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IUCN2008年版レッドリスト発表
IUCNとは国際自然保護連合(International Union for Conservation of Nature and Natural Resources)のことで、1948年に創設された、国際的な自然保護団体である。国家、政府機関、NGOなどを会員とする。本部はスイスのグランにある。日本は1978年に環境庁が日本の政府機関として初めて加盟、1995年に国家会員として加盟した。また、日本国内の18団体(NGOなど)が加盟している。

スペインで開催されている、IUCN主催の世界自然保護会議において、2008年版のIUCNのレッドリスト「絶滅のおそれのある野生生物種」が発表された。この最新版のレッドリストには、絶滅のおそれの高い種として記載された世界の動植物などは、1万6,928種にものぼる。この数は前回の2007年度版よりも、622種増加している。

哺乳類の絶滅危惧種
今回、そのうちの哺乳類について重点的に調査したところ、世界の陸や海に生息する哺乳類の4分の1が絶滅の危機にあることがわかった。

調査には国際環境NGOコンサベーション・インターナショナルなど130カ国、1800人以上の研究者が参加した。世界にいるとされる5487種の哺乳類のうち、調査データ不足の836種を除く4651種を分析した。

1500年からこれまでに76種が絶滅し、シロオリックスなど2種が野生で生息が確認されていない。絶滅の危機にあるのは1141種に上り、このうち特に188種が絶滅寸前だった。スペインとポルトガルの高地で百数十頭しか確認されていないイベリアオオヤマネコや、中国・長江などに生息するヨウスコウカワイルカなど29種はもはや手遅れの状態だという。

絶滅の原因と保護活動
絶滅する主な原因は各地の森林伐採や地域開発により、野生動物が生息できる環境が減少していること、乱獲、混獲などで数が減っていること、環境汚染の影響を受けていることなどがあげられる。この結果は、10日付の米科学誌サイエンスに論文が掲載される。

今回、新たに個体数の減少が確認され絶滅危惧種に指定された動物は何だろうか?

タスマニアデビル、スナドリネコ、カスピカイアザラシがEN(絶滅危惧種=絶滅危惧1B類)に指定、キューバワニがCR(近絶滅種=絶滅危惧1A類)に指定されたのが、その一例である。

一方保護活動の成功した例としては、日本のアホウドリトキ、コウノトリなどがある。世界では、北米の大平原に生息していたクロアシイタチ、モンゴルの家畜ウマの原種モウコノウマ、アフリカのアフリカゾウなどは増加している。しかし、楽観は許されない状況だ。

タスマニアデビル


タスマニアデビル(Sarcophilus harrisii)は、哺乳綱フクロネコ目フクロネコ科タスマニアデビル属に分類される現生で世界最大の肉食有袋類。別名、フクロアナグマとも。

現在はタスマニア島のみに生息するが、古くはオーストラリア大陸にも生息していたことが化石により判明しており、同大陸ではヨーロッパ人到達以前の14世紀終わり頃に絶滅した。 オーストラリア大陸での絶滅はフクロオオカミと同様に、人類がもたらしたイヌが野生化したディンゴの影響があると思われる。

スナドリネコ


スナドリネコ(漁猫、学名:Prionailurus viverrinus、英語名:Fishing cat)は、食肉目(ネコ目)- ネコ亜目- ネコ科- ベンガルヤマネコ属(genus Prionailurus)中の1種に分類される比較的小型の哺乳類。あるいは異説でネコ属(genus Felis)中の1種ともされ、その場合の学名は Felis viverrina である。

ネコ科動物にあって特筆すべき魚食動物である。指にはわずかながら水掻きがあり、若干の水生への適応が認められる。泳ぎが上手く、カエルやザリガニ、魚類、貝などを捕って食べる。 また、陸上でもネズミ類を捕食する。汚染、干拓、人間の移住などによってスナドリネコの住処となる沼沢地が減るにしたがって、個体数が減少している。

カスピカイアザラシ


カスピカイアザラシ(Caspian Seal)はネコ目(食肉目)アシカ亜目(鰭脚亜目) アザラシ科で、カスピ海だけに住むアザラシの仲間。

陸地に囲まれた塩水のカスピ海でどうしてアザラシが孤立したのか?という研究も行われている。体長は大体1.5m程度、オスがメスよりも大きい。妊娠期間は11ヶ月、5kg程度の子供が生まれ、性的成熟はメスが5年、オスが6〜7年。神経質なため飼育が難しく、国内では鴨川シーワールドだけが飼育している。

キューバワニ


キューバワニ(Crocodylus rhombifer)はワニ目、クロコダイル科、キューバの一部の沼と島に棲息する。

かつてはカリブ海全域でみられたとされるが現在はキューバの一部でのみ確認される絶滅危惧種。比較的小型のワニで通常2mを少し超える程度。尾の力で飛び上がり水辺の枝にいる小動物を獲る事が知られている。小動物、小魚、甲殻類、昆虫類、貝類を食べる。

関連するニュース
絶滅の恐れある野生生物新たに622種


絶滅の恐れのある野生生物種が1年間で新たに622種増えたことが、バルセロナで開かれている国際自然保護連合(IUCN)の総会「世界自然保護会議」で報告された。

IUCNの2008年版レッドリスト「絶滅のおそれのある野生生物種」によると、絶滅の恐れが高い順からCR(近絶滅種=絶滅危惧1A類)、EN(絶滅危惧種=絶滅危惧1B類)、VU(危急種=絶滅危惧2類)に含まれた野生生物は、合計で1万6,928種。前回の2007年度版よりも、622種増加している。

オーストラリアのタスマニア島にのみ生息する有袋類タスマニアデビルは、VUよりも危険度が低いLR(準危急種)だったのが、VUを飛び越してEN(絶滅危惧種=絶滅危惧1B類)に入れられた。手厚い保護活動によって絶滅を免れてきたものの、顔に悪性腫瘍(しゅよう)ができる伝染病によって、個体数がこの10年で6割も減少したと見られている。

東南アジアの沿岸部や大河にすむイラワジイルカも、ダム開発や森林伐採、漁獲や混獲などの深刻な被害により、今回初めてVU(危急種=絶滅危惧2類)に掲載された。

このほか、熱帯アジアの沼沢地や森にすむスナドリネコや、カスピ海に生息するカスピカイアザラシなどが、それぞれVUからEN(絶滅危惧種=絶滅危惧1B類)に、乱獲によって減少したキューバワニもENから絶滅寸前のCR(近絶滅種=絶滅危惧1A類)にランクが上がった。

一方、いったん絶滅した(EW=野生絶滅種)と判定されたものの、保護活動の効果で、再び復活した例も報告された。米国の大平原に生息していたクロアシイタチは、米政府の20年に及ぶ人工繁殖活動と、綿密な再導入計画の結果、EWからCR(近絶滅種=絶滅危惧1A類)となり、野生種として再びリストアップされることになった。クロアシイタチは、獲物であるプレーリードッグが牧草地の害獣として駆除されたため、一度は野生から姿を消していた。

また、家畜ウマの原種といわれるモウコノウマも、保護回復活動の結果、野生復帰を果たしたとみなされ、クロアシイタチと同様、EWからCRに変わった。

主にアフリカ南部の国々で近年個体数が増加しているアフリカゾウも絶滅危機種から外れ、より危機の低いランクの「LR(準絶滅危惧種)」とされた。(サイエンスポータル編集ニュース 2008年10月7日)

参考HP WWFジャパン → http://www.wwf.or.jp/index.htm 
IUCN →  http://www.iucn.org/news_events/events/congress/index.cfm

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