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今年も8月15日終戦の日を迎えようとしている。テレビでは「はだしのゲン」のドラマが放映された。安倍晋三首相が5日、「原爆症認定集団訴訟」について、「原爆症をめぐっては、認定基準見直しを検討する」ことを表明した。

今年で戦後62年にもなるのにまだ原爆症のことが裁判になることを不思議に思った。先日、米国の原爆投下を「しょうがない」などと発言した久間章生前防衛大臣は辞任に追い込まれた。

この国は、戦争で原爆による、熱と放射線を浴びて大勢の民間人が殺された世界で唯一の国であり、この事実は世界平和実現のために、語り継いでいかねばならない。

それにしても、「原爆症認定訴訟」とは何だろうか?「原爆症」とは何だろうか?どうして戦後62年も経つのに問題になるのだろうか?

調べてみると政府は一律にから爆心地から遠い被爆者は「原爆症」と認めない場合があり、それが裁判の争点になっているという。

チェルノブイリ原発事故でも、かなりの人が被爆しているにもかかわらず「被爆者」に認定されてないことを聞く、日本でも同じなのかという印象を受けた。

ベクレル・キュリー夫妻らによって放射線が発見されて100年以上経ち、科学的には放射線障害はあきらかなのに、一般的には(政府レベル)、科学教育が遅れていて、放射線が理解されていないから、被爆者基準に矛盾と差別ができているのではないだろうか。

考えてみれば、プルサーマル計画も各地で反対されている。被爆国であり、原子力による発電量も増加しているのに、正しい放射線教育を小・中学校から行わないのも疑問だ。ぜひ、正しい科学的見地にたって判決を下してほしい。

今回は「原爆症認定集団訴訟」や「原爆症」について学ぶ。(参考HP Wikipedia)

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原爆症訴訟、控訴の方針 熊本地裁判決めぐり厚労省


国側が敗訴した7月30日の原爆症認定訴訟熊本地裁判決について、厚生労働省は9日、近く福岡高裁に控訴する方針を固めた。首相官邸や法務省と10日にも最終調整した上で、正式決定する。各地の集団訴訟で国側は6連敗で、控訴は今年3月の東京地裁判決に続き6回目となる。

原爆症をめぐっては安倍晋三首相が5日、認定基準見直しを検討することを表明し、同省は9月にも検討会を発足させる予定。

与党内には「基準の見直しをするのだから、控訴すべきではない」との意見もあるが、同省は「見直しと訴訟は別。現行基準も科学的知見に基づいた適切なものであり、それに基づく判断は適正」(幹部)としている。首相も「(見直しは)裁判とは別」としている。

国側の控訴を受け、控訴見送りを政府に申し入れていた原告側も控訴する見通し。(山陽新聞 H19年 8月10日)

原爆症認定集団訴訟とは何か?


被爆者認定制度の基準では認定されないが、原爆症に苦しむ被爆者の起こした訴訟。認定制度の基準運用に誤りがあるとして、全国で十数件の被爆者認定訴訟が起きています。

このうち、大阪地裁および広島地裁においては、2006年に原告側の全面勝訴の判決がだされた。これに対し、国(厚生労働省)は異をとなえて控訴している。

政府は、原爆投下から12年後の1957年に原子爆弾被爆者の医療等に関する法律を制定して、被爆者に医療費を支給、1968年には原子爆弾被爆者の特別措置に関する法律を制定して、健康管理手当などの支給をはじめました。

さらに、被爆50周年に当る1995年にこれら二つの法律を一本にした原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律を制定しました。手当受給に当っての所得制限が撤廃されました。現在健康管理手当を受給している被爆者は86%を越え、諸手当の受給者は、被爆者健康手帳所持者の9割を越えています。 

政府は、「放射線の起因性などを問題にしないで広く健康管理手当を支給しているのだから、医療特別手当が支給される原爆症の認定は科学的に、厳格に行なうのは当然」といっています。しかし、被爆者の多くは、がんになれば、「これは絶対に原爆のせい」だと思いつつ、「自分は入市被爆だから原爆症の認定は無理だろう」とあきらめています。

被爆者したことによる健康破壊、生活苦、不安はまったく同じで、同様にがんになっているのに、近距離で被爆したことだけで、原爆症と認定され、遠距離だと却下されることは、絶対に納得できません。がんは放射線の多寡で罹患するものでないことは、最近の研究ではっきりしています。現行の被爆者対策は、被爆の実態をまったく無視した、国の予算を優先した極めて政治的な施策です。(原爆症認定集団訴訟HPより記事引用)

原爆症とは何か?


原爆症には次の三つの区分がある。1.熱線、爆風による創傷、熱傷
2.放射線被曝による急性放射線障害  3.放射線被曝による晩発性障害(白血病、白内障、瘢痕性萎縮による機能障害など)今回問題となるのは3のタイプの原爆症。

原爆症(げんばくしょう)とは、原子爆弾(原爆)による被災によって生じた健康障害の総称。原子爆弾症・原子爆弾傷とも表記する。

発症は被爆直後の場合が多いが、発生から10年、20年、経った後に発症することも少なくない。また、直接被爆をしなくても、原爆投下直後に降った「黒い雨」を浴びたり、母胎内で被爆して生まれた子供にも発症した。広島市、長崎市では被爆直後は健康に見えた人の容態が突然悪化し、死亡したケースが数多く確認されている。

多くの場合、体にだるさを感じた後、目が見えなくなったり、節々に痛みを感じたりしたのち、死亡した。 放射線は骨髄等の細胞周期の短い細胞に大きな影響を与える確率が高いため、白血病等の血液癌を引き起こすことはよく知られているが、免疫能力の大幅な低下も指摘されている。

また、放射線が癌抑制遺伝子に突然変異を起こさせた場合、被曝の数十年後の発癌の確率が高まる。なお、広島、長崎の被爆2世、3世には差別が根強く残っている。

原爆症認定とは何か?


被爆者がガンなどの病気にかかった場合、原爆が原因だと認定されれば国が補償をする制度が、「原爆症認定」の制度。

しかし認定されているのは、被爆者健康手帳を持つ人全体のわずか0.8%。

原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律による認定者には被爆者健康手帳が交付される。これは放射線障害の症状がみられれば広く支給される。

しかし「原爆症」認定の基準には、投下時又は続く時期に該当地域に存在していたかが、医学的根拠よりしばしば影響を与える。ここで注目すべきは、医学的根拠は客観的事実に近いが、法律で定める地域区分は政治的見解が左右する点である。

原爆症の認定では爆心地から2km以内にいた人でないと厚生労働省は認めていない。

被爆者手帳とは?


被爆者健康手帳は、原子爆弾の「被爆者」であることを示す証明書。保険証とともに医療機関へ提示することで、無料で診察、医療、投薬、入院などができる。

具体的には、原子爆弾が投下された際、広島市、長崎市などの指定被爆地にいて、直接被爆した方に配られる。2km以内の被爆者はこれとは別に「原爆症」と認定される場合がある。

「被爆者」の証明には、これ以外に第一種・第2種健康診断受診者証がある。

第一種健康診断受診者証

原子爆弾が投下された際、広島市、長崎市以外の指定の区域で直接被爆した人とその人の胎児。第一種健康診断受診者証の交付を受けた人が、健康診断の結果、健康管理手当の対象となる11の障害があると診断された場合は、被爆者保険手帳の交付を受けることができる。

第二種健康診断受診者証

原子爆弾が投下された際、爆心地から12kmの区域で直接被爆した人とその人の胎児。

被爆者への手当等の種類と支給要件


健康管理手当 33,900円(月額) 循環器機能障害、運動器機能障害、脳血管障害、造血機能障害、肝臓機能障害等11障害のうちいずれかを伴う疾病にかかっている方
保健手当 (1) 17,000円 (月額) 2キロメートル以内で直接被爆した方と当時その方の胎児だった方 で下記以外の方
(2) 33,900円 (月額) 2キロメートル以内で直接被爆した方と当時その方の胎児だった方で、原子爆弾の傷害作用の影響による身体上の障害のある方、又は70歳以上の方で、配偶者、子及び孫のいずれもいないひとり暮らしの方

医療特別手当 137,840円(月額) 原子爆弾の放射能が原因で疾病やけがの状態にあるという厚生労働大臣の認定を受けた方で、まだその疾病やけがの治っていない方
特別手当 50,900円(月額) 原子爆弾の放射能が原因で疾病やけがの状態にあるという厚生労働大臣の認定を受けた方で、現在はその疾病やけがが治った方
原子爆弾小頭症手当 47,440円(月額) 原子爆弾の放射能が原因で小頭症の状態にある方
葬祭料 193,000円 被爆者が亡くなり、その葬祭を行う(行った)方
(厚生労働省HPより)

原爆症認定集団訴訟の問題点
政府は広く「被爆者」を認めており、救済してはいるが、厚生労働省の認定する「原爆症」の認定となると「被爆者手帳」を持つ者のうちわずか0.8%しか認めておらず、矛盾・差別化が起きている。

「被爆者」は全国に約26万人いるが、「原爆症」と国が認定した人は2251人。わずか0.8%にすぎない。(2007年8月現在)

「原爆症」が認定されると医療特別手当137,840円(月額)が支給される。これでは、「政府はアメリカや諸外国に被害を少なくして見せ、核兵器を容認している。」と思われてもしかたがない。


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