世界の平和は核兵器で維持されている

 8月15日は76回目の終戦記念日。世界は平和になっただろうか?

 日本は「八紘一宇」の大きな理想を掲げ、太平洋戦争に突入したが、日本の正義・理想だけでは経済力に勝る米国に勝てなかった。戦後、日本は民主主義を学び経済的にも繁栄した。だが、世界は平和になっていない。なぜか?

 その理由は、経済的に反映している国の中にも経済的格差があり、矛盾をかかえているからだ。それは、それぞれの国のイデオロギーの完成度に問題がある。まだ、人類は正しいイデオロギーに辿り着いていない。

 現在、経済力に優れた国どうしが強力な軍事力を背景に平和を何とか維持している。その象徴となっているのが核兵器。核兵器の開発のために行われた数々の核実験、核爆発。その一つが広島・長崎であった。

 核実験はそれで終わらなかった。ある時は地上で、ある時は空中で、ある時は地中で、ある時は宇宙で行った実験もあった。

 米国の壮大なスターフィッシュ・プライム実験

 1945年に初めての核実験が行われて以降、冷戦期にはアメリカ合衆国・ソビエト連邦を中心に2379回(その内大気圏内は502回)の核実験が各国で行われた。回数が最も多いのが米国の1127回で、広島と長崎への実戦投入も含まれる。次いでソ連の726回、中国で46回、イギリス45回。インド、パキスタン、北朝鮮でも行われている。

 1963年に部分的核実験禁止条約 (PTBT)が締結されるまで、多くの実験は大気圏内や水中で行われていた。その後は放射性物質の飛散がほとんどない地下核実験が主流となった。

 その中で、大気圏外で行われた核実験があった。「高高度核実験」というもので、核弾頭を高層大気圏または低高度の宇宙空間に発射し爆発させる実験である。米国とソ連がおよそ20回行い、このうち最大規模だったのは、1962年に米国が行ったスターフィッシュ・プライム実験の1.4メガトンである。

 この実験は夜行われたが、爆発すると、空全体がまるで昼間のように明るくなった。スターフィッシュ・プライムが爆発した高度400キロメートルは、現在、国際宇宙ステーションが周回する軌道とほぼ同じ高さだ。

 最初の爆発から約15分間、爆発によって生じた荷電粒子が大気中の分子と衝突して、人工のオーロラが現れた。遠くニュージーランドからも、このオーロラを見ることができたという。

 爆発に伴う電磁パルスの影響で、ハワイのラジオ局は機能不全に陥り、緊急サイレンが鳴り、街灯が消える騒ぎになった。その後、実験で発生した放射線は、地球の磁場にとらえられ、科学者の予想を上回る強力な人工の放射線の帯を作り出した。

 後に「スターフィッシュ帯」と呼ばれた放射線帯は10年以上の間、宇宙空間にとどまり、テレビの生中継に初めて成功した米国の人工衛星テルスター1号や、英国初の人工衛星アリエル1号を故障させる原因となった。

 スターフィッシュ実験が行われたドミニク作戦

 ドミニク作戦は、キューバで起きたピッグス湾事件から間もない、米ソ冷戦の緊張が最も高い時期に実施された。

 1961年8月30日に当時のソ連共産党書記長ニキータ・フルシチョフは、ソ連が3年間続けていた核実験の一時停止を終了し、9月1日から実験を再開すると宣言した。

 この再開後の実験の中には、人類史上最大の核実験であるツァーリ・ボンバも含まれていた。当時の米国大統領ジョン・F・ケネディは、これにドミニク作戦の実施を承認することで応えた。

 なお実験の翌年である1963年には、モスクワで米国、ソ連、及びイギリスの間で部分的核実験禁止条約が調印され、以降の大気中での核実験が禁止された(本条約の調印以降は、地下核実験が主体となって行った)。

参考 National Geographic:米国の壮大な実験 宇宙で核兵器を爆発させてわかったこと