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がんになる人の確率は江戸時代には8,000人に1人だったそうである。20年前には10人に1人、現在は約3.5人に1人と驚異的に増えている。毎年46万人の人ががんにかかっている計算だ。がんはもはや、いつ誰がかかっても不思議ではない病気であり、日本の死亡原因の第1位になっている。

がん遺伝子とは、ある正常な遺伝子が組換えられて発現・構造・機能に異常をきたし、その結果、正常細胞の癌化を引き起こすようなものをいう。がん遺伝子には、Src、Ras、Myc、Ets...などさまざまなものが知られている。

がん遺伝子には、ウイルスのがん遺伝子が感染して、正常な細胞ががん化する場合と、正常な細胞に、もとからあるがん遺伝子が発現しがん化する場合がある。正常な細胞には何と100種類のがん遺伝子が存在し、通常はがん抑制遺伝子がはたらき正常な状態を保っているという。

初めてのがん遺伝子は、ウイルスから発見された。1911年、P.Rousにより、ニワトリに癌(肉腫)を発生させるウイルスが発見され、発見者の名をとりRous=ラウス肉腫 ウイルス(レトロウイルス)と命名された。その後の研究により、このウイルスには、自身の増殖に関する遺伝子以外に、細胞を癌化 に導く遺伝子が存在することが判明した。その遺伝子こそが、世界で初めて発見された がん遺伝子=「SRC」と呼ばれるものである。

さて話題の「iPS細胞」であるが、京都大学の山中教授らは、「iPS細胞」をつくるのに、4つの遺伝子を組み入れた。その中にはがん遺伝子Mycが含まれていたのはご存知だろうか?

そのため以前の実験では「iPS細胞」を持つマウスの約2割において、甲状腺腫瘍が発生し死亡した。ヒトの再生医学への応用には、Mycやレトロウイルスを用いない方法の確立が必要であるという課題があった。

今回、京都大学山中教授らは、がん遺伝子Mycを用いない「iPS細胞」誘導に成功した。Myc以外の3因子により大人のマウスおよび成人皮膚細胞から「iPS細胞」を樹立させた。

Mycを用いて作製したiPS細胞に由来するマウスでは、マウス37匹中、6匹のマウスが生後100日までに腫瘍の形成により死亡した。一方、Mycを用いずに作製したiPS細胞に由来するマウス26匹には、生後100日までに腫瘍による死亡は認められなかったことから、Mycを省略することにより安全性が向上することが明らかとなった。

それにしても、すばらしい技術がまた確立した。どうして次々に新しい技術が生まれるのか?山中教授らのグループは神懸かり的である。

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がん遺伝子Mycを用いないiPS細胞誘導に成功


山中 伸弥教授(物質−細胞統合システム拠点/再生医科学研究所)らの研究グループは、ヒトの皮膚細胞からES細胞(胚性幹細胞)と遜色のない能力をもった人工多能性幹細胞(iPS細胞)の開発に成功しましたが、このたび、がん遺伝子でもあるMyc以外の3因子により大人のマウスおよび成人皮膚細胞からiPS細胞の樹立に成功しました。

この論文は、ロンドン時間の11月30日(金曜日)に英国科学誌「ネイチャーバイオテクノロジー」で発表されました。

【研究成果の概要】
iPS細胞はマウスやヒトの皮膚細胞に4つの転写因子を導入することにより樹立される多能性幹細胞であり、胚性幹(ES)細胞と同様に、ほぼ無限に増殖すると共に、神経や心筋などの様々な細胞に分化できる。

iPS細胞は患者自身の体細胞から樹立するため、倫理的問題が少ないし、移植後の拒絶反応も回避できる。しかし4因子の1つはがん遺伝子でもあるMycであることから安全性の問題が懸念される。

実際、iPS細胞から作製したマウスにおいては、高頻度にMycの活性化による腫瘍が観察される。最近、私達を含む2つのグループがヒトiPS細胞の樹立を報告した。我々の方法は、マウスと同様にMycを含む4因子を使用しており、安全性が懸念される。他のグーループはMycを含まない4因子を用いて新生児の皮膚細胞からiPS細胞を樹立しているが、大人の皮膚細胞からは樹立に成功していない。
 
今回我々は、Myc以外の3因子により大人のマウスおよび成人皮膚細胞からiPS細胞の樹立に成功した。Mycを用いて作製したマウスiPS細胞に由来するキメラマウス37匹中、6匹のマウスは生後100日までに腫瘍の形成により死亡した。一方、Mycを用いずに作製したiPS細胞に由来するキメラマウス26匹には、生後100日までに腫瘍による死亡は認められなかったことから、Mycを省略することにより安全性が向上することが明らかとなった。

さらに私達は36歳女性の皮膚細胞から、Mycを用いずにiPS細胞を樹立することに成功した。大人の細胞に由来するiPS細胞は、新生児の細胞に由来するものに比べて、患者への自家移植を可能とすることから、より有用である。 (出典:京都大学 2007年12月1日)

 

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