スノーボールアース

 今から考えるとちょっと信じられないが、地球はかつて全体が氷におおわれていた時期があった。

 これをスノーボールアース(Snowball Earth)という。日本語では、全球凍結、全地球凍結と表記される。そして、これが原因となって原生生物の大量絶滅(大絶滅)とそれに続くカンブリア爆発と呼ばれる跳躍的な生物進化をもたらしたと考えられている。

 ではなぜ、そのような全球凍結は起きたのか?

 現在の地球環境が温暖に保たれているのに重要な役割を果たしているのが、実は二酸化炭素である。太陽からの距離だけを考慮すると、地球の平均気温はおよそマイナス20℃と計算される。二酸化炭素などの温室効果ガスのおかげで地球は暖かい。そしてこの二酸化炭素は長期的にみれば火山活動によって安定に供給されている。

 つまり、火山活動が低下すれば、二酸化炭素の量が減り気温は低下し全球凍結は起きる。

 そのような気温の急激な変化の中で、本当に生物の大進化が進んだのだろうか?

 全球凍結、生物進化の過程を明らかに 

 東北大学の静谷あてな氏(博士課程後期3 年、現:福井県立恐竜博物館研究職員)と海保邦夫教授(東北大学名誉教授)らは、6 億5〜3 千万年前の全球凍結―解氷時に形成されたこれらの地層の岩石試料を分析した。

 そこに含まれる光合成生物、真正細菌、真核生物に特有の有機分子の量を、それぞれの生物が存在したことの指標となる「バイオマーカー」として割り出した。

 その結果、全球凍結中にも光合成生物(藻類)が存在した証拠、及び、解氷後に生物量極小を経て真正細菌 が増え、その後、真核生物が栄えた証拠を得た。

 これらの証拠から、解氷時の異常に高い気温で生物量極小化し、気温が下がる途中で真正細菌が増え、気温 が普通の状態になると真核生物が増えたと解釈できる。


 バイオマーカーとしての有機物と炭酸塩岩

 全球凍結は世界の大陸が一つにまとまっていた時代に、海嶺の火山活動による二酸化炭素(CO2)の放出が減って起こったとされる。

 それは海底に残された炭酸塩岩で分かる。これは大気中に蓄積した二酸化炭素による温室効果によって全球凍結が終了した後に、大気中の二酸化炭素が海で沈殿し形成されたものと考えられている。

 その後、大陸が分かれると海嶺のCO2放出が再び増えて温暖化。すると氷が解けてCO2が海に多く溶けるようになり、大気からCO2が減って気温が下がった。

 研究グループは、モデル計算で提唱されてきたこうした気候変化に対し、マリノアン氷期やその後の時代についてバイオマーカーを明確に示し、生物の変化の全体像を明らかにした。

 岩石試料からバイオマーカーが見つからない時代には、気温60度といった極端な温暖化で生物が減り、その分、進化が起きやすくなったと考えられる。また、海にCO2が溶け込み気温が下がる過程では真正細菌が増加。さらに気温が下がり、真核生物が増えたと解釈できる。


参考 東北大学:スノーボールアース後に真正細菌、その後、真核生物繁