BSEの原因

 プリオンとは何だろう?狂牛病(BSE)や人間のクロイツフェルト・ヤコブ病を引き起こす原因になるのは異常プリオンである。

 しかしプリオン自体は問題ではなく、逆に正常プリオン蛋白がないと発育するにつれ運動失調や長期記憶、潜在学習能力の低下が認められる。したがって、正常プリオン蛋白は神経細胞の発育と機能維持に何らかの役割があると考えられている。

 プリオンは「感染能を持つタンパク質因子」というのがその意味で、要するにバクテリアやウイルスと同義の言葉である。

 この新しいタイプの病原体は1982年にスタンリー・B・プルシナーが発見した。彼はこの功績で1997年にノーベル生理学・医学賞を単独で受賞した。

 今までこのプリオンをコントロールする方法を発見できなかった。今回、岐阜大人獣感染防御研究センターと長崎大、福岡大の共同研究グループは、正常なプリオンが、狂牛病(BSE)や人間のクロイツフェルト・ヤコブ病を引き起こす感染性プリオンへ変化するのを防ぐ人工物質「GN8」の生成に成功した。

 プリオンはタンパク質の立体構造が変わることで異常化すると考えられている。そこで「GN8」を投与することで、形が変わらないよう固定することができる。

 これをきっかけに人はBSEを克服できるかもしれない。今日はプリオンについて調べる。(参考HP Wikipedia)

 プリオン:感染性への変化防ぐ物質生成に成功 岐阜大など

 岐阜大人獣感染防御研究センターと長崎大、福岡大の共同研究グループは、正常なプリオンが、狂牛病(BSE)や人間のクロイツフェルト・ヤコブ病を引き起こす感染性プリオンへ変化するのを防ぐ人工物質「GN8」の生成に成功したと発表した。

 プリオンは常に形状が変化しており、ある一定の形になった時、感染性プリオンになる。GN8は形状変化を防ぐ働きがあり、研究グループは治療薬開発が大きく前進すると期待している。

 プリオンたんぱく質は231個のアミノ酸で構成されている。研究グループは、このうち159番目のアスパラギンと196番目のグルタミン酸の間の距離が、平均的な正常プリオンは15.4オングストローム(1オングストローム=100億分の1メートル)なのに対し、感染性プリオンでは3倍の45オングストローム以上離れてしまっていることに着目。化合物「GN8」を作り出し、二つのアミノ酸の距離を15.4オングストロームで固定することに成功した。

 感染性プリオンに感染させたマウスを使った実験では、GN8を投入しなかった場合は平均130日で死んだが、GN8を1回投入したマウスは100~20日延命した。

(毎日新聞 2007年7月3日)

 プリオンとは何か?

 プリオン(Prion)は、「感染能を持つ蛋白質因子」を示す英語(proteinaceous infectious particle)から作られた言葉で、バクテリアやウイルスと同格の用語である。”プリオン”と”プリオン蛋白質”は混同されがちだが、”プリオン”は概念的な用語であり「異常型プリオンの蓄積」などという記述は本来誤りで、「異常型プリオン蛋白質の蓄積」とするのが正しい。

 ”プリオン蛋白質”を省略してPrP(Prion Protein)と表記する場合もある。 哺乳類のプリオンが良く知られているが、酵母のSup35など他の生物でも数種類のプリオンの存在が知られている。1982年にスタンリー・B・プルシナーが発見した。彼はこの功績で1997年にノーベル生理学・医学賞を単独で受賞した。

 狂牛病プリオン仮説

 哺乳類で感染能を持つプリオンは、「異常プリオン蛋白」と呼ばれる物質から構成されると考えられている。異常プリオン蛋白は、羊のスクレイピーやクロイツフェルト・ヤコブ病や狂牛病で中枢神経系の神経細胞に蓄積することが確認されており、それらの疾患の原因物質であるとする説が有力である。

 異常型プリオン蛋白質が体内へ取り込まれると、哺乳動物の脳・脊髄を中心に分布する蛋白質の一種であるαヘリックスに富んだ正常プリオン蛋白の立体構造がβシートに富んだ異常プリオン蛋白の立体構造に変換されてしまうと考えられている。

 つまり、遺伝子でコードされた蛋白質のアミノ酸配列が変化するのではなく、同じアミノ酸配列を保ちながらペプチド鎖の折りたたみ構造が変換されてしまうのである。このため、プリオンは無生物ながら、感染症の病原体としての取扱いが求められる特異な例である。

 狂牛病ウイルス仮説

 狂牛病問題の日本での注目が高まったことで、プリオンの知名度は数年で爆発的に上がっている。しかしプリオン仮説は上記のように、蛋白質が病原菌に類似した行動をおこす場合についてを説明する一つの仮説にすぎず、どのような機序でそうした蛋白質の作用が起こるのか等、解明されていない点が多い。

 また、生物学者コッホがまとめたコッホの原則において病原体を認定する指針のうち、一つをパスしていないという指摘がなされており、それに対する有効な反論は未だなされていない。そのため、今日でも、病原体としては認められないという立場をとる研究者も存在する。

 なお、狂牛病等に関して言えば、未発見のウイルスによるものではないか、という研究も続けられており、今後、プリオン仮説が覆される可能性もなくは無い。実際C型肝炎のウイルスが見つかるまでに20年弱を要したように、ウイルスによる感染症の場合、病原体の発見が困難なことはまれではない。

 プリオン仮説は多くの科学的知識同様、仮説に過ぎないが、日米の貿易摩擦など、高度に政治的なバックグラウンドで紹介されたために、多くが実証されていないにも関わらず社会的な認知を得てしまっている。しかし、細菌やウイルスなど、ある程度実験的に検証された実績のある病原体と比べると、いまだにその全貌は解明されていない曖昧な仮説である。 


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