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先日の中国四川大地震や岩手・宮城内陸地震では地震湖が問題になった。このとき人工衛星が大活躍をした。上空から眺めると地震湖の存在が容易に発見できたからである。

同様にヒマラヤ山脈を人工衛星で見てみるとどうだろう、地震があったわけでもないのに、湖が無数に観察される。こちらの方は氷河湖である。その数何と9000。このうち決壊が心配されるのは200もあるという。決壊すれば下流域の多くの住民が犠牲になる。実際に3年に1つの割合で決壊は起きており、大勢の命を奪っている。

IPCCによると、地球温暖化により世界各地で氷河が溶け始めたのは、1850年代頃から。中でもヒマラヤでの溶け方は異常に速い。このままいけば2035年にはヒマラヤの氷河の80%が消失する。そして、メコン川、インダス川、長江などの大河の水源となっているため、これらの川の水量は5分の1まで減り、その結果、各地で水不足が起きるという。

1994年10月7日、氷河湖の1つのルゲ氷河湖(標高4,500 m)は湖をせき止めていた堆積物の一部が決壊して洪水が発生した。濁流は約90 km下流の古都プナカ(標高1,300 m)にまで達し、橋や水車や家屋を破壊し、死者20数名などの被害をもたらした。

現在、東ネパールのイムジャ氷河のイムジャ湖は最も決壊の危険性が大きい湖として、警戒されている。慶応大学の研究チームは氷河湖イムジャ・ツォを訪れ、宇宙衛星と標高5000mの地上から氷河湖を観測する世界初の警報システムの構築を目指している。

なぜ、ヒマラヤではこれほど氷河湖が多いのだろう?

その原因は、アジアモンスーン気候にある。アルプスなど他の氷河は冬に雪が降り、氷河になるが、ここヒマラヤでは夏に雪が降り氷河になる。ところが近年、温暖化の影響で夏の雪は雨に変わることが多くなった。

関連するテレビ番組
NHKクローズアップ現代「ヒマラヤ 氷河湖決壊の危機」


世界の屋根ヒマラヤで、地球温暖化による氷河の縮小が急激に進んでいる。IPCCは「2035年までにヒマラヤの氷河の80%が消失する」と予測。山岳氷河が融けてできた氷河湖の決壊洪水が頻発すると警告している。

今年5月、慶応大学の研究チームが、エベレスト山麓の決壊寸前の氷河湖イムジャ・ツォを訪れ、宇宙衛星と標高5000mの地上から氷河湖を観測する世界初の警報システムの構築を目指した。番組では、調査に同行して氷河湖の最新の状況を伝えるとともに、決壊被害の精緻なシミュレーションを行う。

さらに、ヒマラヤ山脈は長江など7つの大河の源流であり、アジアの水がめの役割を果たしている。将来、氷河が消失すると、インダス川などで河川の流量が大幅に減少し、下流の水資源に大打撃が及ぶと研究者は指摘する。目前に迫る決壊洪水、そして将来の水不足。温暖化がヒマラヤ山麓と下流のアジアの人々の暮らしに及ぼす重大な危機について考えていく。(NO.2602:6月23日放送)

スタジオゲスト : 中尾 正義さん    (総合地球環境学研究所名誉教授 )

氷河湖とは何か?


氷河湖(ひょうがこ)とは氷河の後退により溶けた水がモレーン(氷河末端の堆石)にせき止められて自然のダムに溜まることにより形成される湖で、貯水量が一定以上になるとダム部分が決壊し、激しい土石流となって下流域に大きな被害をもたらすことがある。ヒマラヤ山地では、多くの氷河湖が形成され、地球温暖化の影響で夏に雪が降らず、雨が降ることにより、氷河が縮小し、氷河湖の貯水量が増える傾向があると指摘されており、その危険性が指摘されている。

東ネパールのイムジャ氷河のイムジャ湖は最も決壊の危険性が大きい湖として、警戒されている。日本には氷河湖の例はないが、ヨーロッパにはいくつか氷河湖が存在し、代表的なものにボーデン湖などがある。(出典:Wikipedia)
 

消える氷河―地球温暖化・アラスカからの告発
桐生 広人
毎日新聞社

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ヒマラヤと地球温暖化―消えゆく氷河
中尾 正義
昭和堂

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