太平洋クロマグロ「準絶滅危惧」に

 コロナ禍でもお寿司屋さんは人気だ。そのネタの中でも一番人気のマグロは世界中でも需要が増してきている。マグロのなかまは8種類あるが、特に人気があるのがクロマグロだ。


 今回、このクロマグロが「準絶滅危惧」に指定された。

 日本近海のクロマグロはタイヘイヨウクロマグロと呼ばれている。タイヘイヨウクロマグロ以外には 「タイセイヨウクロマグロ」 「ミナミマグロ」 「メバチマグロ」 「ビンナガマグロ」 「キハダマグロ」 「コシナガマグロ」 「タイセイヨウマグロ」 の7種がある。

 日本では20世紀後半頃からクロマグロが高級魚と化した。魚体の色と希少価値から「黒いダイヤ」と呼ばれるほどにもなっている。海外での消費や対日輸出も増え、21世紀に入ると世界的にも食用魚の中でも最高級品の一つとして位置づけられている。

 価格高騰に伴って乱獲が進み、漁獲規制が必要となっている。世界の野生生物の専門家などでつくるIUCNは8月4日、総会が開かれているフランス南部マルセイユで記者会見し、野生生物を絶滅のリスクに応じて分類した「レッドリスト」の最新版を公表した。

 太平洋のクロマグロの分類については資源の状況を再評価した結果、高い絶滅の危機に直面していると考えられる絶滅危惧種の「危急」というカテゴリーから1段階引き下げ、近い将来絶滅危惧種に分類されると考えられる「準絶滅危惧」のカテゴリーとした。

 ただ、長年の乱獲の影響で資源量の減少は依然深刻だとして引き続き持続可能な漁業を求めている。

 まだ難しい、クロマグロの養殖

 クロマグロは、漁獲規制だけでなく、自然界の資源量に影響を与えない完全養殖手ロの養殖法の確立が求められてきた。

 かつては飼育の難しさから完全養殖は不可能と考えられていた。1970年に研究に着手した日本の近畿大学水産研究所が2002年に人工孵化からの完全養殖に成功した。

 「クロマグロ完全養殖の技術開発」は、農林水産大臣から「平成16年度民間部門農林水産研究開発功績者」として表彰された。

 完全養殖は可能となったものの、人工授精後、生け簀(いけす)に入れられるまで生存する率はいまだ3%程度に留まっている。

 また、クロマグロは水族館でも、その大きな体から人気があるが、高速で遠距離を泳ぐという形に進化したマグロは、水槽にぶつかると簡単に傷つくほど皮膚が弱く、飼育するのは簡単ではない。

 養殖いけすでも、網にぶつかって傷つくのを避けるために、網に目印を付けたり、夜間照明をするなどの工夫が行われている。それでも、いけすから出荷までの生存率は30%程度(2016年時点)に留まっており、マダイ養殖の80%に比べてもかなり低い。

 稚魚の生存率を下げる共食いを防ぐため、上記の極洋フィードワンマリンに出資する配合飼料会社のフィード・ワンは、ホタテ内臓から抽出したアミノ酸を魚粉を混ぜるなどして、稚魚が好んで食べる飼料を開発・使用している。

 養殖に適した水温は20-30℃で、水温が低すぎると越冬できず、高すぎると活動が活発になり無駄に餌を消費する。硬いものを吐き出すクロマグロの性質から、養殖用の餌も魚粉と魚油を練って二層の柔らかい構造にするなど、特別な工夫が凝らされている。

 クロマグロ名前の由来

 鮪の事を現在の日本ではクロマグロを指す。その他のマグロはキハダ、ビンナガなどの別称で多くは呼ばれる。

  その上でマグロの「鮪」の名前の由来は目が大きく真っ(目黒→マグロ)に由来する説がある。 また、過去保存する事が困難で常温状態ですぐに真っ黒になってしまうという事で、真っ黒→マグロという説も存在する。

 鮪の漢字の「有」は「外側を囲む」という意味で、 鮪の回遊が外側を囲むように回遊から来た語源より由来した。

 クロマグロの生態

 クロマグロは産卵場所の台湾や南西諸島近海、日本海から太平洋北海道、オホーツク海、ベーリング海峡、を回遊し北米大陸西岸の沿岸を回遊し、日本近海に戻る広い海域を回遊する分布となっている。

 タイセイヨウクロマグロはその名の通り、大西洋の南は赤道付近から、地中海、カナダ沿岸のバフィン湾、ノルウエー沿岸域を回遊し、広い海域に分布する。

 クロマグロは日本ではお馴染みの「ホンマグロ」と「タイセイヨウクロマグロ」の2種をクロマグロと指す。

 クロマグロの成魚は体長3m・体重400kgを超え、日本近海のマグロとしては最大のもの。対してタイセイヨウクロマグロは、マグロの中で最大種で、4.5m・体重680kgに達し魚の中でも超大型種となる。

 大きさ以外に外見の差異は無く区別がつかない。この2種はマグロの王様、海の黒ダイヤと言われ高級マグロの代表として取扱われ、天然物は1匹100万円以上で取引される。