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よく、人はサルから進化したという。人とサルはどのくらい近いのだろう?

人に最も近いサルは類人猿と呼ばれている。このなかまにはどんな動物がいるのかご存じだろうか?

そう、正解はチンパンジー、ゴリラなどのなかまである。これ以外にはオランウータン、ボノボ、テナガザルのなかまも入る。人とチンパンジーを比較したところ染色体数は48本で人より2本多く、DNAではわずか1.23%しか違わない。

能力の点ではどうだろうか?

驚いたことにチンパンジー「アイ」には、人より優れた能力があった。

チンパンジーの子供が数字を記憶する能力は、ヒトの大人を超えることがあるという。「アイ」はコンピューターの画面に映しだされる、1〜9までの数字の場所を瞬間的に記憶できた。やってみるとわかるが、人が記憶できるのは、せいぜい5個ぐらいまで。

京都大学の霊長類研究所で、チンパンジーの認知能力を調べる「アイ・プロジェクト」が始まってからちょうど30年になるという。

強制的には教え込まず、コンピューターを使って、正解すればエサを与える方式で自然におぼえるシステムを作り上げた。チンパンジーの「アイ」は11種類の色とそれを表す漢字をおぼえた。物の数や数の大小、順番も理解した。「5本の赤い鉛筆」などの組み合わせた概念も理解した。

今、31歳のアイには、8歳になる子、アユムがいる。チンパンジーが子供を育てるときに人と同じ物まねや、微笑みかける行動が観察された。

それにしても30年はずいぶん長い期間だ。研究者達はそれだけの時間をかけてアイ、アユム達と信頼関係を築いていった。

それでもまだ心の発達などは複雑でよくわからない面が多いという。今後も長い時間をかけて、研究を続ける。根気のいる大変なプロジェクトである。

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学び続けた30年 天才アイのダイアリー


数字や言葉がわかり、「天才」と呼ばれるチンパンジーのアイが、京都大学霊長類研究所(愛知県犬山市)に来てから30年。松沢哲郎教授ら研究者や、息子のアユムとともに毎日勉強する姿から、ヒトの認知能力や心の発達を探る鍵も見えてきた。アイの気持ちになって研究の歩みを振り返った。

1977年11月、西アフリカの森から研究所にやってきた。まだ1歳。病気がないかどうか調べるって、最初は窓のない地下室にいた……。

「鉄の扉を開けると、小さなチンパンジーがぽつんと木製の台の上に座っていた。私が目を見ると、彼女は私を見つめ返した。ニホンザルなら威嚇の行動だけど、これは違うと驚いた」(松沢教授=当時、心理部門の助手)

アキラとマリっていう同い年のチンパンジーも来た。78年4月、「勉強」が始まった。勉強部屋に1カ所ピカピカ光るところがあった。面白いから押してみたら、チャイムが鳴ってリンゴのかけらがでてきた。

「自分から、勉強をするように仕掛けを作った。強制はしない。私たちに伝わる『言葉』を教えるのが最初の目的。だんだん、チンパンジーの見ている世界をまるごと知りたくなった」(松沢教授)

靴やコップを見て、対応する図形文字を選ぶ。キーを押して組み合わせが当たるとホロホロホロってチャイムが鳴ってリンゴが出てくる。間違えるとブブーッていうブザーだけ。数字や色も覚えた。ついつい一生懸命になってしまう。マリやアキラもするけれど、興味は違うみたい……。

「同じ間違いを繰り返さないアイ、間違えるとやる気を失うマリ、ブブーッと鳴ってもへこたれないアキラ……。反応は三者三様。アイは同じ課題でも半分の時間で済むから『天才』といわれるけど、マリはみんなと仲良くするのが上手で子どもをたくさん産んだ。アキラはけんかが強い。みんな能力は偉大で個性があるんです」(松沢教授)

99年夏、妊娠した。「人工授精」なんだって。おなかが大きくなる間、ぬいぐるみで抱き方を知った。翌年4月24日、おなかが痛くなってアユムが生まれた。最初は息をしてなかった。赤ちゃんを抱いて一生懸命口や鼻を吸った。そしたら泣き出した。

「母を知らないアイが母親を務めた。とっさの行動は感動的だった」(出産を見届けた獣医師の道家千聡さん)

アユムをいつも抱いていた。目と目で見つめ合う……。アユムったら赤ちゃんの時から私の顔と他の顔の区別ができたみたい。勉強の時も一緒にいたら10カ月の時、色と漢字を合わせる問題をたまたま正解した。8歳の今、数字の記憶力は私よりすごい。

「人の子どもの発達と比較する研究に発展させたい。楽しみです」(林美里助教)

「彼らができることは、私たちができたりできなかったり。そうした事例を重ねた30年の研究の結果、『チンパンジーの心の世界からヒトを見る』という新たな分野が始まっている」(松沢教授)

◆ヒトの知性のルーツ解く鍵

30年前に霊長研にやってきたアイ、その息子のアユムらが、数の順や大小、計数百もの図形と色などを認識し、優れた記憶力を持つことは有名だ。加えて、個性を生む心の進化、子どもの発達を見守る教育など、ヒト独特と考えられていた能力さえ持っていることが明らかになっている。

チンパンジーは、DNAで1.23%の違いしかないヒトに最も近い霊長類。ヒトが森の中に住んでいた太古の姿を映す鏡だ。アユムは、短期記憶力ではヒトより優れた面も持つ。ヒトは言語を得た代わりに、そのような力を失ったのだと考える学者もいる。

次の世代が生まれれば、仲間同士の関係を築き、社会の成立にどう向かっていくか、そんな研究に発展する。ヒトが知性を育て文化を生んだ謎にも迫る可能性がある。(asahi.com 2008年5月31日)

参考HP 京都大学霊長類研究所「アイ・プロジェクト」
 →
 http://www.pri.kyoto-u.ac.jp/ai/
 

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