糖類及びプリン誘導体とは何か?

 第2回ノーベル化学賞はエミール・フィッシャーの「糖類およびプリン誘導体の合成」である。

 次の図は何の物質を表したものかわかるだろうか?

 

 正解はグルコースである。高校以上で教わる構造式であるが、これがわかった人は科学に関心が高いといえる。

 この複雑な構造はいったいどうやって解明されたのだろうか?フィッシャーは実に巧みな方法でこの構造を証明した。フィッシャーはまた糖に炭素を付加し、さまざまなアルドース(単糖類)をつくることに成功した。

 では次の図は何の物質を表すものかわかるだろうか?

 正解は :プリンと:尿酸そして:アデニンである。この構造式は難しいが、どれも生体内に存在する物質である。

 プリン体、尿酸というと痛風の人にはピンと来るであろう。どちらも痛風の原因となる物質だからだ。痛風では、プリン体というプリンを含む物質をとりすぎると尿酸が増えると考えられている。

 フィッシャーはプリンなどから、さまざまな物質がつくられることを証明して見せた。数年で実に130種類もの誘導体をつくってみせた。

 この誘導体の中にはアデニン、グアニンなどのDNAの材料となる物質もあり、生物学的にも重要な発見があった。

 偉大なフィッシャーの業績であるが、彼の一生を見ると涙を禁じ得ない、彼は、有機化学を学び超人的な努力でさまざまな物質を合成する方法を確立したが、そのために用いた危険な薬品のために身体はボロボロであった。

 当時の研究者は身体の危険もかえりみず、さまざまな薬品を使い、さまざまな化学物質をつくっていた時代であった。そのために問題となる物質も数多くつくってしまうことになる。

 プラスチック、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレンなど便利な物質もたくさんできたが、有害なPCB、ダイオキシン、アスベスト、サリドマイド、トリハロメタンなどたくさんの問題物質を生み出した。

 現在の私たちの生活は、試行錯誤を繰り返しながら、多くの研究者たちや一般の人たちの健康や命を犠牲にして成り立っていることを忘れてはいけない。

 フィッシャーも例外でなく、水銀中毒やフェニルヒドラジン中毒で苦しみ、第一次世界大戦では息子2人をなくし、失意の中でこの世を去っている。

 私の高校時代の担任の先生も化学の先生であったが、学生時代から危険な薬品を使っていたことをよく話していた。卒業後1年して、40代の若さで亡くなったが今思うと、化学物質に蝕まれていたのかもしれない。

 先人達の命を懸けた努力に感謝したい。また犠牲となった多くの人たちのご冥福お祈りする。今日はエミール・フィッシャーと彼のノーベル賞「糖類およびプリン誘導体の合成」について調べる。(参考HP Wikipedia)

 エミール・フィッシャーとは?

 ヘルマン・エミール・フィッシャー(Hermann Emil Fischer, 1852年10月19日 – 1919年7月15日)はドイツのオイスキルヒェン出身の化学者。ボン大学で学び始めたがストラスブール大学に転校。  

 特に有機化学の分野で活躍した。ペプチドの合成、フィッシャー投影式の発案、エステル合成法(フィッシャーエステル合成反応)の発見などの功績がある。特に糖とプリン誘導体の合成の功績が大きく、1902年にノーベル賞を受賞した。

 弟子にオットー・ワールブルグ、アブラハム・フレキシナー、ノイベルグがいる。

1852年  ドイツのオイスキルフェンで商人の子として生まれる。兄弟は 5 人の姉,フィッシャーはエミール家で初めての男児だった。
幼少時代は非常に活発な子供であり,また勉学にも優れていた。
学業を終えた後,商人の家に修行に入るが挫折。父の化学なら学んでもよいという言葉に従い,化学を学ぶために大学に進学する。

1871年 ボン大学に入学。ケクレのもとで化学を学ぶ。
1872年 ストラスブルグに移り,バイヤーのもとで学ぶ。その後博士号を取得し卒業。(1874)
1875年  各地で講師や助教授,やがて教授の職に就きながら研究を続ける。
1902年  糖の立体配座を決定した事などの功績で,ノーベル化学賞を受賞。
1917年  第一次世界大戦で次男と三男を亡くす。
1919年 研究中に患った水銀中毒やフェニルヒドラジン中毒,持病,さらには息子たちの死を苦に自殺する。67 歳の生涯を閉じた。

 糖の誘導体の合成とは?
 
フィッシャーはグルコースなどの糖の構造式を求める方法を確立した。 またフィッシャー・キリアニ合成法という方法で、危険なシアン化水素とナトリウムアマルガムを使ってグリセルアルデヒド(3炭糖)をトレオース(4炭糖)にする方法を考案した。これによりさまざまなアルドース(単糖類)をつくることができた。
 アルドース (aldose)とは糖質をその構造により分類する際に用いられる化学の用語で、鎖の末端にアルデヒド基を1つ持ち、CnH2nOn (n = 3以上)の化学式を持つ単糖類を指す。
 炭素原子が3つのグリセルアルデヒドが、最も単純な骨格を持つアルドースである。
 プリンの誘導体の合成とは?
 
フィッシャーは1882年頃から、プリンの研究を始めた。数年のうちにプリンなどから約130種類の誘導体をつくり出した。
 その中から生体内で重要な働きをするものがたくさん発見された。次にその誘導体の例をあげる。

DNAなど核酸の成分であるアデニングアニン。エネルギーの通貨であるアデノシン三リン酸(ATP)、サイクリックアデノシンモノホスフェート(cAMP)。痛風などの原因になる尿酸。肉のうまみ成分イノシン酸。飲み物に含まれる成分、カフェイン(コーヒーやお茶)、テオブロミン(ココア)、テオフィリン(お茶)など。
 

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