花粉症と免疫の関係

 5月に入り、ようやく呼吸が楽になった。気象庁などのスギ花粉予報とぴったり一致する。毎年1月から4月の4ヶ月もの長期間、喉の痛みや不調に苦しめられているが、スギ花粉が原因だということがほぼ確実にわかった。

 花粉症はアレルギーといって、私たちの体が外部からの侵入者に対し、過敏に反応するために起こるといわれている。私たちのからだには、体内に侵入する、バクテリアやウイルス、花粉などから守ろうとする「免疫」というしくみがある。

 最近では農薬メタミドホスやパラチオンが中国でつくった食品に混入していて問題になった。また、公害で有名になった有機水銀や六価クロム、カドミウム、砒素などが体内に蓄積することもある。硫化水素も問題だ。

 また、ビスフェノールA (bisphenol A)やポリ塩化ビニル(PCB)などは、環境ホルモンとよばれ、少量でも体にあるとホルモン(内分泌)としてはたらき、体に害を及ぼすことが問題になっている。

 これらのすべてに効く魔法の薬はない。しかし、これらすべてに対し、からだは戦い続けている。

 農薬や環境ホルモン、重金属、硫化水素など有害な化学物質は、肝臓や酵素分解・解毒を担当するが高濃度の化学物質は対処できない。いつも環境をチェックし、体内に入らないよう注意するしかない。

 免疫で体を防ぐ仕組み

 しかし、知らず知らず体内に侵入するバクテリアやウイルス、花粉などに対して私たちはどのように対処しているのだろうか?

 これらの生物性の侵入者に対しては「免疫」という方法で私たちは日々戦っている。

 免疫ではまず「自然免疫」が感染源に対応する。自然免疫にはある特殊な細胞が備わっており、それらは侵入物が自己を再生産したり宿主に対し重大な被害をもたらす前に発見、排除する。

 自然免疫を突破した感染源に対応するのは「獲得免疫」である。獲得免疫は一度感染源に接触することで発動し、発動後は感染源を発見し次第選別、強力に攻撃を仕掛けていく。

 獲得免疫は抗体や補体などの血中タンパク質による体液性免疫の他に、リンパ球などの細胞による細胞性免疫によって担われている。リンパ球には分化成熟して免疫グロブリンを産生するB細胞のほかに、胸腺で分化成熟するT細胞などがある。

 その他、食作用によって抗原を取り込んで分解してT細胞に提示する樹状細胞なども免疫機能の発現に関与する。

これらの細胞は骨髄で産生され、胸腺やリンパ節、脾臓などのリンパ系組織での相互作用をへて有効な機能を発揮するようになる。一般的に「免疫」と聞いて多くの人が思い浮かべるのは「獲得免疫」である。

 免疫機構の構成要素                   (出典:Wikipedia)
自然免疫 獲得免疫
非特異的な反応 感染源と抗体の特異的な反応
感染源との接触で即最大効果を発揮 接触から最大効果までは時間がかかる
体液性で細胞が仲介する 体液性で細胞が仲介する
免疫記憶なし 接触により免疫記憶を形成
ほぼ全ての生物で見られる 高度な脊椎動物でのみ見られる

 この免疫機構に見られる自然免疫と獲得免疫の研究で最初にノーベル賞をもらったのが、ロシア人微生物学者イリヤ・イリイチ・メチニコフとドイツ人細菌学者パウル・エールリヒである。

 メチニコフは自然免疫について白血球の食菌作用を提唱し、エールリヒは獲得免疫について、抗原抗体の特異性を側鎖説で説明。その功績により第8回ノーベル生理学・医学賞を受賞した。

 イリヤ・イリイチ・メチニコフ

 イリヤ・イリイチ・メチニコフ (Ilya Ilyich Mechnikov,1845年5月16日 - 1916年7月16日)は白血球の食菌作用を提唱し、免疫系における先駆的な研究を行ったことで有名なロシアの微生物学者および動物学者である。

 メチニコフは、ミジンコやナマコの幼生の研究から、それらの動物の体内に、体外から侵入した異物を取り込み、消化する細胞があることを発見した。

 たとえば、ミジンコの体内に侵入して増殖し、ミジンコを殺してしまう酵母の一種(Mechnikovia)があるが、彼は、場合によっては侵入を受けたミジンコが死なず、侵入した胞子がそこへやってきた細胞に取り込まれ、消化されることを発見した。そこで、彼は、この細胞に食細胞と命名し、この細胞の働きが、動物が病気にならないためのしくみ、つまり生体防御のしくみを支えるものだと判断した。

 当時、免疫は専ら血清中の液性因子(抗体や補体)によるもの(=液性免疫)だけと考えられていたが、メチニコフの提唱した学説はこれとは異なる、血球細胞による免疫機構(=細胞性免疫)の存在を支持するものであった。

 また晩年には老化の原因に関する研究から、大腸内の細菌が作り出す腐敗物質こそが老化の原因であるとする自家中毒説を提唱した。ブルガリア旅行中の見聞からヨーグルトが長寿に有用であるという説を唱え、ヨーロッパにヨーグルトが普及するきっかけを作ったことでも知られる。1908年、食菌作用の研究においてノーベル生理学・医学賞を受賞した。

 食菌細胞と液性免疫

 彼は食菌細胞の働きを生体防御の働きと見て、そのために液性免疫の役割を否定した。そのために、従来の研究者たちと対立し、激しい論争が行われたと伝えられる。ちなみに、この2つの働きの関係は、最近まで明らかにならなかった。

 近年まで、教科書には生体防御と言えば、白血球によるものと体液性免疫によるものが、ほとんど無関係に、並列的に記述されていた。この両者が密接に関係を持って一つの生体防御のしくみをなしていることがわかったのは、個々のリンパ球の働きなどが明らかになってからのことである。

 彼は死の寸前に、ヨーグルトを食べたことの結果が自分の体にどのように現れたかを調べるよう、友人に依頼したといわれる。「腸のあたりだと思うんだ」が最後の言葉であったと伝えられる。(出典:Wikipedia)

 パウル・エールリヒ

 パウル・エールリヒ(Paul Ehrlich, 1854年3月14日 – 1915年8月20日)はドイツの細菌学者・化学者。「化学療法 (chemotherapy)」という用語と「特効薬 (magic bullet)」という概念をはじめて用いた。

 彼は血液学・免疫学・化学療法の基礎を築いた独創的な研究者であり、細菌学や医化学方面に数多くの新技法を考案した。150余篇の論文は多方面にわたる。

 はじめは血液染色に着目し、アニリン色素による生体染色へと研究を発展させ「血液脳関門」の存在に最初に気づく。

 ついで免疫学の研究に移り、植物性蛋白毒素リチン・アブリン・ロピンの実験をはじめ、抗原抗体の特異性とその量的関係を明かにし、有名な「側鎖説」をたてた。この理論は血清の効果と抗原の量の可能な測定を説明するものである。1908年にイリヤ・メチニコフと共にノーベル生理・医学賞を受けた。

 側鎖説とは?

 側鎖説とはパウル・エールリヒが提唱した。抗体がどのように産生されるかについて、「白血球表面に多種類のレセプターがあり、これに抗原が結合すると、細胞は刺激されレセプターを多量に分泌し、これが抗体となる」という考え方。Landsteinerらの人工抗原の研究から否定されている。(出典:Wikipedia)


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