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全国的に自然海岸が一番残っているのは岩手県で、全海岸線の77%である。70%以上の自然海岸を誇っているのは、岩手と島根(77.17%)、鹿児島(73.75%)だけである。(平成13年「自然環境保全基礎調査」 環境省)

これに対して、東京湾では、三浦半島の剣崎から房総半島の洲崎に至る海岸のうち自然海岸は約8%にすぎず、大部分が人工海岸になっている。このような自然海岸の割合の低さは、過去の高度成長期における大規模な埋立ての結果によるものであり、かつて湾内に広く存在していた干潟も今では限られた範囲で見られるだけである。

このため、自然海岸や干潟等が果たしていた水質の自然浄化機能や生物生息機能が低下している。また、過去の埋立てでは、湾内の海底の一部を深掘して土砂を採取した場所、「浚渫窪地(深掘跡)」が湾内に点在し、青潮の原因となる貧酸素水塊が発生しやすくなっている。

こうした試行錯誤の結果、干潟の水質浄化作用が見直され、近年注目されている。なぜ干潟には水をきれいにする仕組みがあるのだろうか?

水質が汚染されるのは主に生活排水や陸上植物由来の有機物である。干潟に住むアサリやシジミは、海で増殖する植物プランクトンなどを食べている、と言われていたものの、実は何を食べるかよく分かっていなかった。

今回、京都大学の笠井亮秀・准教授、豊原治彦・准教授らは、干潟生物の食べ物と、生物の体を作る炭素や窒素の同位体比が同じになる性質を利用して、2枚貝が何を食べているかを調べた。

この結果、アサリ植物プランクトンや底生微細藻類を餌にしているのに対し、ヤマトシジミは、陸起源有機物を餌にしていることが分かった。

さらに、ヤマトシジミには、シロアリなどが持つセルロースを分解する酵素の遺伝子と同じものを持っており、森林の草木や落ち葉などを分解できることがわかった。

ヤマトシジミは干潟における代表的な生物だが、どこの干潟にもいるわけではない。今後、ヤマトシジミ以外で同様の働きをしている生物がいないかどうか調べ、干潟が環境に果たす役割についてさらに詳しく解明され、干潟の謎が明らかになることが期待される。(参考HP 京都大学プレスリリース・環境省)

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シジミに水質浄化能力 セルロースを分解


河口域にすむヤマトシジミが陸から流れ込む植物由来の有機物を分解し、沿岸域の水質浄化に大きな役割を果たしていることを、京都大学の研究グループが突き止めた。

沿岸域には河川を通じて陸上からさまざまな物質が流れ込んでおり、その中で最も多いのは、陸上植物由来の有機物といわれている。アサリやヤマトシジミなど干潟に住む生物が有機物を餌として取り込むことで水質浄化の役目を果たしているということは、これまでも指摘されていた。しかし、本当にこれらの2枚貝が、陸から流れてきた有機物を直接、餌として体内に取り込んでいるかどうかは分かっていなかった。

京都大学大学院農学研究科の笠井亮秀・准教授、豊原治彦・准教授らは、2枚貝の体内に含まれる炭素や窒素の同位体比と、陸起源有機物のほか餌と考えられる植物プランクトン、底生微細藻類の同位体比を比べる方法により、実際に何を食べているかを調べた。この結果、アサリが植物プランクトンや底生微細藻類を餌にしているのに対し、ヤマトシジミは、陸起源有機物を餌にしていると考えられることが分かった。

有機汚濁や富栄養化などの環境悪化により大きな影響を与えているのは、分解しにくいセルロースを含む陸から流れ込む有機物の方と考えられている。これまで、陸上ではシロアリなどがセルロースを分解する酵素の遺伝子を持っており、森林の草木や落ち葉などを分解していることが分かっている。

研究グループが、アサリとヤマトシジミのセルロース分解能力を調べたところ、ヤマトシジミがシロアリと似た自前のセルロース分解酵素を持っており、その活性も強いことが分かった。アサリは、活性が弱かった。

ヤマトシジミは干潟における代表的な生物だが、どこの干潟にもいるわけではない。今後、ヤマトシジミ以外で同様の働きをしている生物がいないかどうか調べ、干潟が環境に果たす役割についてさらに詳しく解明したい、と研究者たちは言っている。 (2008年3月5日 サイエンスポータル) 

シジミとは?


シジミ科に属する二枚貝の総称。淡水域や汽水域に生息する小型の二枚貝である。

味噌汁の具に利用される二枚貝としては、アサリと並んで日本人に最も馴染み深いものであるが、佃煮・時雨煮なども有名。

うま味成分の一種であるコハク酸を豊富に含んでおり、江戸時代の昔より肝臓に良い食材とされている。健康食品として「シジミエキス」なども販売されている。

シジミは昔から、薬効の高い食材として重宝されている。「肝臓をアルコールから守る」「貧血の予防に効く」「シジミのビタミンB12や鉄は、レバーにも匹敵する」などと言われてきた。シジミに含まれているアラニンとグルタミンがアルコール分解酵素を活性化するはたらきがある。

干潟の役割


干潟には、川の上流から流されてきた有機物や栄養塩が堆積する。干潟では有機物を分解する微生物が多く存在し、水をきれいにする浄化作用があるといわれるが、どの生物がどんな働きをするかはまだよくわかっていない。

安定同位体比を用いたこれまでの研究結果を見ると、海で我々が目にする動物のほとんどは植物プランクトンや底生微細藻類を食料としている。落ち葉などの陸起源有機物を直接利用できるのはシジミやゴカイ類などごく限られた生物のみである。

森林などからもたらされる大量のセルロースは、干潟などに生息する一部の動物によって適切に分解されれば、その後植物プランクトンなどに利用された後、生態系の上位につながっていき、水質は浄化する。

しかしながら干潟が減少している今日では、その多くは未分解のまま海に流れ込んでいる。河川を人体における消化管に例えると、消化機能が低下したために未分解の栄養分がそのまま排泄されていることになる。

その結果、沿岸域は貧酸素化などの環境悪化にさらされ、青潮、赤潮などを生じ、水産資源ばかりでなく地球環境にも重大な影響が及んでいる。したがって干潟の再生は、地球という大きな生き物を本来の健康な状態に回復させるための重要なカギを握っている。

今後の展開
シジミは干潟における代表的な生物であるが、必ずしもどこの干潟にでもいるわけではない。そこで我々は、二枚貝以外の生物についても調べ始めている。干潟には1mm以下の小型生物(メイオベントス)が大量に棲んでいる。

メイオベントスは我々の眼ではほとんど見ることができないのでなかなかその存在に気付かないが、1平方メートルに100万匹以上生息するところも少なくない。これらメイオベントスのセルロース分解能を調べたところ、国立環境研究所の調査において日本国内でもっともセルロース分解能が高いとされている、釧路近郊の琵琶瀬川と風連湖の干潟に生息する小型のミミズ、センチュウ類、甲殻類などが、強いセルラーゼ活性を持っていることがわかった。

今後は、セルロース分解という観点から河口干潟に生息する様々な生物を調査し、干潟が環境に果たす役割について、より詳細に解明していく予定である。(京都大学プレスリリース)
 

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