
東洋のガラパゴス諸島
ガラパゴス諸島では、いくつかの動物や植物のグループで、ひとつの種から爆発的な多様化が起き、さまざまな形や生活様式をもつ種類へと進化が起きています。このような多様化は適応放散と呼ばれ、ダーウィンが進化論を語るのに用いられました。
たとえばガラパゴス諸島のダーウィンフィンチやガラパゴスゾウガメ、イグアナなどの生物は、生活場所によって姿や性質を変えているのが観察できます。こうした研究は海洋島や湖の生態系が、進化の自然の実験室であることをよく物語っています。
実は日本にも適応放散が観察できるところがあります。その一つが小笠原です。小笠原の多様で特徴ある生物たちを見ると、東洋のガラパゴスと呼ばれている理由がわかります。(他に沖縄や奄美諸島などもこう呼ばれる)
その小笠原で多様な進化を遂げた生物にカタツムリのなかまがいます。小笠原のカタツムリは、確認された計95種のうち88種が固有種なんだそうです。
小笠原では最近新種のものが5種類発見されました。しかしその新種は絶滅種で、その大きさは1ミリの小型種が4種、2センチの中型種が1種だったそうです。
たかがカタツムリということなかれ、カタツムリの進化を通して我々人間もどこから来てどこへ向かっていくのかのヒントが隠されていることが多いのです。
今日は小笠原のカタツムリについて調べます。(参考HP進化の小宇宙: 小笠原諸島のカタマイマイ)
カタツムリ、「新種」5種見つかる 小笠原
固有の豊かな自然が失われつつある東京都の小笠原諸島で、新種とみられるカタツムリ5種の貝殻が見つかった。約800年前の地層で出土し、すでに絶滅したものらしい。発見場所は都の河川工事現場で、土砂に交じる大量の貝殻に気付いた島民の機転で、間一髪で埋め戻されずに済んだ。
父島を流れる八ツ瀬川で6月、工事で掘り起こされた河原の土砂を東北大の千葉聡・助教授(進化生態学)が調べ、計25種を確認した。うち新種とみられるのは大きさ2センチ前後の中型種と、1ミリほどの小型種4種。千葉さんは新種を報告する論文の準備を急いでいる。
小笠原のカタツムリは、確認された計95種のうち88種が固有種で、独自性の高い自然を象徴している。今回確認された25種のうち、父島に現存するのは7種だけ。800年前は無人島だったため、「小笠原本来の豊かさが人為的影響で失われた可能性が高い」と千葉さんは話す。
新種が見つかった土砂は、5月中に埋め戻す予定だった。だが島民からの連絡で、地元NPOの小笠原自然文化研究所が都にかけ合い、土砂の一部を残してもらった。
文部科学省によると、工事中に見つかった文化財は、文化財保護法に基づいて調査などの手段がとられるが、化石などの場合は法的に保護されない。同研究所の佐々木哲朗研究員は「今回は都の協力もあり、貴重な郷土資料を残せた。今後、同様の工事の際には、きちんと調査できる体制をつくって欲しい」と話している。 (2006年08月18日)
今回発見されたタイプ?
小笠原のカタツムリとは?
カタツムリのなかまを陸産貝類というが、陸産貝類は日本全体で700種ほど知られています。小笠原群島からは約100種の陸産貝類が記録されています。
小笠原の陸産貝類は、外来種を除くとその90%以上が固有種です。さらに小笠原の固有属と考えられるものが少なくとも7属あります。(オガサワラヤマキサゴ属、オガサワラキセルガイモドキ属、キバオカチグサガイ属、テンスジオカモノアラガイ属、エンザガイ属、エンザガイモドキ属、カタマイマイ属)
オガサワラヤマキサゴ属 テンスジオカモノアラガイ属
オガサワラヤマキサゴ属 エンザガイ属
多様性の見られるカタツムリは?
オガサワラヤマキサゴ属、エンザガイ属、カタマイマイ属は、島で著しい進化と多様化を遂げ、多数の種に分化しています。その貴重さと重要性から、小笠原の固有陸貝はすべて国の天然記念物に指定されています。
カタツムリ王国とも言うべき小笠原にあって、固有陸産貝類を代表する存在が、カタマイマイ属です。著しく硬い殻をもつことからこの名があります。
カタマイマイ属は同じ地域に住む種間では、食べる餌や餌を食べる場所、休眠する場所が種ごとに異なっています。これらは地表で落葉を食べる地上性、木の上でもっぱら葉を食べる樹上性、木の上だけでなく地面にも降りる半樹上性という生活様式に大きく区別されます。
また地上性の種が2種共存する場合、一方は常に落葉層の下部に潜って休眠する(底生)のに対し、一方は、落葉層の表面近くで休眠します(表生)(Chiba, 1999a)。
樹上性カタマイマイ 地表性カタマイマイ
多様化の見られるガラパゴスの動物たち
イグアナ フィンチ


ゾウガメ アザラシ


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