太陽系の惑星はいつ発見されたの?

 西暦83年~168年頃に活躍した、エジプトの天文学者プトレマイオスの時代にはすでに5つの惑星、水星、金星、火星、木星、土星は知られていた。当時は月も太陽も地球のまわりをまわる惑星と考えられていた。

 他の惑星はいつ発見されたのか?

 次に発見されたのはそれから1600年後、イギリスのウィリアム・ハーシェルが、1781年4月26日に天王星を発見した。海王星は、1846年ドイツのヨハン・ゴットフリート・ガレとフランスのユルバン・ルヴェリエによって発見されている。

 1930年にはアメリカのクライド・トンボーが、冥王星を第9惑星として発見したが、2006年には準惑星に格下げされた。冥王星ほどの大きさの小天体が後に多数発見されたからである。

 天王星の発見から海王星の発見まで65年、海王星から冥王星まで84年もかかっている。それから91年経った現代でもなかなか次の惑星は発見されていない。はたして第9惑星は存在するのだろうか?

 ある天文学者たちは、太陽系外縁のどこかに、地球のおよそ6倍の質量をもつ惑星が潜んでいると考えている。それはなぜだろうか?

 第9惑星は あと1~2年で見つかる?

 論文によると、これまで第9惑星(プラネット・ナイン)は太陽の周囲を1万8500年の周期で公転していると考えられてきたが、新たな計算ではその期間が7400年に短縮された。

 また、質量は地球の約6倍である可能性が高い。地球よりは大きな岩石惑星か、あるいは海王星よりは小さなガス惑星かということになるだろう。

「あと1~2年でプラネット・ナインは見つかると思います」と、論文の著者ブラウン氏は自信を見せる。ただし、「ここ5年ほど、毎年同じ予測を立てていますけどね。私は超楽観的な性格なので」と付け加えた。

 ブラウン氏と共同研究者のバティギン氏はプラネット・ナインが潜んでいそうな空の一帯を示した「宝の地図」も作成した。その地図を横切るように、天の川が流れている。

 なぜ第9惑星が発見できなかったか?

 プラネット・ナインの公転周期は7400年。ここ100年以上もの間、多くの星が密集し明るい光を放つ天の川に隠れていたために、これまで見つけられなかった。

「これで、どこを探すべきか、どこを探さなくても良いかがわかります。私たちの方で何か間違えていない限り、大丈夫でしょう」と、ブラウン氏は言う。

 ブラウン氏らがプラネット・ナインは存在すると考える理由は、それが海王星の外側にあるカイパーベルトの天体の一部に影響を与えているように見えるためだ。

 カイパーベルトに集まる小さな天体のなかには、太陽に最も接近したときの距離は太陽・地球間の約50倍以内なのに、最も離れたときはその3倍以上になるなど、極端な軌道を持つものがある。

 2016年、バティギン氏とブラウン氏は、そのうち6個の天体について詳しく調べていた。それらの天体の楕円形で傾いた軌道は、科学者たちを長年困惑させてきたが、このときブラウン氏らのチームは、質量が地球の約10倍ほどの惑星が、重力によって天体の軌道に影響を与えているに違いないと結論付けた。

 惑星の質量は、地球よりは大きく、海王星よりは小さいと推定された。


 第9惑星が存在する証拠

 ブラウン氏とバティギン氏は今回、2016年に発表した論文以降の議論にこたえるべく、プラネット・ナインの大きさと軌道を計算し直した。その際、前回とは少し異なる天体に目を付けた。

 5年前に調べた6個の小天体のうち一部は残したが、新たにいくつか別の小天体を加え、最終的に11個のカイパーベルト小天体を分析対象とした。

 その結果、これらの小天体の奇妙な軌道は99.6%の確率で、未知の天体の影響を受けているという結論に達した。

 米アリゾナ大学のレヌ・マルホトラ氏は、この数字に感心しつつも、逆に言えば250分の1の確率で偶然そうなった可能性もあるということだと指摘する。

 2016年のブラウン氏らによる予測では、その確率は1万分の1だった。マルホトラ氏は、プラネット・ナインの存在を否定も肯定もすることなく、独自にその位置を調べている。

 11個の天体の軌道を形作っているものが何であれ、バティギン氏は他にも多くのシミュレーションを実行し、その特徴や、特に位置と質量についての予測を出した。

 プラネット・ナインの軌道があるであろう方向を指し示す「宝の地図」は、そうやって作成された。ただし、地図のどこに惑星が潜んでいるかはまだ一切わかっていない。

 新しく計算された質量は、地球の5~6倍と、過去の予測より小さくなった。同時に軌道も過去の予測より小さくなり、地球に近くなったため、プラネット・ナインはこれまで考えられていたよりも明るく夜空に輝いているはずだ。ただしブラウン氏によれば、惑星が何でできているかによって明るさは変わってくるという。

 プラネット・ナインの見つけ方

 もしプラネット・ナインが実在するなら、現在それは地球から最も離れた軌道上にあるのではないかと、ブラウン氏とバティギン氏は考えている。

 あまりに遠すぎて姿がかすんでしまい、さらに他の星々に紛れて見えなくなっているのだろうと。

 現在ブラウン氏らは、ハワイ島のマウナケア山にある、すばる望遠鏡を使ってプラネット・ナインを見つけようとしているが、地球上に存在する最も鮮明な望遠鏡であっても、それは容易な仕事ではない。

 ブラウン氏らが計算ではじき出した明るさと軌道であれば、プラネット・ナインは天の川に集まる他の明るい星たちに交じって見えにくくなっている可能性が高い。

 「隠れているとしたら、天の川のなかだとしか考えられません。こんなに明るく、こんなに近くにあって、こんなに目立つ天体なのですから。でも、もうすぐ見つかると思いますよ」と、米エール大学の天文学者グレッグ・ラフリン氏は話す。

 頼みとするのはすばる望遠鏡だけではない。太陽系外惑星を探しているNASAの「トランジット系外惑星探索衛星(TESS)」もまた、プラネット・ナインの軌道があると思われる領域を観測したときに、その姿をとらえるかもしれない。

 2019年に天文学者たちは、TESSの観測データをうまく処理すれば、太陽系外縁の天体を拾い出せるかもしれないと提案した。現在、ラフリン氏とエール大学のマレナ・ライス氏がこの作業に取り組んでいる。


 期待される口径8.4m「LSST」

 だが、多くの天文学者が最も期待を寄せているのは、チリの山頂に現在建設中のベラ・ルービン天文台だ。およそ満月40個分という驚異的に広い視野を持つ口径8.4メートの「大型シノプティック・サーベイ望遠鏡(LSST)」は、設置場所から見渡せる限りの夜空を、数日ごとに撮影できるという。2023年から本格的な運用が開始されれば、天文学者たちは数百万もの天体の動きを追えるようになるはずだ。

 そのなかには、宇宙ゴミ、隕石、彗星、スパイ衛星、恒星、そしてプラネット・ナインが含まれているかもしれない。

 ベラ・C・ルービン天文台のデジタルカメラに搭載される直径64センチのセンサーアレイ。天文観測では史上最大の3.2ギガピクセル(32億画素)を誇る。

 米国の資金でチリに建設中のこの天文台は、2023年に運用を開始する予定だ。小天体をおよそ500万個発見できると期待されている。

参考 National Geographic:太陽系に未知の惑星、99.6%存在、天の川の方向