理想的な気体の状態法則

 気体の物理的な性質を考えてみよう。気体はどういうときに膨らみ、どういうときに縮むのだろうか?

 そう、圧力が高いとぎゅっと縮み、圧力が低いと膨らむ。また、温度が高いと膨らみ温度が低いと縮む。

 ボイル・シャルルの法則
 1662年にロバート・ボイルは、温度が一定のとき、「理想気体の体積は圧力に反比例する」ことを発表した。気体の体積をV、圧力をP、正の定数をkとすると、この法則は以下の式により表される。

V=frac{k}{P}    これがボイルの法則である。

 1787年にジャック・シャルルは、圧力が一定のとき、「理想気体の体積は絶対温度に比例する」ことを発見した。1802年にジョセフ・ルイ・ゲイ=リュサックによって初めて発表された。気体の体積をV、絶対温度をT、正の定数をkとすると、この法則は以下の式によって表される。

  V=kT ,     これがシャルルの法則である。

 ボイル=シャルルの法則は、理想気体の体積と圧力、温度に関係する法則。ロバート・ボイルが発見したボイルの法則と、ジャック・シャルルが発見したシャルルの法則を組み合わせたものである。「気体の圧力Pは体積Vに反比例し、絶対温度Tに比例する」というもの。

  P = k frac{T}{V}     これがボイル=シャルルの法則である。

 理想気体の方程式
 さらに、1811年、アボガドロによって「同一圧力、同一温度、同一体積のすべての種類の気体には同じ数の分子が含まれる」という仮説が提案された。これは約100年後の1905年、アインシュタインとジャン・ベランらによって、分子の存在があきらかになり、アボガドロの仮説の正しいことが証明された。これをアボガドロの法則と呼ぶ。

 こうして、気体の体積は、気体の分子量にも比例する。理想気体の方程式はこれを含めてできあがった。気体の体積をV、圧力をP、気体の物質量(モル数)をn、気体定数をR、絶対温度をTとすると次のように表される。

  PV  nRT   これが理想気体の方程式である。  

 この式は、「理想気体」の式として、よく出てくるのであるが、実際の気体である「実在気体」はこうはならない。実際の気体には他に影響を受ける要因がいくつかあるからだ。主な問題点は2つある。それは何だろうか?

 気体および液体の状態方程式
 1つ目は、理想気体には気体分子自体の大きさが考えられていないことである。2つ目は理想気体には分子どうしではたらく引力の大きさを考えていないことである。

理想気体は、温度が下がれば下がるほど体積は小さくなり、絶対零度(セ氏では-273.15℃)では体積は0になる。だが、これでは気体の体積が完全に無くなった状態であり、気体が消滅した事になってしまう。理想気体には気体分子自体の大きさが考えられていない問題がある。

 また、気体は分子運動で熱膨脹をするが、加熱や減圧により、気体分子の運動エネルギーは大きくなるので、分子間の引力などは無視できる。だが、気体を加圧や冷却すると気体分子の運動エネルギーは小さくなり、分子間引力が無視できなくなってくる。この結果、分子運動のエネルギーが分子間力のエネルギーよりも小さくなり液体になる。この分子間にはたらく引力を、ファンデル・ワールス力という。

 このことに気づき理想気体の方程式に修正を加えたのが、ファンデル・ワールスである。すなわち、分子自体が持っている体積を式から差し引き、分子自体が持っている引力を圧力にプラスから差し引いた式を考え、論文で発表した。

 ファン・デル・ワールスは以上の点を考慮して、1873年に下記のような実在気体の状態式を提出した。a はファンデルワールス力に関する定数であり、b は分子自体のの体積に関する定数である。

left( P+frac{a}{V^2}right) left( V-bright) =  RT

 これが実在気体とよく一致し、気体ばかりか液体にまであてはまるので、マクスウェルは、ネイチャー誌でこの論文を絶賛した。

 1910年、これらの業績により、ファンデルワールスは第10回ノーベル物理学賞を受賞する。受賞理由は、「気体および液体の状態方程式に関する研究」。 

ヨハネス・ファン・デル・ワールス


 ヨハネス・ディーデリク・ファン・デル・ワールス(Johannes Diderik van der Waals、1837年〜1923年)は、オランダの物理学者。分子の大きさと分子間力を考慮した気体の状態方程式を発見し、1910年にオランダ人として3人目のノーベル物理学賞を受賞した。ヨハネス・ファン・デル・ワールスの業績の重要さは以下の点にある。

 彼の状態方程式は気体と液体を区別なく扱うことができた。これは気体と液体が連続であるということを示しており、全く新しい考え方であった。彼の状態方程式は多くの気体・液体に当てはまり、きわめて普遍性が高かった。
 この普遍性により、当時液化されていなかった水素やヘリウムの状態方程式を予言することができ、低温物理学への道が拓かれた。 他に、この研究を発展させた混合気体の理論や、液体の表面張力に関する研究もある。(出典:Wikipedia)

 

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