樹氷とは、冬山などで、過冷却水滴からなる濃霧が強風によって樹木などの地物に衝突し、その衝撃で凍結・付着した氷層。一般的には、氷層を付着させた樹木そのものを指して樹氷と呼ぶこともある。

 気温-5℃以下の環境で生じる。粒状構造。風上側へ向かって羽毛状に成長する。この様を俗に「海老の尻尾」などと呼ぶ。気泡を多く含むために不透明で、白色を呈する。

 日本では蔵王の樹氷林が有名で観光資源にもなっており、樹木が完全に樹氷や雪によって覆われたものは「スノーモンスター」とも呼ばれる。他に伊吹山や富士山のものがよく知られる。(Wikipediaより)

 冬の蔵王の代名詞ともいえる樹氷だが、黄砂が到達し始める春先には、冬季に白色だった樹氷林が黄色味を帯びることが知られており、春先の樹氷を溶かして、ろ過すると黄色い黄砂だけが残る。



 ところが近年、真冬の樹氷を溶かして、ろ過すると何と真っ黒い「すす」が残るという。この黒い「すす」はどこから来たものだろうか?

 東北大東北アジア研究センターの工藤純一教授(環境情報科学)と山形大の柳沢文孝准教授(環境化学)のグループによる人工衛星画像の解析で、冬季に中国大陸から日本列島に流れ込んでいるかすみのような気流が発見され、何であるかを調べている。

 蔵王(山形市)の樹氷は通常より高い酸性度を示しており、柳沢准教授が、1月7日と10日の2回、蔵王の樹氷を採取し、成分を分析。硫酸濃度が通常の雪の3倍近い水準で、水素イオン指数(pH)は3.8と強い酸性を示した。

 これまでの柳沢准教授による硫黄の同位体の構成比率の照合で、蔵王の硫黄分は、上海周辺や北京周辺で採取した石炭内の硫黄分と同じことが特定されている。

 気流の成分が、石炭を燃焼した後の硫黄酸化物であることがほぼ裏付けられた。この結果、中国からの気流の正体は環境汚染物質であると考えられている。

 一方、中国では気象観測データは国の安全と利益にかかわる機密情報として、あらゆる気象観測データを国外に持ち出すことを禁じた法律「気象局13号令」を施行しており、具体的なデータは中国側からは得られない。とんでもない国を隣人にもってしまったものである。


関連するニュース
蔵王・樹氷:硫黄汚染が深刻化…中国の都市部など発生源


 山形、宮城両県にまたがる蔵王連峰の冬の名物となっている樹氷で、硫黄汚染が深刻化していることが、柳沢文孝山形大准教授(環境化学)と工藤純一東北大教授(環境情報科学)の分析で分かった。硫黄酸化物は酸性雨の原因でもある。硫黄成分の特徴と衛星画像の解析から、発生源は北京など中国の都市部や工業地帯とみられる。

 柳沢准教授は1991年から毎年冬、蔵王連峰山頂付近で樹氷を採取し、酸性やアルカリ性の度合いを示す水素イオン濃度(pH)を測定。当初はやや酸性を示すpH5.6前後で推移していた。1990年代半ば以降は次第に酸性化が進み、今月7日と10日には生態系への影響が懸念されるpH3.8を記録した。硫黄汚染が原因で、硫黄の同位体比(通常の硫黄と、わずかに存在するより重い硫黄の比)は、中国で使用されている石炭中の硫黄と一致した。

 工藤教授は、衛星写真では難しかった、雲ともやなどを識別する画像処理法を開発。米国の気象衛星の画像をこの処理法で分析し、pH3.8を記録した前日の今月6日から、北京と上海の2方向から日本に向けて硫黄汚染の原因と考えられるもやが流れ込んでいるのを確認した。

 工藤教授は「今後も中国の産業活動は活発化する。日本全体で継続的な監視が必要で、排出削減に協力することも重要だ」と話している。(毎日新聞 2008年1月28日)


参考HP →  環境省大気汚染物質広域監視システム


エアロゾル学の基礎
クリエーター情報なし
森北出版
基礎からわかる大気汚染防止技術
クリエーター情報なし
オーム社

ブログランキング・にほんブログ村へ 人気ブログランキングへ   ←One Click please