世界の子供たち3人に1人が鉛中毒

 2020年7月30日、世界中で最大8億人の子どもが、水質・大気汚染が原因で鉛中毒になっていると警告する特別報告書を、国連児童基金(ユニセフ、UNICEF)が発表している。

 その原因は、貧困国における、リサイクルされずに放置される自動車用バッテリー。これらの国々では2000年以降、路上の車両数が倍増している。そのため、世界の子ども3人に1人が、強力な神経毒の鉛の血中濃度が、長期的には危険なレベルにあるという。

 日本でも過去に公害などで問題になることはあったが、現在では環境はかなり良くなった印象である。しかし、そんな日本に鉛汚染の現状があると聞くと驚く。いったいなぜだろうか?

 原因は狩猟で使われる鉛を含んだ弾。これを野鳥が飲み込んで鉛中毒になり死ぬケースが後を絶たないという。

 環境省は今後、鉛の弾の使用を段階的に禁止にして、2030年度までに鉛中毒になる野鳥をゼロにすることを目指す方針を決めた。

 野鳥の鉛中毒は “鉛の弾”が原因

 狩猟で使われる鉛を含んだ弾を飲み込んで鉛中毒になり、野鳥が死ぬケースが後を絶たないことから、環境省は今後、鉛の弾の使用について段階的に規制を強化し、2030年度までに鉛中毒になる野鳥をゼロにすることを目指す方針を決めました。

 環境省によると、主に北海道では国の天然記念物に指定されているオオワシなどの野鳥が、銃で撃たれた鹿などの肉を食べ、鉛の弾を飲み込んで鉛中毒になって死ぬケースが毎年、報告されている。

 鉛の弾については、法律に基づき、使用禁止の区域が全国で定められているほか、北海道はエゾシカ猟のための鉛の弾の所持を条例で禁止しているが、被害は後を絶たない。

 このため環境省は4年後の2025年度以降、鉛の弾の使用について規制を強化し、2030年度までに鉛中毒になる野鳥をゼロにすることを目指す方針を決めた。

 すでにスタートさせている全国規模での実態調査を強化し、鉛中毒のリスクが高い地域や狩猟の方法を見極めたうえで、段階的に鉛の弾の使用を禁止することを検討しているという。

 小泉環境大臣は記者会見で「対策を講じるには猟友会など関係団体の協力が不可欠であり丁寧に意見を聴きながら、理解が得られるよう議論を重ねていきたい」と述べた。

 鉛中毒症とは?

 鉛中毒症とは、口から摂取した鉛の毒性によって起こる病気のことです。鉛中毒症自体は、早期に診断されれば解毒剤もあるので治療可能な病気ですが、仮に治療が遅れてしまえば数日で死亡してしまう恐ろしい病気でもある。

 鉛中毒症の症状としては、嘔吐・食欲不振、緑色の尿や糞、体温低下、ふるえ・痙攣などがある。

 鉛はヘモグロビン合成を阻害するため、血液塗抹標本上では有核赤血球や好塩基性斑点が認められる。急性中毒では嘔吐、腹痛、ショックなどを示し、慢性中毒では、初期症状として、疲労、睡眠不足、便秘、摂取量が増えるに連れ、腹痛、貧血、神経炎などが現れ、最悪の場合、脳変性症に至る。

 主に消化器症状、神経症状が認められる。また、貧血が認められることもある。肉眼的所見として脳水腫、大脳皮質の軟化、組織学的所見として脳回頂部における海綿状変化、血管内皮細胞腫大、星状膠細胞腫大、虚血性神経細胞死が確認される。

 肝細胞、尿細管上皮細胞、破骨細胞の核内に好酸性封入体が認められることがある。 注意欠陥・多動性障害 (ADHD) との関連が指摘されている。

 脳と肝臓に多く蓄積し、他の臓器や組織にも広く分布する。鉛中毒における毒性の原因は酵素の働きを阻害することである。

 体内に入った鉛は酵素のチオール基(SH基)と強固に結合し、チオール基を有する種々の酵素の働きを阻害する。

 特に造血組織でアミノレブリン酸脱水酵素のSH基に結合して貧血を起こすことが典型例である。

 造血組織でのアミノレブリン酸脱水酵素の阻害は、貧血症状とともに激しい腹痛や神経症状を示すポルフィリン症を引き起こすことが知られている。 また、小児は成人よりも鉛を経口摂取した場合の消化管からの鉛の吸収率が良く、成人では経口摂取しても10%程度の吸収率であるのに対し、小児が経口摂取すると約50%が吸収される。

 このようなこともあり、小児には少量でも知能指数低下や神経障害の原因となる場合がある。また、胎児においては子宮内鉛曝露量が多いほど出生時の体重が低いとする研究がある。

 そもそも銃弾に鉛が使用されている理由

 銃弾に鉛が使用される1番のメリットは、『安価で比重が大きい』点。鉛は地球上にある金属の中でも、トップレベルで比重が大きい物質。

 鉛より比重が大きい物質だと、タングステンや金があるけどどれも高価で現実的ではない。鉛は融点が低く、加工しやすいところも銃弾の素材に向いている理由。

 それともう一つ大事な理由として、鉛の素材としての柔らかさが挙げられる。獲物に着弾した際、弾頭がマッシュルームのような形になることをマッシュルーミングと呼んでいるが、これはそのような形で潰れることで、獲物に大きなダメージを与えることが目的であり、弾薬メーカーはマッシュルーミングが起こるよう意図的に製造している。

 鉛弾が使用禁止になると狩猟はどうなるのだろうか?

 鉛以外の素材で弾頭を作ることは可能で、実際に北海道では銅製の銃弾が使用されている。ただ、銃弾の価格自体は鉛弾よりも高価になってしまう。

 銃弾が高くなると、狩猟人口の減少に繋がり、有害鳥獣の増加にも繋がるのが、課題の1つ。