温室効果“CO2の300倍”「一酸化二窒素」

 温室効果ガスは何も二酸化炭素やメタンだけではない。水蒸気、一酸化二窒素、フロンなども温室効果ガスに該当する。近年、大気中の濃度を増しているものもあり、地球温暖化の主な原因となっている。

 フロンガスはもう使用が禁止されているが、他の気体は自然発生する。中でも農業で使われる窒素肥料などが原因で排出される「一酸化二窒素」は、温室効果が二酸化炭素のおよそ300倍あり、削減が課題となっている。

 こうした中、国の研究機関「国際農研」は国内外の大学などと共同で、一酸化二窒素の排出量を抑える効果のある小麦の新品種を開発した。

 窒素肥料の成分が一酸化二窒素に変わるのを防ぐ効果があり、実験では排出量を25%減らすことができた。

 また、肥料の成分を効率よく吸収できることから、6割程度肥料を減らしても通常の小麦と同じぐらいの生産量を維持できるという。

 国際農研の吉橋忠グループリーダーは「農業からの温室効果ガスの排出を減らすことが重要だ」と話していました。

 また、東北大学や農研機構を中心とするグループは、大豆畑で発生する一酸化二窒素を別の無害なガスに変える機能を持つ菌の研究を進めている。

 これまでに収穫期の畑からの排出を30%削減でき、さらなる削減を目指しているという。

 温室効果ガスとは?

 京都議定書において、排出量削減対象となる温室効果ガスが指定された。環境省において年間排出量などが把握されている物質としては、二酸化炭素 (CO2)、メタン (CH4)、亜酸化窒素(N2O、=一酸化二窒素)、ハイドロフルオロカーボン類 (HFCs)、パーフルオロカーボン類 (PFCs)、六フッ化硫黄 (SF6) の6種類がある。

 IPCC第4次評価報告書では、人為的に排出されている温室効果ガスの中では、二酸化炭素の影響量が最も大きいと見積もられている。

 二酸化炭素は、石炭や石油の消費、セメントの生産などにより大量に大気中に放出されているといわれる。これに対する懐疑論も一部見られるが、多くは科学的論拠によって反論されている。

 また気候変動が世界各地で顕在化していることなどから、温暖化の主要因として相関性の高さが問われ、さらに悪化傾向が懸念されている。2015年、環境省などが温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」の観測データから、2016年平均濃度が温暖化の危険水準である400ppmを超えてしまった。

 水蒸気も温室効果を有し、温室効果への寄与度も最も多い。蒸発と降雨を通じて、熱を宇宙空間へ向かって輸送する働きも同時に有する。人為的な水蒸気発生量だけでは、有為な気候変動は発生しないが、全体的には上記のような物質が気候変動の引き金となり、水蒸気はその温暖化効果を増幅するとされる。

 それぞれの温室効果は、二酸化炭素を1とすると、水蒸気は2倍、メタン は25倍、一酸化二窒素(亜酸化窒素)300倍。トリフルオロメタン(HFC-23)では14,800倍である。


参考 NHK news:温室効果“CO2の300倍”「一酸化二窒素」排出削減へ