いよいよ2006年ノーベル賞の発表だ。今年は日本人から選ばれるだろうか?受賞者の発表日程がノーベル財団より明らかにされた。

それによると2日医学生理学賞 3日物理学賞 4日化学賞 9日経済学賞 13日平和賞とのこと。

そして、本日ノーベル医学生理学賞の受賞者が米スタンフォード大学のアンドルー・ファイアー教授(47)と、米マサチューセッツ大学医学部のクレイグ・メロー教授(45)の二人に決まった。受賞研究名は「RNA干渉」である。

 通常DNAは2本鎖でRNAは1本鎖。核にあるDNAという全体設計図から、RNAという部分設計図がコピーされ、核の外に出、リボゾームというところで、タンパク質が合成される。

ところが最近、ある種の「2本鎖RNA」が細胞内部のRNA]を阻害し、タンパク質をつくらせないことを発見。これを「RNA干渉」という。

「RNA干渉」を応用して、ガンなどの悪性タンパク質をつくる「狂ったRNA?」の働きを抑える「2本鎖RNA」をつくればガンに効く薬になる理屈だ。

 今日は「DNA、RNA」とは何か?「RNA干渉」とは何か?学ぶ。 

 ノーベル医学生理学賞、「RNA干渉」発見の米2氏に

 スウェーデンのカロリンスカ医科大学は2日、今年のノーベル医学生理学賞を、米スタンフォード大学のアンドルー・ファイアー教授(47)と、米マサチューセッツ大学医学部のクレイグ・メロー教授(45)に贈ると発表した。生体内でDNAとともに遺伝情報を担うリボ核酸(RNA)が遺伝子の働きを抑える「RNA干渉」という現象を見つけたことが評価された。賞金は1000万クローナ(約1億6000万円)で、両氏で折半する。授賞式は12月10日、ストックホルムである。

 この現象を応用して、がんなどの治療に生かそうという研究が世界中で進んでいる。その研究に関連して東京大教授らの論文捏造(ねつ・ぞう)疑惑が浮上するなど、激しい競争がくり広げられている分野でもある。

 DNAが2本の鎖がらせんのように連なっているのに対し、多くのRNAは1本の鎖状だ。RNAの主な仕事は、細胞核にあるDNAから写し取られた遺伝情報を、たんぱく質の製造工場へ伝える「伝令役」だ。

 2人は線虫を使った実験で、細胞の中にわずかに存在する2本鎖状のRNAが、1本にほどけて伝令役のRNAに取り付くと、その部分の遺伝子が働かない「干渉」が起きることを1998年に報告した。

 人工的につくった2本鎖RNAを細胞に入れれば、狙った遺伝子の働きだけを抑えられる。病気に関連する遺伝子を邪魔すれば、治療につながると考えられている。

現在、実際に2本鎖RNAを製剤化し、目の病気である加齢黄斑変性の治療を目指す臨床試験が米国で進んでいる。日本でも、がんなどへの治療応用を目指し、動物実験が盛んに行われている。 (asahi.com 2006年10月02日)

 

 遺伝子とは?
細胞の中心には丸い核があり、核の中には染色体があります。その染色体に遺伝子はあります。

 染色体は二重らせんのDNAからできていて、遺伝子はそのDNAの一部分(塩基配列)にあります。

 このDNAの一部分は遺伝に関係するので、遺伝子といいます。

 DNAは、核の中の染色体の成分です。生物の遺伝に関係します。一方、RNAはおもにDNAの情報をもとに、細胞にタンパク質を作らせるはたらきがあります。

 DNAの構造 
 DNAの正式名称は、デオキシリボ核酸。デオキシリボースという糖のなかまと塩基という物質、リン酸が1セットそろったのが基本物質「デオキシヌクレオチド」といい、DNAはデオキシヌクレオチドがたくさん集まって(重合体という)らせん状にになった「ポリデオキシヌクレオチド」です。
 そして、DNAの塩基にはA(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、C(シトシン)の4種類があり、この配列の違いが生物の姿の違いを造りだしています。生物の設計図にあたる部分がDNAなのです。


デオキシヌクレオチドの1つdATP


 RNAとは? 
 RNAとはリボ核酸のこと。おもにDNAの情報をもとに、細胞にタンパク質を作らせるはたらきがあります。
 ウイルスにはRNAを持つものが多くいます。ウイルスは他生物の細胞内に侵入して、細胞にタンパク質をつくらせます。

 このタンパク質をもとに自己複製したのち細胞を破壊します。これにより生物体をインフルエンザなどの病気にさせるケースがよく見られます。
 DNAと同じように、RNAは「ヌクレオチド」とよばれる化合物が鎖のようにつながった「ポリヌクレオチド」できています。それぞれのヌクレオチドは、1つのリボースという糖分子と1つのリン酸基と4種類の塩基のうちの1つからできています。



 ヌクレオチドの1つ ATP

 この4つの塩基とはアデニン(A)、ウラシル(U)、グアニン(G)、シトシン(C)という窒素をふくむ化合物です。これらはデオキシリボ核酸(DNA)分子と同じ方法で結合しています。

DNAの塩基はウラシル(U)はなく、かわりにT(チミン)になっていることに注意を要します。


 ゲノムとは?
 ゲノムとはDNAの一部にある塩基という物質の分子配列(遺伝子配列)のことです

 ほとんどの生物にはDNAがあり、DNAはA(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、C(シトシン)という4種類の塩基が何個も並んでできています。その配列が例えば「TAGCTTCCAA...」というように一見無秩序に並んでいるようですが、実は一つ一つ意味があり、この配列の違いが生物の姿の違いを造りだしていることがわかっています。

数年前には人の遺伝子配列をすべて解読しており、この事は素晴らしい科学の成果でした。


 RNA干渉(アールエヌエーかんしょう)とは?
 RNAi(RNA Interference)と書いてアール・エヌ・エー・アイともいう。

短い2本鎖RNA(dsRNA)を細胞に導入すると、その遺伝子のmRNAが破壊されて発現が抑えられるという現象。

 今回ノーベル賞を受賞した、アンドルー・ファイアー教授とクレイグ・メロー教授の「RNA干渉」とは、1998年に線虫を使った実験で、線虫細胞内にわずかに存在する2本鎖状のRNAが、1本にほどけて伝令役のRNAに取り付き、その部分の遺伝子が働かない「干渉」が起きることを発見した。

人工的につくった2本鎖のRNAを細胞に入れ、狙った遺伝子の働きだけを抑えることができる。病気に関連する遺伝子を邪魔すれば、治療につながると考えられている。


 なぜ細胞は「RNA干渉」という性質を持っているか?
 もともとは、欠陥をもったmRNAや外来のウイルスやトランスポゾンを排除するための細胞の防御機構と考えられる。

 RNAiは1998年にセンチュウ(線虫:C.elegans)で発見されたが、その後、センチュウ以外の多くの動物や哺乳類の細胞でも同様な現象が見出された。

 この現象を利用し、ねらった遺伝子を破壊してその機能を調べる新しい遺伝子機能破壊法が、ショウジョウバエ、マウスなどの遺伝子の機能解析法として急速に定着してきた。

 RNAiは、本来、2本鎖RNAをもつC型肝炎などのウイルスやトランスポゾンの侵入から身を守るために備わった機構と考えられることから、ウイルス感染症の治療にRNAiを使用することの効果が期待されている。

 

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