
インフルエンザの予防というとワクチンがある。ワクチンは身体の免疫機構を利用し、ウイルスを分解・精製したHA蛋白などの成分を体内に入れることで「抗体」を作らせ、本物のウイルスが入ってきても感染させないようにするしくみである。
インフルエンザの薬としては、タミフルがある。この薬はノイラミニダーゼ (neuraminidase, NA) という酵素(糖タンパク質)を阻害することによりインフルエンザウイルスが感染細胞表面から遊離することを阻害し、他の細胞への感染・増殖を抑制する。
今回、東京大学医科学研究所の河岡義裕教授(ウイルス感染)らのグループがインフルエンザウイルスが人の細胞に感染して増えるために欠かせない複数のたんぱく質を、突き止めた。
ウイルスは感染した細胞がもともと持っているたんぱく質を利用して増殖する。しかし、インフルエンザの場合、どんなたんぱく質がかかわっているかはほとんどわかっていなかった。
人が細胞内に持っているたんぱく質のうち、エネルギーを生み出したり、細胞の呼吸を助けたり、リボ核酸(RNA)の輸送にかかわったりする、三つのたんぱく質の働きを抑えると、ウイルスが増殖できないことがわかった。 新薬の開発に役立つ成果として注目されている。
現在、インフルエンザの治療薬として使われているタミフルは、すでに薬が効かない耐性ウイルスが発見されている。ウイルスが耐性を獲得するのは、ウイルスが遺伝子変異によりあり新しい性質を獲得するためで、進化の最も身近な例の一つである。この進化があるため、鳥インフルエンザに人が感染する変異が心配されている。
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インフルエンザ新薬に道?ウイルス増殖の仕組み発見
インフルエンザウイルスが人の細胞に感染して増えるために欠かせない複数のたんぱく質を、東京大学医科学研究所の河岡義裕教授(ウイルス感染)らのグループが突き止めた。新薬の開発に道を開く成果として注目されそうだ。10日付の英科学誌ネイチャー(電子版)に発表した。
ウイルスは感染した細胞がもともと持っているたんぱく質を利用して増殖している。しかし、インフルエンザの場合、どんなたんぱく質がかかわっているかはほとんどわかっていなかった。
ショウジョウバエの細胞に感染するように遺伝子を改変したインフルエンザウイルスを作製。細胞のどのたんぱく質が増殖にかかわっているかを調べた。
すると、人と共通して持っているたんぱく質のうち、エネルギーを生み出したり、細胞の呼吸を助けたり、リボ核酸(RNA)の輸送にかかわったりする三つのたんぱく質の働きを抑えると、ウイルスが増殖できないことがわかった。
現在、インフルエンザの治療薬として使われているタミフルは、すでに薬が効かない耐性ウイルスが報告されている。河岡教授は「今回特定したたんぱく質とウイルスの相互作用を抑えることができれば、新しい薬や治療法の開発につながる」と話している。(asahi.com 2008年7月10日)
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