品種改良と遺伝子組み換えの違い

 前回、小麦の例で「品種改良」と「遺伝子組換え」の違いを学びました。確かに小麦は数千年の歳月をかけ、遺伝子が正しく組み変わったかどうかを見極め、品種改良されていました。

 その結果、最初は1粒ずつしか実をつけなかった1粒小麦の遺伝子が変わり、4倍体である2粒小麦と6倍体である普通コムギに変わり、収穫量が増えていったのです。

 「品種改良」という言葉にはそういう長い期間が必要ではないか?というイメージがつきまといました。



 しかし、時代は変わりました。2003年4月にヒトゲノムの完全解読が完了してか次々にいろいろな生物のDNAの塩基配列(ゲノム)が解明されています。

 その結果「品種改良」や「遺伝子組換え」によって、どこの遺伝子が変わってどんなことが起こるか予想できるようになりました。

 数千年の時間をかけて、「品種改良」してきたことが、これからの「遺伝子組換え」では、わずか数ヶ月で完了することも可能になりました。

 今日は、小麦で出てきた「倍数体」と、動物にも「倍数体」はあるのか?について調べます。(参考HP Wikipedia・サクラマスサツキマス渓魚の生態考察)


 倍数体とは何か?

 小麦で出てきた2倍体、4倍体、6倍体とは何でしょうか?

これはもとになる生物の生殖細胞の染色体の数を1として、数えた染色体の数の変化を表しています。

 小麦は1粒小麦から品種改良が始まっていますので、1粒小麦の生殖細胞の染色体数の7本のを1倍体といい基準にします。

 すると受精してできた1粒小麦の染色体数は7+7=14で2倍体になります。

 2粒小麦は28本染色体を持つので4倍普通コムギは42本なので6倍という計算です。

 ちなみに「種なしスイカ」ではコルヒチンという薬剤を雌花に塗ることで、2倍体の生殖細胞ができ、1倍体の花粉の生殖細胞と受精して3倍体になることで作られます。


 なぜ倍数体になっても生存可能なのか?

 一般に細菌などの単純な生物のDNAは短く、進化した生物のほど長くなっています。

 進化はDNA量の増加とそれに伴う遺伝子の新生と淘汰によりなされたと考えれる証拠が我々の遺伝子の中に残されています。 

 まず、最初の遺伝子の多重化とそれによる遺伝量の増加はセキツイと背骨を獲得した魚類が進化した4億年ほど前であると推測されます。 

 次に遺伝子量が増えたのは、魚類が両生類や爬虫類へ進化したときです。えら呼吸から肺呼吸へ、そして、湿った薄い皮膚から乾燥に強い厚い皮膚へ...。

 新しい性質を獲得するために、遺伝子が2回以上重なったり、別の遺伝子とぶつかり合って遺伝子同士が融合したり、逆にちぎれて分断したりという、遺伝子組換えや、染色体の倍数化が何度も行われてきたと予想できます。

 そのとき、生じた多くの新しい遺伝子は重要な働きを獲得すればより進化し、役に立たなければ淘汰されやがて、宇宙のゴミのように遺伝子の間の配列として埋没し消えていったと思われます。


 動物に倍数体はあるのか?

 現在の生物にも倍数体は見られます。植物には多いですが、動物では意外に少ないようです。

 動物では、カキやアコヤ貝を3倍体や4倍体にすると大型になります。魚類では「ぬし」といわれる伝説に残るような超大型のイワナなどが、その類であることがわかっています。 

 現在意図的に、染色体を人工的に増加させ、大型の動物を作り食料として利用することも行われています。

 現在3倍体がつくられているのは、ヤマメやアマゴ、ニジマスやサツキマス、アユなどで、ウグイ、フナ、コイなどでもできるそうです。

 これらの魚類は4倍体、6倍体などもできるそうですが、あまり大きくならないので、3倍体がよく養殖されます。


 どうやって動物の3倍体はつくられるか?

 卵が受精してから30分以内にある温度を与えます。すると遺伝子を見ると普通は2組セットのところが1組多く含まれていて3組もある3倍体ができます。

 これまでのところ、温度以外の方法で刺激を与えても、3倍体にはならないようです。

 この温度を与える時間はほんの一瞬で、タイミングが難しく自然界で偶然にこのようなことがおきるのは、かなり希なことです。


 3倍体の商品の例

 クィーンサーモンや、シオマス、飛騨大天女魚(ひだおおあまご)などがあるそうです。


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