科学大好き!アイラブサイエンス!このブログでは、最新科学の?をなるべくわかりやすくコメントします。
ES細胞とは何だろう?

生物の一生は、1つの受精卵の誕生から始まる。1つの受精卵はオスの精子とメスの卵の合体でできる。

ES細胞とは、受精卵が受精後1週間前後たって胚になり、その中から得られる細胞で、成体に存在するすべての細胞へと分化できる万能細胞である。ES細胞は1981年にマウスにおいて確認され、1998年にはヒトでも確認された。 

受精卵からできるES細胞は、失われた臓器などを再生させ移植する医療への利用が期待されていた。しかし、いずれ赤ちゃんになりうる受精卵を破壊する事には倫理的な問題があった。



例えば2001年8月アメリカのブッシュ政権は公的研究費による新たなヒトES細胞の樹立を禁止している。一方、パーキンソン病、脳梗塞、糖尿病など根治の無かった疾患を将来的に治療できる可能性から、日本においては限定的に認められている。

この問題を回避するためには受精卵でなく、ふつうの細胞(体細胞)を使えばよいわけだがこれがなかなか難しかった。ES細胞にはあって体細胞にはない遺伝子が存在していることは明らかだった。 

京都大再生医科学研究所の山中伸弥教授らは、昨年、大人のマウスのしっぽの皮膚細胞に、万能性に関係していると思われる四つの遺伝子を組み込んで、万能細胞を作る方法を世界で初めて開発し、この細胞を「人工万能幹細胞(iPS細胞)」と名付けた。

しかしこのiPS細胞はES細胞に比べ臓器に分化する能力が十分でなく不安定だと指摘されていた。

今回は、マウス胎児の皮膚の下にある細胞を利用。細胞を取り出す時期と、できあがった人工細胞の中から質の良い細胞を選び出す方法を改良した。 この結果、選び出した細胞は、遺伝子の働きはES細胞とほとんど同じで、全身のさまざまな細胞に分化することが確認できた。

ヒト「iPS細胞」への応用に一歩近づいた。 (参考HP 科学技術振興機構) 

関連するニュース
様々な臓器に分化、「ES」並みの人工幹細胞作りに成功


京都大再生医科学研究所の山中伸弥教授らは、さまざまな臓器になり得る胚(はい)性幹細胞(ES細胞)と同程度の万能性を持つ幹細胞を作り出すことに、マウスを使って成功した。これまでの人工万能幹細胞は分化能力が低かった。受精卵を使わずに万能細胞を手に入れる技術の実現に向け、また一歩前進した。7日の英科学誌ネイチャー電子版に発表する。

山中教授らは昨年、大人のマウスのしっぽの皮膚細胞に、万能性に関係していると思われる四つの遺伝子を組み込んで、万能細胞を作る方法を世界で初めて開発した。この細胞を「人工万能幹細胞(iPS細胞)」と名付けたが、ES細胞に比べ臓器に分化する能力が十分でなく不安定だと指摘されていた。

今回は、胎児の皮膚の下にある細胞を利用。細胞を取り出す時期と、できあがった人工細胞の中から質の良い細胞を選び出す方法を改良した。

この結果、選び出した細胞は、遺伝子の働きはES細胞とほとんど同じで、全身のさまざまな細胞に分化することが確認できた。また、生殖細胞に分化する能力があることも確認、全身がこの万能細胞からできたマウスも誕生した。

ただ、生まれたマウスを1年近く観察したところ、2割で遺伝子組み換えの際に使うウイルスや遺伝子が原因と思われる甲状腺腫瘍(しゅよう)ができていた。山中教授は「ヒトへの応用には、まだ解決すべき課題は多いが、将来的には脊髄(せきずい)損傷や心不全の治療につながる可能性がある」としている。

米マサチューセッツ工科大も同じ方法で万能細胞の作製に成功、同日付のネイチャー電子版に発表するほか、別の科学誌に米ハーバード大が近く発表する予定。万能細胞獲得をめぐり、国際競争が激化している。(asahi.com 2007年06月07日)
 

ES細胞とは?


胚幹細胞または胚性幹細胞ともいう。多細胞動物の初期胚からとりだされた細胞で、あらゆる種類の体細胞になる能力、すなわち万能性をもったまま無限に増殖できる培養細胞株。成体内にある他の幹細胞が分化できる細胞の種類に制限があるのに対して、ES細胞はあらゆる種類の細胞に分化できるのが特徴である。

歴史

1981年にイギリスの生物学者M.エバンスとM.カウフマンがマウスで、哺乳類としてはじめてES細胞をつくることに成功した。つづいてアメリカの生物学者J.A.トムソンらが、95年にはアカゲザルで、そして98年にはヒトの胚でES細胞を確立した。

作り方

哺乳類の受精卵は32細胞まで分割すると、胚盤胞(はいばんほう)をつくり、胚になる内層と外層の栄養細胞にわかれる。この内層細胞をとりだし、ばらばらにわけて培養して、ES細胞がつくられる。

問題点

こういう性質をもつヒトES細胞は再生医療において多様な用途がみこめるため、医学界だけでなく産業界からも注目をあつめている。しかし、ヒトの胚をばらばらにすることが前提になるので、倫理的な議論の対象になる。さらに、本人の細胞クローンからES細胞をつくれば、移植における免疫問題が解決され、臓器移植を不要のものにする可能性があるが、これもまた、ヒトのクローンをみとめるかどうかという倫理的問題がたちはだかる。

ES細胞に関連する最近の研究

1.未受精卵に化学物質で刺激を与えて分裂を起こさせ、未受精卵からのES細胞を作る方法。さらに、その細胞核を別の未受精卵の核と置き換えて、再びES細胞を作る「2段階方式」により細胞分化能力が高まる。マウスでは成功している。

2.受精卵ES細胞に体細胞を融合させて、万能細胞にする研究。すでにマウスでは成功している。この手法なら、受精卵の破壊は最初にES細胞をつくる時だけで済む。

3.未受精卵からのES細胞でも、数を用意すれば、多数の人の血液型に合った細胞ができる研究結果もある。拒絶反応に影響するのはHLA型(人の白血球型)で、ほぼ対応できる。

4.卵子や受精卵を用いることなく、マウス皮膚細胞から胚性幹(ES)細胞に類似した万能幹細胞(多能性幹細胞)を誘導することに成功した。ES細胞に含まれる初期化因子24因子のうち特定の4因子を組み合わせると、万能幹細胞が誘導され、この細胞を誘導多能性幹(iPS)細胞と命名した。

 

再生医学の基礎―幹細胞と臓器形成

名古屋大学出版会

このアイテムの詳細を見る
絵とき再生医学入門―幹細胞の基礎知識から再生医療の実際までイッキにわかる!

羊土社

このアイテムの詳細を見る

ランキング ブログ検索 ブログランキングへ ブログランキング・にほんブログ村へ ←One Click please