ながらスマホ

 運転しながらのスマホ操作はさすがに危ない。2019年から始まった「ながら運転」の厳罰化。車の走行中にカーナビやスマホを操作すると違反になることは、いまや常識になった。歩きスマホはどうだろうか?

 電気通信事業者協会が実施した、いわゆる「歩きスマホ」の実態調査によれば、利用者の半数近くにあたる44.8%が「歩きスマホをしている」と回答した。日本では、自転車に乗りながらの携帯電話を禁止する法規制はあっても、「歩きスマホ」を規制する法律や条例はない。

 今年の「イグ・ノーベル賞」の受賞者が発表され、日本からは、歩行者どうしがぶつかるのを自然に避ける仕組みを「歩きスマホ」を使って調べた京都工芸繊維大学の研究者らが「動力学賞」を受賞した。

 ユニークな歩きスマホの研究

 京都工芸繊維大学助教授の村上久らの調査によると 「27人ずつが、幅3メートルの通路を10メートル歩いてすれ違い」 「うち三人に歩きスマホをさせ、一人に簡単な四則演算をさせた」 時に通常時よりも大幅に列が乱れ歩行速度が落ちることを解明した。

 その結果、「歩きスマホ」で注意が散漫になると、周辺の人の動きも乱れてぶつかりそうになったということで、歩行者どうしが相手の動きを「予期」することの重要性が確かめられたという。

 イグ・ノーベル賞の主催者は、授賞理由について「周囲に注意を払うことが重要だということを気付かせた」としている。日本人がイグ・ノーベル賞を受賞するのは15年連続。

 個人だけでなく集団の動きも影響されるという今回の研究。やっぱり、歩きスマホには気を付けなければいけない。

 スクランブル交差点での実験

 NTTドコモが以下のように設定し、シュミレーション実験を行なっている。 人数は1500人。 身長は160.3cm、体重は58.8kg(2011年に厚生労働省が公表した日本人成人の平均)。 

 場所は渋谷スクランブル交差点。 青信号点灯時間は46秒。 歩行速度は6km/h、4km/h、3km/hの3タイプ。

  目的地はハチ公前方面、京王井の頭線方面、センター街方面、原宿方面で、各自最短距離を歩く。 対象物を認知した時にとる行動は「左右に避ける」「立ち止まる」「そのまま進む」の3タイプ。 

 衝突した場合に起こりうる出来事は「謝る」「スマホを落とす」「倒れる」の3通りに設定。 

「もしもスクランブル交差点を横断する人が全員歩きスマホだったら?」というシミュレーションを行った結果、 衝突446件 転倒103件 スマホ落下21件 横断成功者547人 という結果となった。