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セントラルドグマとは、1958年にフランシス・クリックが提唱した分子生物学の中心概念のこと。セントラルとは中心、ドグマとは宗教における教義のことであり、具体的には、遺伝情報はDNA→(複製)→DNA→(転写)→RNA→(翻訳)→タンパク質の順に伝達されるしくみをいう。

これまで遺伝子変異というと、このセントラルドグマでいうDNA一次配列の変化のことを指してきた。つまりDNAの塩基配列が変わるためにRNAも変化し、そこからつくられるタンパク質も変化し、生物の姿・形・性質(形質)まで変わる仕組みのことであった。

ところが近年、DNA配列の変化を伴うことなく後天的な作用により変異が生じる機構が発見されている。もとのDNAは変わっていないのに、生物が形作られるときに別の姿になることがある。このような、ゲノムの解読が完了した上で、形質発現の調節機構を「エピジェネティクス」という。

生物では昆虫の変態などでよく見られる。幼虫から成虫になる過程で劇的な変化が見られるが、もとのDNAに変化があるわけではない、発現のしかたに変化があるだけである。

また、iPS細胞やES細胞は何の細胞にもなるが、分化した皮膚の細胞は他の細胞に変わることもない。これも「エピジェネティクス」である。

この仕組みは染色体の中のある、タンパク質ヒストンとDNAの結合部分「クロマチン」で起きると考えられている。DNA塩基のメチル化による遺伝子発現の変化やヒストンのタンパク質のメチル化による遺伝子発現の変化が現在研究されている。

今回、オーストラリア国立大のグループが、ミツバチの特定の幼虫が女王蜂に育つのは、餌のロイヤルゼリーが遺伝子の働きを調節するためであり、このとき「DNAメチル化」という現象が起きていることを「サイエンス」電子版に発表した。 

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女王蜂になるのはなぜ ロイヤルゼリーが遺伝子を調整?


ミツバチの特定の幼虫が女王蜂に育つのは、餌のロイヤルゼリーが遺伝子の働きを調節するためらしい――。こんな可能性を強く示唆する研究成果を、オーストラリア国立大のグループが米科学誌サイエンス電子版に発表した。

ミツバチの働き蜂と女王蜂はどちらも雌。DNAの遺伝情報では差がないのに、なぜ体や役割に違いができるのかは大きな謎だ。女王蜂となる幼虫に餌として与えられるロイヤルゼリーを別の幼虫に与え続けると、やはり女王蜂になることから、ロイヤルゼリーがカギを握ると考えられてきたが、具体的な働きはわかっていなかった。

グループは、DNAを化学的に変化させて遺伝子の働き方に違いを生むDNAメチル化という現象に着目。ミツバチの幼虫でメチル化を妨げる操作をすると、卵巣が大きくなるなど女王蜂のような体の発達を示すことを見つけた。

栄養条件によりDNAメチル化などを介して遺伝子の働き方に変化が起こることが近年、哺乳(ほにゅう)類などで報告されている。このためグループは、ミツバチではロイヤルゼリーの摂取がメチル化を抑えるような効果と結びついていると推定した。

ミツバチを研究する佐々木哲彦・玉川大准教授(分子生物学)は「女王蜂と働き蜂の分化には遺伝子の調節が関係すると考えられてきた。それを実験的に示唆した結果で興味深い。ロイヤルゼリーの摂取とDNAメチル化を直接結びつける研究ではないが、今後の進展が期待できると思う」と言っている。(asahi.com 2008年03月16日) 

エピジェネティクスとは?


エピジェネティクス(epigenetics)とは、クロマチンへの後天的な修飾により遺伝子発現が制御されることに起因する遺伝学あるいは分子生物学の研究分野である。

遺伝形質の発現はセントラルドグマ仮説で提唱されたようにDNA複製→RNA発現→タンパク質合成→形質発現の経路にしたがってDNA上の遺伝情報が伝達された結果である。

言い換えると、セントラルドグマ仮説における形質の変化(遺伝子変異)とはDNA一次配列の変化であり、事実、遺伝子変異の大半はDNA配列の変化に起因することが実証されてきた。

しかしながら、DNA配列の変化を伴うことなく後天的な作用により変異が生じる機構も発見されている。近年ではヒトゲノムの解読が完了した上、形質発現の調節機構にも研究の中心が移るにつれてエピジェネティクスが注目を集めるようになった。

すなわち従来のオペロン仮説による遺伝子発現の制御はあくまでもDNA一次配列変化により変異が発生する。一方、次に示すような機序に基づく発現制御の変異はDNA一次配列変化と独立している事象である。

DNA塩基のメチル化による遺伝子発現の変化、ヒストンの化学修飾による遺伝子発現の変化。分子生物学的には、以上の述べてきたような、後天的DNA修飾による遺伝発現制御をエピジェネティクスの学問分野では扱う。

また遺伝学的に見ると、DNA複製と突然変異とによる変異は親と子との世代間の変異である。

一方、エピジェネティクスの変異は同一個体内での、部位や個体の発生や分化に関する時間軸上の違いで差を生じる変異でもある。その上従来のDNA配列決定法では、個々のDNAに加えられた後天的な修飾の状況を検出することは困難であったので、エピジェネティクス的な変異が形質発現関与している寄与は過少に評価されてきたとも考えられる。

最近においてはエピジェネティクス的な機序が遺伝子発現に関与している事例も多数報告されるようになってきており、分子生物学上の一大領域を形成しつつある研究の活発な学問分野でもある。

DNAメチル化
脊椎動物のDNAメチル化反応は、CpG サイト(シトシン-リン酸-グアニンサイト;シトシンがDNA配列のグアニンと隣り合う場所)に起こり、シトシンは5-メチルシトシンに転換される。Me-CpGの形成は、DNAメチルトランスフェラーゼによって触媒される。CpG サイトは脊椎動物のゲノム全体でみると多くないが、遺伝子のプロモーター近傍にCpG アイランドとして高い頻度で見つかる。

CpGサイトのメチル化反応は遺伝子発現に大きな影響を与える。

タンパク質メチル化
タンパク質メチル化は翻訳後修飾の1つの型でもある。タンパク質メチル化は通常、アミノ酸配列のアルギニンかリシン残基の場所に起こる。アルギニンは1回(モノメチルアルギニン)または2回メチル化できる。ペプチジルアルギニンメチルトランスフェラーゼ(PRMTs)の触媒効果によってN末端に1回メチル化が起きると非対称性ジメチルアルギニンが、2回起きると対称性ジメチルアルギニンができる。リシンはリシンメチルトランスフェラーゼによって3回までメチル化できる。(出典:Wikipedia)

タンパク質メチル化は特にヒストンにおいて研究されており、S-アデノシルメチオニンからヒストンへのメチル基の運搬を行う酵素はヒストンメチルトランスフェラーゼとして知られている。ヒストンのいずれかの残基へのメチル化は、エピジェネティクス効果として遺伝子発現を抑制または活性化させる。(出典:Wikipedia)
 

クロマチン-エピジェネティクスの分子機構
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