を持ったイオンの動きが電気の力により影響を受ける。その動きはまた、物質が濃度の濃いところから薄いところへ拡散する力によっても影響を受ける。

 彼は、ATP合成が電気化学勾配と関係していることを証明した。 彼の理論は、ATP合成に電気化学勾配のエネルギーを用いる膜タンパク質であるATP合成酵素が見つかったことで確かになった。

 アデノシン三リン酸のはたらき

 アデノシン三リン酸とは、ATPの正式名称である。化学式は、C10H16N5O13P3。モル質量 507.181 g/mol。アデノシンのリボース(=糖)に3分子のリン酸が付き、2個の高エネルギーリン酸結合を持つヌクレオチドのこと。

 ATPは真核生物や真正細菌の全てが利用している解糖系でも産生される物質であるため、地球上の生物の体内に広く分布する。生体内では、リン酸1分子が離れたり結合したりすることで、エネルギーの放出・貯蔵、あるいは物質の代謝・合成の重要な役目を果たしている。

 すべての真核生物がこれを直接利用している。生物体内の存在量や物質代謝におけるその重要性から「生体のエネルギー通貨」と形容されている。

 ATP分子に蓄えられたエネルギーは,細胞内で種々のATPaseによって利用される.ATPは、呼吸をする、心臓を動かす、筋肉を動かす、ホルモンを生成する、消化や吸収をするなど、人間の活動に不可欠な物質で、電化製品にとっての電気のような役割を果たしている。

 代謝エネルギーとATP生成量

 充足していると心が安定して、疲れにくい、よく眠れる体になるというATPは、脂肪酸を材料にエネルギー代謝されるルートと、ブドウ糖(グルコース)を材料に体内で生成されるルートの2通りがある。

 エネルギー代謝の場合は、脂肪酸を材料にすると129個のATPを作ることができるという。一方、グルコースを材料にすると36個と、約3分の1に。

 さらに、糖質過多の状態になると糖質の代謝にビタミンやミネラルが使われるため、ATPを生成するエネルギー代謝に使う分が不足。すると不完全燃焼のような状態となり、ATPが作れる個数はなんとたった2個だけになる。

 つまり、ATPを多く生成して元気な体にするためには、糖質過多の食事を改善して、糖質摂取量を減らすことと、脂肪酸をしっかり摂取することが大切。

 ATPを多く生成するために、もう1つ重要なのは、エネルギー代謝を助けるビタミンC、ビタミンB群、ビタミンEなどのビタミンやたんぱく質、鉄を十分に摂ること。 食事だけでは不足がちな栄養素は、サプリメントで効率よく摂取するのがよい。

  

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