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超伝導とは何だろう?
超伝導状態とはある物質の温度を下げていくと、ある温度以下で電気抵抗がゼロになり、電気が永遠に流れ続ける状態をいう。初めて超伝導が発見されたのは水銀である。水銀が4.7K(−268.3℃)で突然電気抵抗がゼロになることで発見された。

現在、高温で超伝導を起こす物質を探している状態だ。最近注目されたのは鉄ヒ素系超伝導物質である。それまでは銅酸化物系超伝導物質やY系超伝導物質がさかんに研究されていた。

研究者達は日々努力して、様々な化合物をつくっている。しかし、なかなか高温で超伝導を示す物質は見つからない。こういった化学的手法以外で超伝導を示す物質を見つける方法はないのだろうか?

トランジスタとは何だろう?
例えばハイポーラトランジスタでは、N型半導体とP型半導体を交互に接合したものに、外部から電圧をかけることで、それまで電流を流さなかった半導体に大量の電流を流すことができる。これにより電流の増幅が可能となった。

今回、東北大学の川崎雅司教授と岩佐義宏教授は、トランジスタ半導体としてチタン酸ストロンチウムを使い、これに電圧をかけることで、伝導キャリアとなる電子を誘起させ、温度を下げていくと大量の電流を流す超伝導になることを発見した。

これまで、トランジスタを使って、超伝導を起こすしくみは1960年代から行われてきた。しかし、超伝導を引き起こすには電界効果トランジスタを動作させるよりも何倍も大きな電子(キャリア濃度)が必要であり、それに必要な電界に耐えうる絶縁膜が存在しないため、電界効果による超伝導発現は夢に終わっていた。

今回の研究では、電気二重層トランジスタという新しいデバイス構造を用いることで、完全な絶縁体から超伝導への制御を実現できた。画期的な研究成果である。

今回の場合チタン酸ストロンチウムを使い、超伝導が実現した温度は−272.85℃ということで、高温超伝導とはいえないが、材料をいろいろ変えて、高い超伝導転移温度を持つ新材料の実現が期待される。

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電圧かけると超電導になる材料発見


電圧をかける方法で電気を通さない物質を超電導体にすることに東北大学の研究グループが初めて成功した。

これまで新しい超電導材を探す試みは、電気を通さない物質に不純物を混ぜ合わせる化学的手法が主に試みられてきた。今回の成果は、超電導材料開発に全く新しい道を切り開く可能性を示したものとして注目されている。

川崎雅司・東北大学原子分子材料科学高等研究機構教授と岩佐義宏・同大学金属材料研究所教授は、パソコンや携帯機器で広く使われている絶縁性材料であるチタン酸ストロンチウムの単結晶を、ポリエチレンオキシドというプラスチックに過塩素酸カリウムを溶かした電解質に接触させた構造をしている。

これに電圧をかけたところ、本来、電気を通さないチタン酸ストロンチウム基板が電気を通すようになり、さらに温度を絶対温度0度に近い零下272.85℃(0.4K)まで下げると急激に電気抵抗が減少し、ゼロになる超電導状態が観察された。電圧をゼロに戻すと、再び電気を全く通さない絶縁体に戻った。

今回の研究は、チタン酸ストロンチウムという手に入りやすい材料で行われたが、この手法をいろいろな物質に試みることで、より高温で超電導になる新しい材料を探す新たな道が開けた、と研究者たちは言っている。

この研究成果は、科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業・CRESTの一環として得られた。(サイエンスポータル編集ニュース 2008年10月14日)

電界効果、電界効果トランジスタとは?
電界効果とは電場(電界)によって材料表面に電荷が集まる効果です。絶縁体を二つの電極ではさんで電圧をかけると、正の電圧がかかった電極にはプラスの電荷が、負の電圧がかかった電極にはマイナスの電荷が蓄積します。この電極の片方を半導体で置き換えると、蓄積した電荷は半導体の中を自由に動き回る伝導キャリアとして振る舞います。このようにして伝導キャリアを集める手法を電界効果と呼び、電圧によって半導体の伝導性を制御するトランジスタとして広く使われています。

伝導キャリアとは?
伝導キャリアには正の符号を持つ正孔(ホール)と負の符号を持つ電子があります。原子に束縛されず、結晶の中を自由に動き回ることができるために電気を流すことができます。

電気二重層とは?
電気二重層とは電気化学の用語で、電解質と電極の界面に出来るイオンの集まった部分のことです。液体の中にイオンが溶け込んだ電解質を二つの電極ではさんで電圧をかけると、電解液の中の陽イオンは負の電圧のかかった電極のほうへ移動します。電極表面まで動いてきた陽イオンはそれ以上動けないので、電極の直上にぎっしりと詰まった状態になります。一方、電極の中では陽イオンの量に対応した数のマイナスの電荷が集まり、全体として電荷中性の状態を保ちます。この陽イオンの層を電気二重層と呼び、非常に大きな電荷を蓄積できることからコンデンサー(電気二重層キャパシタ、スーパーキャパシタ)として使われています。 (出典:JTS)

参考HP JST「透明な絶縁体を電界効果で超伝導に」
 →
 http://www.jst.go.jp/pr/announce/20081013/index.html#1

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村上 雅人
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