
南米アマゾンでは急速に熱帯雨林が減少している。日本や中国で需要の高い大豆をつくるためである。北米ではバイオ燃料の原料としてトウモロコシの栽培がさかんになり、大豆が不足している事情もある。
南米アマゾンと同様にインドネシアでも熱帯雨林が急速に失われている。その理由は何だろう?
それは欧米で普及しているバイオ燃料のための原料として、パームヤシを植えているからである。温暖化防止のために導入されたバイオ燃料であるはずなのに、熱帯雨林を伐採することでさらに温暖化に拍車をかけている。
インドネシアでは熱帯雨林の下に過去数千年間で蓄積した泥炭層があり、森林伐採によって微生物が活性化、二酸化炭素やメタンガスが発生してさらに温暖化が進むという。
そんな矛盾を抱えながら、インドネシアは貧困から抜け出るために伐採する国民を止められない。そこに経済が成り立っているからである。
発展途上国では、京都議定書にある、先進国の援助がまだまだ足りないと主張する。かくして、この世に貧困のある限り、地球温暖化問題は止まらない。食べずに満足できる奇跡的な宗教の成立を待つしかないのだろうか?
温室効果ガスの削減の数値目標設定を強く訴えるEUは、日米より進んでいるように見えるが、バイオ燃料の原料を途上国につくらせたり、風力発電や太陽光発電などの自然エネルギーへの転換を早く進めたい事情がある。
日本では、地形や気候の面で風力発電や太陽光発電に適しておらず、自然エネルギーへの転換はうまくいっていない。
そんなインドネシアのバリ島で国連気候変動枠組み条約第13回締約国会議(COP13)が行われたが、矛盾を抱えているのはどの国も同じで、互いの国が利益を主張しあい容易に合意は得られなかった。
日本は「初めから温室効果ガス削減の数値目標を出すと、入らない国が出る」として、バリ会議では「すべての国の参加」と「09年までに新体制を決める」という手続きのみを決めることを主張した。
米国は「温室効果ガスの削減の数値目標に強く反対」。
一方、欧州連合(EU)は「20年に20%減(全主要排出国が参加すれば30%減)の数値目標を入れる」と主張。
中国は、「先進国の25〜40%削減に賛成を表明。途上国の長期目標の明記には反対。途上国への資金や技術移転の支援が、条約ができた92年以来ずっとおざなりだ」と訴えた。
今日は15日にようやく合意した、国連気候変動枠組み条約の第13回締約国会議(COP13)の結果と会議の様子を振り返ってみたい。(参考HP 毎日新聞・産経新聞)
COP13の合意内容 温暖化防止:「バリ・ロードマップ」
1.国連の気候変動に関する政府間パネルの「温暖化は疑いの余地がない。排出削減の遅れは、気候変動に伴う危険性を高める」との指摘に対処する。
2.温室効果ガス排出量の大幅削減が必要だと認識する。
3.京都議定書後の枠組みは第15回締約国会議(09年)で合意する。
4.すべての先進国による検証可能な排出の削減か抑制が重要だ。
5.途上国は持続可能な発展を前提に、技術や財政支援を受けた検証可能な方法で対応をする。
6.気候変動枠組み条約の下に特別作業部会を新設し、交渉を始める。
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COP13 削減目標明記せず
国連気候変動枠組み条約の第13回締約国会議(COP13)は15日、京都議定書に続く2013年以降の新たな国際的枠組みの構築に向けたロードマップ(行程表)の内容でほぼ合意した。
すべての国が参加する作業部会を新設し09年までの合意を目指すとの方針が決まり、「ポスト京都」の交渉が始まることになるが、焦点だった温室効果ガスの削減目標は明記されなかった。
温室効果ガスの削減目標について草案では(1)2050年までに00年比で半減させる(2)先進国は20年までに1990年比で25〜40%削減する−ことが盛り込まれていた。
目標設定には欧州連合(EU)が積極的だったが、米国は「数字は盛り込むべきでない」などと強く反発。日本も「削減内容まで踏み込む必要はない」と同調した。
中国、インドをはじめとする途上国側も、長期目標の明記に難色を示し、先進国による削減を強調するよう求め、意見がまとまらなかった。
このため行程表は、世界全体の温室効果ガス排出量を大幅に削減し、気候変動に緊急に対処することが必要だ−とするにとどまった。
また、包括的な温暖化対策の合意形成を目指す新しい作業部会は、08年4月に初会合を開き09年に作業を完了し、第15回締約国会議(COP15)で次期協定の採択を目指すことになる。
作業部会としてはすでに、京都議定書批准国による部会があり次期削減目標を議論しているが、新たな作業部会はこれと並行し交渉を進めていくことになる。
( 12月15日15時41分 産経新聞 )
国連気候変動枠組み条約の第13回締約国会議(COP13)の流れ
先進国に排出削減要求 バリ会議共同議長案 12月12日2時31分 毎日新聞
国連の「気候変動枠組み条約第13回締約国会議(温暖化防止バリ会議)」は12日からの閣僚級会合を前に、今後2年間の行程表(バリ・ロードマップ)の新たな共同議長案が11日の非公式会合で提出された。京都議定書に規定のない13年以後の温室効果ガスの新たな削減体制づくりを話し合うためのもので、8日に出された骨格案に比べより明確な表現で、米国をはじめ先進国の排出削減を求めている。
日米カナダなど「排出削減に消極的」と受け取られている国々の反対が裏目に出た形で、閣僚級会合では数値目標の扱いが最大の焦点になりそうだ。
新たな案では米国の参加が強調され、国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の報告書を引用したと明示して、科学的に証明された危機を回避するため共同行動を求める姿勢が濃厚になっている。
新提案は前文で「先進国は20年に90年比で25〜40%の削減幅について考慮することを認める」と規定。地球の気温上昇を2〜2・4度に抑えるために途上国を含む世界の排出量を「今後10〜15年で減少に転じ、50年に00年比で半減以下にする」とするIPCCの報告書の要請に応えることを求めた。
その上で、本文で「すべての条約加盟先進国」との表現で、米国を含む先進国が国別削減目標を設定するよう求めた。途上国にも「計測・報告可能な削減行動」を求めている。
閣僚級会合始まる 12月12日12時11分 毎日新聞
国連の「気候変動枠組み条約第13回締約国会議(温暖化防止バリ会議)」は12日、閣僚級会合が始まった。開会式には130カ国以上の環境担当相や潘基文(バンギムン)国連事務総長、議長国インドネシアのユドヨノ大統領らが出席した。
潘事務総長は開会演説で「温暖化への対応が遅れるほど被害の危険は拡大する。09年までに京都議定書後の温室効果ガス削減の枠組みを作ることに命運がかかっている」と、会議の進展を訴えた。
続いて演説したユドヨノ大統領は、先進国が20年に90年比で温室効果ガスを25〜40%削減する必要性に言及。議定書から離脱した米国を名指しし「次期枠組みに加わらせなければならない」と強調すると、会場から拍手がわき上がった。
会議の最大の課題は、議定書後の削減枠組みをめぐる行程を定める「バリ・ロードマップ」づくり。事務レベル協議では、先進国の削減目標などを盛り込んだ共同議長の草案に日米などが反発、議論の整理がつかなかった。
バリ会議 ゴア氏、米の姿勢を強く批判12月13日22時45分 毎日新聞
アル・ゴア前米副大統領は13日、国連の「気候変動枠組み条約第13回締約国会議(温暖化防止バリ会議)」で演説し、米国を同会議での「最大の障害」と厳しく批判した。
ゴア氏はノーベル平和賞を10日にノルウェー・オスロで受賞しバリに駆けつけた。温室効果ガスの新たな削減枠組みを話し合う行程表について「未定部分があっても、行動に移るべきだ」と主張。
交渉を加速させ、新たな削減枠組みを京都議定書の期限切れ前に実施するよう各国に求めた。そのうえで、オーストラリアがラッド新政権誕生後、前政権が反対していた京都議定書に批准した例に言及。米国も政権交代で削減に協力する姿勢に転じるとの見解を示した。
米国の極端な逆提案で混乱 バリ会議12月14日12時1分 毎日新聞
国連の「気候変動枠組み条約第13回締約国会議(温暖化防止バリ会議)」は13日夜、京都議定書後の温室効果ガスの新たな削減枠組みを話し合う行程表(バリ・ロードマップ)の決定書草案に反対する米国が、各国の自主的な削減努力に任せるとする極端な逆提案をした。数値目標の方向性を示したい欧州連合(EU)との溝は深く、会議の行方は混とんとしてきた。
世界自然保護基金(WWF)のハンス・ベロム気候変動ディレクターは「最終日直前になって、15年間の国際社会の努力を無にする提案をあえて行うというのは、バリ・ロードマップの議論を転覆させるようなもの。米国は温暖化との戦いから逃げようとしており、深刻な事態だ」と批判した。
先進国の目標、役割で新提案 バリ会議議長12月14日13時36分 毎日新聞
国連の「気候変動枠組み条約第13回締約国会議(温暖化防止バリ会議)」は14日、京都議定書後の温室効果ガスの新たな削減枠組みを話し合う行程表(バリ・ロードマップ)について、議長のウィトゥラル・インドネシア国務相(環境担当)が新提案を出した。
先進国の削減目標(20年に90年比25〜40%減)の方向性を記した記述を削除した一方、先進国の役割について「気候変動との戦いを主導する」と明記した。数値目標の扱いを巡って対立してきた欧州連合(EU)と米国の妥協を目指す提案で、会議はロードマップ合意へ向け大きな転換点を迎えた。
新提案は、すべての先進国が排出削減にかかわり、「その努力が比較できるようにする」と表記。途上国についても「資金や技術支援を元に持続可能な成長を維持しつつ、計測・報告可能な削減行動を行う」と規定した。「50年に00年比で半減以下にする」との表現は残し、世界の排出削減の方向を示した。
米国は、これを歓迎する姿勢を示しているという。鴨下一郎環境相は「EUもギリギリ妥協ができる提案だ。私たちはこれをサポートしていく」と話す。
会議は米国が13日深夜、各国の自主的な削減努力に任せるとの極端な逆提案をし、議論が混乱。合意へ向けて徹夜で新たな議長提案を模索していた。
IPCC議長「数値目標は重要」 バリ会議12月14日19時59分 毎日新聞
温暖化防止バリ会議で当地を訪れた国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)のパチャウリ議長は14日、焦点のバリ・ロードマップ(行程表)について「数値目標と行程表が採択されることは大きな前進につながる」と述べ、会議への期待を示した。記者団の質問に答えた。
米国と欧州連合(EU)などの対立点となっている数値目標については「すべての主要排出国の参加も大事だが、明確な数値目標を入れることは極めて重要で、優先されるべきことだ」と語り、IPCC報告に基づく数値目標が盛り込まれるべきだとの認識を示した。
NGOが日米カナダ批判の全面広告 バリ会議12月14日20時5分 毎日新聞
世界よ、米国、カナダ、日本に屈服するな−−。バリ・ロードマップで、温室効果ガス削減の数値目標盛り込みに否定的な3カ国を名指しで批判するカラーの全面広告が、温暖化防止バリ会議最終日の14日、地元紙ジャカルタ・ポストに掲載された。
国際NGOによるこの広告は、映画「タイタニック」を連想させる船のへさきと、福田康夫首相、ブッシュ米大統領、ハーパー・カナダ首相の写真を使用。数値目標の削除と温暖化にかけて、「目標はない。氷山もない。ただ地球規模の災害が、間もなくやってくる バリ」と訴え、3カ国に数値目標設定を妨げないよう求めている。
バリ会議 温室ガス削減行程表、合意不透明に12月15日12時21分 毎日新聞
国連の「気候変動枠組み条約第13回締約国会議(温暖化防止バリ会議)」は15日、総会を再開し、京都議定書後の温室効果ガスの新たな削減枠組みを話し合う行程表「バリ・ロードマップ」の審議を開始した。
しかし、中国など途上国が「協議は尽きていない」「事務局の運営には問題がある。謝罪しろ」と激しい口調で異議を唱え、総会は再開と中断を繰り返した。事務局は当日未明に主要国の非公式会合で大筋合意したとして総会を開いたが、バリ会議の合意は不透明な情勢だ。
総会は同日午前9時(日本時間同10時)ごろに開会。議長国インドネシアのウィトゥラル国務相(環境担当)がロードマップ案を採択しようとした。しかし、インドが途上国の削減をめぐる記述について、「これまでの合意とは違う」として対案を提出。続いて中国が「協議はまだ終わっていない」と訴え、会議は中断した。途上国グループは会合を開き、原案のさまざまな個所についての異論が次々と出された。
議長国インドネシアがこの日提出したロードマップ案は、すべての国が参加する条約の下での特別作業部会創設と交渉開始を盛り込んだが、日米などの主張で、草案にあった削減数値目標はすべて削除された。
各国の行動については、米国を含むすべての先進国が「削減目標を含む、検証可能な排出行動」に取り組むとした。しかし、その内容については国ごとの事情を考慮することを付記した。途上国については「持続可能な成長を維持しつつ、計量、報告、検証可能な削減行動をする」と規定し、従来よりも進んだ行動を求めていた。
焦点だった数値目標については、日米などの反対で、草案にあった「先進国は20年までに90年比25〜40%減」「今後10〜15年間に全世界の排出量を減少に転じさせ、50年に半分以下に」などの数値をすべて削除した。
バリ会議「ロードマップ」採択し閉会 12月15日21時10分 毎日新聞
国連の「気候変動枠組み条約第13回締約国会議(温暖化防止バリ会議)」は15日、京都議定書後の温室効果ガスの新たな削減枠組みを話し合う行程表「バリ・ロードマップ」を採択し、閉会した。議定書から離脱した米国や、現在は削減義務のない中印を含めたすべての国が地球温暖化防止に取り組む新体制作りへ向け、一歩を踏み出した。
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京都議定書の評価と意味―歴史的国際合意への道 マイケル グラブ,ダンカン ブラック,クリスティアン フローレイク,Michael Grubb,Duncan Brack,Christiaan Vrolijk,松尾 直樹 省エネルギーセンター このアイテムの詳細を見る |
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不都合な真実 アル・ゴア,枝廣 淳子 ランダムハウス講談社 このアイテムの詳細を見る |
コメント
コメント一覧 (1)
「インドネシアで、熱帯雨林が急速に失われている」ことについて、NHKでも取り上げていました。<br>
この情報を聴いた人達は、この状況をどの位把握しているのだろう?<br>
熱帯雨林が失われるということは、私達の良く知っている森がなくなるのと、全く意味が違うと思うのだが…。<br>
<br>
熱帯雨林では、同じ面積に生えている植物の種類も生息する生き物の種類も、日本の森などの何倍も多い。<br>
また、ある場所の100m×100mとその隣の100m×100mとでは異なる植物が生えていたりする。<br>
ある場所に生えている樹木と同じ木が、森中探してもなかなか見つからないこともあるようだ。<br>
植生が違えば、そこに生息する生物相も異なってくるだろう。広い範囲に同じような植生が広がっている日本の主な森(温帯林や針葉樹林)とは違うのだ。<br>
熱帯雨林が30%減るのと日本の森が30%減るのとは随分違う……熱帯雨林が減る=生物の絶滅につながる。<br>
まだ半分以上残っている…などとのんびり構えてはいられない。<br>
<br>
以前、「熱帯雨林の多様な生物相は、人類にとって未知の貴重な財産である。」と話題になったことがあるが、その話はどこに行ってしまったのだろう…。<br>
目の前の日々の衣食のために、人間の将来を脅かすことを平気でやってしまうのでは、動物と同じである。だからといって、今日明日の食料がない人達に「来年なら山ほど食べられる」と言っても意味がない。<br>
富める先進国が、これらの国の人々ごと地球の財産を守っていかなければならないのだが…。<br>
<br>
地球上には、様々な場所に多様な自然が存在する。<br>
熱帯雨林だけでなく、地球の裏側や極地、私達の生活に直接関わりないような自然でも、全てがつながりあって生物界が存在していると考えた方が良い。<br>
宇宙においても貴重なこの地球生態系を守るには…全ての国の人々の協力が必要ですね。。<br>