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2008年4月米政府は、プラスチック製の食器などから溶け出す化学物質ビスフェノールA(BPA)について、「現在の摂取量が、胎児や子供に対し、神経系や行動、乳腺への影響、女子の早熟を引き起こす懸念がある」とする報告書案を公表した。また、カナダ保健当局はビスフェノールA(BPA)を有害物質に指定した。

9月6日読売新聞によると、ビスフェノールA(BPA)によって、脳の神経組織の形成が妨げられることが、サルを使った米エール大などの実験で分かり、米科学アカデミー紀要電子版で発表した。

ネズミでは知られていた現象だが、内分泌や脳の構造が異なる人間でも起きるのかどうか、安全性をめぐる議論の焦点となっていた。今回の霊長類への影響を初確認したことで、いよいよヒトへの危険性が確実なものとなってきた。

日本ではビスフェノールAについては、ヒトに対する耐容一日摂取量は1993年(平成5年)に、50μg/kg体重/日と設定されている。今回サルに投与した量は同じ50μg/kg体重/日であった。

ビスフェノールAとは何か?


ビスフェノールA (bisphenol A) は2つのフェノール部位を持つ芳香族化合物である。しばしば BPA と略称される。2当量のフェノールと1当量のアセトンの反応によって合成される。

歴史・用途
1891年にロシアの化学者ディアニン (A. P. Dianin) によって初めて合成された。1930年代には合成エストロゲン(女性ホルモン)の1つとして研究されていたが、当時ジエチルスチルベストロールがエストロゲンとして強い活性を持つことが明らかにされたため、ビスフェノールAが合成エストロゲンとして使われることはなかった。

樹脂原料としての利用
現在ではポリカーボネート製のプラスチックを製造する際のモノマーや、エポキシ樹脂の原料として利用されている。抗酸化剤、あるいは重合禁止剤としてポリ塩化ビニルの可塑剤に添加される。

ポリカーボネートの用途はサングラスやCDから水・食品の容器まで多くの日用品にわたり、壊れにくいため哺乳瓶にも使われている。歯科治療用の歯の詰め物や、缶詰の内側を被覆するエポキシ樹脂の中にも含まれている。

健康影響に関する研究
ポリカーボネートやエポキシ樹脂のようなビスフェノールAを原料とする種類の合成樹脂では、強力な洗剤で洗浄した場合や酸・高温の液体に接触させた場合にビスフェノールA成分が溶け出すことが知られている。アメリカ合衆国での調査では、ヒトからかなりの確率で検出された。

内分泌攪乱化学物質としての懸念
ビスフェノールAを摂取するとエストロゲン受容体が活性化されて、エストロゲン自体に類似した生理作用を表す。1930年代に卵巣を除去したマウスにこの物質を投与する実験が行われ、作用が初めて証明された。更に他の動物やヒトのがん細胞での実験により、内分泌攪乱化学物質として作用するための最少量は 2–5 ppb とされている。よって精子数の減少や男性不妊などの原因になるとされている。(出典:Wikipedia)

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プラスチック製の食器などから溶け出す化学物質ビスフェノールA(BPA)によって、脳の神経組織の形成が妨げられることが、サルを使った米エール大などの実験で分かった。米科学アカデミー紀要電子版で発表した。

ネズミでは知られていた現象だが、内分泌や脳の構造が異なる人間でも起きるのかどうか、安全性をめぐる議論の焦点となっていた。

異常が現れたのは、記憶や学習をつかさどる海馬などの、「スパイン」とよばれる構造。体内のホルモン「エストラジオール」の働きで形成が促進され、神経細胞同士の信号のやり取りに重要な役割を果たす。ところが、アフリカミドリザルにBPAを4週間与え続けた結果、エストラジオールの働きが妨げられ、領域によってはスパインの数が半分以下に減少した。

霊長類への影響を初確認したことで、研究チームは「うつ病などの気分障害にもつながる可能性があり、医療機器や食器などへのBPA使用について懸念が増した」と指摘している。

実験では、アフリカミドリザルの背中にポンプを埋め込み、1日に体重1キロ当たり50マイクロ・グラムのBPAを体内へ送り込んだ。日本など世界各国で、同じ量のBPAが、毎日摂取しても問題がない基準値とされている。(2008年9月6日 読売新聞)

参考HP アイラブサイエンス「環境ホルモン”ビスフェノールA”はやっぱり危険?」 

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