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ミトコンドリアのDNAは必ず母親のミトコンドリアDNAを引き継ぐ。これは、同種交配の場合卵子に入った精子のミトコンドリアが選択的に排除されてしまうからである。

そのため世界中の人間のミトコンドリアDNAを調べて追跡すると、どこの誰が今のミトコンドリアについての人類の母であったかがわかる。実際にこの調査は行われ、アフリカのある女性が今の人類の全てのミトコンドリアについての「母親」であったことが判明した。(その他の遺伝情報についてすべてこの女性に由来するということではない)。

この女性は「ミトコンドリア・イブ」と呼ばれている。

 

パラサイト・イブという小説は、このようなミトコンドリアDNAの、核DNAと違った独自の遺伝を題材にしたものだが、もう一つ、パラサイトというのは「寄生」という意味がある。

進化論的にはミトコンドリアは好気的バクテリア細胞が真核細胞に共生することによって獲得されたと考えられている。この説を細胞内共生説という(リン・マーギュリスが発表)。ミトコンドリアは核ゲノムとは別に独自の環状DNAを持ち、分裂時に複製倍加する。

パラサイトイブでは、「寄生」するミトコンドリアDNAが、核DNAから主導権を奪おうとするストーリーであるが、「宿主」である人を殺してしまっては生きていけないので、通常、ミトコンドリアが人に害を与えるということはない。

ところが今回、筑波大や島根大、千葉県がんセンターのグループが、変異したミトコンドリアDNAが、がん細胞転移の役割を果たすことを突き止めた。このがん細胞の転移は、活性酸素の発生により、ミトコンドリアのがん転移遺伝子が働くのだそうで、活性酸素を抑える薬を飲むと、ガンの転移も抑制されるそうだ。

まるで「宿主」に対して攻撃するかのようなミトコンドリアDNAの働きは意外である。

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ミトコンドリア異常でがん悪性化 筑波大チームなど解明


がん細胞にあるミトコンドリアの遺伝子に異常が起こると、がん細胞が悪性化し、転移しやすくなることが、筑波大、島根大、千葉県がんセンターのチームの研究でわかった。治療法開発につながると期待されている。3日付の米科学誌サイエンス電子版に掲載される。

林純一・筑波大教授(細胞生物学)によると、細胞のエネルギーになるATP(アデノシン三リン酸)をつくるミトコンドリアの酵素に遺伝子変異があると、活性酸素が過剰にできる。マウスの肺がん細胞を使った実験で、活性酸素によって、細胞増殖を調節する物質が異常に増えることを突き止めた。

酵素に変異があるがん細胞をマウスに注射すると肺に転移したが、マウスに活性酵素を抑える薬を飲ませると、転移は減った。人の乳がん細胞でも、同じ酵素に異常があると活性酸素が過剰に生み出され、悪性化することを確かめた。 ( ashi.com 2008年04月05日 )
 

ミトコンドリアはどこからきたか―生命40億年を遡る (NHKブックス)
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