科学大好き!アイラブサイエンス!このブログでは、最新科学の?をなるべくわかりやすくコメントします。
2003年ヒトゲノムが完全解読されてから5年経つ。それから次々に他の動植物のゲノムが解読されている。夢のひとつとして例えば恐竜など絶滅した動物が現代に蘇る可能性もある。現在、恐竜は難しいにしても、残された動物の毛からマンモス、マストドン、モアなどは分析可能な技術がある。

ヒトの場合はどうなんだろう?ヒトゲノムから何が見えてきたのだろう?

犯罪におけるDNA鑑定技術もほぼ完成されている。強盗殺人犯の吸ったタバコが現場に残され、だ液からDNAが分析された。そして先日、別の事件で残された体液のDNAから時効寸前の犯人が逮捕され、話題になった。

解読されたヒトゲノムは最初一人の女性のものであった。それが次々に分析比較されており、驚くべきことがわかってきた。ヒトに遺伝子はもちろん長い年月で変わりうるものだが、生きているわずか数年の間にも遺伝子の発現のしかたが変わりうるという事実がわかった。

ヒトの個性は肌の色や体系といった目立つ形で表れるものだけではなかった。むしろ肌の色や鼻の高さなどは医療にはあまり関係ない。外見の差よりも医学的に重要なのは、分子生物学的な差異による疾患や薬剤の感受性の差である。

最近BiDiという硝酸イソソルビドとヒドララジンの混合薬がアメリカで、黒人の心不全患者にのみ使用することがFDAに認可された。これは血管を拡張する物質である一酸化窒素産生量の低い人が黒人患者に多いことに起因する。しかし、その詳しい分子生物学的機序はわかっていない。もしこの遺伝子が特定できれば、他の民族でもこの薬が効く個人がわかると考えられ、オーダーメードの医療が可能になる。

また、よく似ていて分子生物学的にも、ほとんど遺伝子は同じだろうと考えられていた一卵性双生児。最近3才から74才までの80組の一卵性双生児を対象に行ったEstellerの研究チームの結果に驚く。それによると幼い双生児の間では構成する細胞の遺伝子に差はほとんどみられない。

2人の年齢が上がるにつれ、活性の異なる遺伝子の数は増していき、同一遺伝子を持っていても環境により、異なる遺伝子発現を示すようになることがわかった。

特に別々に育ったか、明らかに異なる生活習慣を送ってきた双生児の構成する細胞の遺伝子は生活習慣が似ている双生児のそれとは大きく異なるということがわかった。

このように、意外にも私たちの遺伝子は日々可変的で、環境に対応して変わりたがっていることが明らかにされた。この驚くべき結果により今年のScience誌第1位には「ヒトの遺伝的変異」が選ばれた。(参考HP 北海道大学CRG) 

関連するニュース
Scienceが選ぶ2007年科学的進歩トップ10 第1位はヒトの遺伝的変異(多様性)


2007年、研究者らは個体ごとに異なるゲノムの多様性に感嘆し、これが疾患や個体の特徴に担う役割について理解を深めてきた。Scienceは、「ヒトの遺伝的変異(多様性)」を2007年の最もめざましい進歩に選び、その他の素晴らしい業績9件とあわせて、2007年の科学的進歩トップ10に選出した。
 
個人のゲノム数名分の塩基配列が既に決定されている。技術の進歩に伴って、多くのヒトが自分のゲノムの一部あるいはおそらく全部の塩基配列を知るようになり、それによってどの疾患に対するリスクが高いのかを知るようになるであろう。
 
2007年に行われた研究プロジェクト12件では、数千人を対象に何らかの疾患を持つヒトと持たないヒトのDNAを比較し、どの小さな遺伝学上の変異が疾患のリスクをもたらしているのかを検討したゲノム規模の関連研究が用られた。

このような研究のおかげで今年、II型糖尿病に関与する遺伝子数個を同定することができ、心房細動、自己免疫疾患、躁鬱病、乳ガン、結腸直腸ガン、I型およびII型糖尿病、心疾患、高血圧症、多発性硬化症および関節リウマチなど、多くの疾患についても新たな情報を得ることができた。
 
また2007年には、DNAに含まれる何十億個もの塩基のうち数千〜数百万個が2、3世代のうちに失われたり増えたり、あるいは複製されたりして、遺伝的活動が変化してしまうことがわかった。

これら「コピー数多型」の効果により、でんぷんが豊富な食物を摂る民族がでんぷんを消化するための遺伝子を狩猟採集民より多く持つようになった。またこの年、遺伝学者らが自閉症のゲノムを持つ子供と持たない子供を調べたところ、自閉症のリスクを増加させるDNAの修飾を新たに発見した。 ( 2007年12月21日 Science )

遺伝子数、人によって違っていた…体質に関与か


父母からそれぞれ受け継ぎ、2個1組の遺伝子が、人によっては三つ以上あるなど、ゲノム(全遺伝情報)の12%の領域で個人差が見られることが、東京大先端科学技術研究センターなどの国際共同研究でわかった。23日付の英科学誌ネイチャーに発表した。 
 
この個人差は従来の遺伝子配列の違いと同様、病気のなりやすさ、薬の副作用の出やすさなどに関与しているとみられ、医療応用へ研究の進展が期待される。 
 
研究チームは、白人、アフリカ人、アジア人(日本人を含む)270人のゲノムを詳細に調べた。その結果、1447種の遺伝子で数に個人差があることがわかった。
 
人によって0〜10個と幅があり、多いほどたんぱく質が多く作られる。免疫機能や薬の代謝にかかわる遺伝子が多く、個人の体質に関与しているとみられる。研究チームの油谷浩幸教授、石川俊平助手によると、CCL3L1遺伝子が作るたんぱく質が少ないとエイズウイルスに感染しやすくなり、FCGR3B遺伝子の数が少ないと糸球体腎炎が起こりやすくなる。 
 
これまで、遺伝子を形作る物質のわずかな違い(SNP)が、体質などの個人差を決定すると注目されていた。油谷教授は「SNPと遺伝子数の個人差を組み合わせることで、個人の体質と病気の関係がより精密にわかる」と話している。(2006年11月23日 読売新聞 ) 

「ヒトゲノム地図」完成、オーダーメード医療実現へ道


人が生まれつき持っている体質が全遺伝情報(ヒトゲノム)のどの部分で決まっているのか、その所在地を示す遺伝情報の“地図”を、日米など5か国の国際研究チームが完成させた。 
 
糖尿病や高血圧などの個別の病気のなりやすさと、地図内のどの場所が関連しているかの解明は、今後の課題だが、遺伝レベルも含め、その人の体質に合わせた「オーダーメード医療」の実現に近づく成果として期待される。 
 
27日付の英科学誌ネイチャーで発表される。 
 
ヒトゲノムは99・9%までは誰でも同じとされるが、残り0・1%の中に、遺伝情報を記す化学物質(塩基)の配列の1か所が異なる部分(SNP)が散在し、それが体質などの個人差を決定すると注目されていた。 
 
このSNPは、数も1000万個にも上り、病気との関連の解明には、膨大な時間と費用がかかるとされてきた。 
 
日本からは理化学研究所遺伝子多型研究センター(中村祐輔センター長)が参加した研究チームは、ゲノム内に散在しているとみられていたSNPが複数で「ブロック」(ハプロタイプ)をつくり、ブロック単位で連動して遺伝していくことに着目。 
 
ブロック内の一部のSNPを調べれば、ブロック内の残りのSNPの機能も推測できることを突き止めた。例えば、日本人、中国人の場合、約25万個のSNPを調べるだけで、98・5%の精度で個人差を識別できることがわかった。 
 
研究チームは、日本、中国、米国など計270人から採取した血液サンプルをコンピューターを駆使して分析。個人の体質につながるとみられる110万個のSNPの位置に基づいて、ブロック内の重要なSNPの所在地を、ゲノム上に地図のように描いた。  (2006年10月27日 読売新聞) 

 
クロマチン-エピジェネティクスの分子機構
ブライアン・M・ターナー,堀越 正美
シュプリンガー・フェアラーク東京

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ゲノム機能を担う核・染色体のダイナミクス―複製、修復、組換え、転写機構からエピジェネティクス、高次生命機能・医学とのかかわりまで
花岡 文雄,永田 恭介
羊土社

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