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世界のエネルギー対策と日本の対策
ようやく石油の値段が下がった。それも急激に...。いったい今までの高騰は何だったのであろう?物価は上がり、株式は暴落し、経済は底がどこかを探っている状態である。いったい私たちを翻弄しているのは何であろうか。

とにかく、エネルギー資源の少ない日本としては、エネルギー対策は欠かせない。世界のエネルギー事情は、今後どのようになるであろうか。米国や欧米が力を注いでいるバイオ燃料は、食糧の高騰や森林伐採などの問題を招いた(テレビ朝日「地球危機2008」より)。

日本としては、どれか一つのエネルギー資源にしぼるのは危険だとして、様々なエネルギー資源の利用を目指している。東芝は原発の世界標準メーカー・ウェスチングハウス社を買収した。原発の利用拡大を見込んでのことである。

石炭ガス化複合発電(IGCC)もそのひとつ。石油にかたよらず。石炭も有効に利用しようという考えだ。

石炭火力発電の問題点
しかし、石炭は運搬が大変、SOx・NOxなど大気汚染物質の問題、CO2の排出量が天然ガスと比べると2倍近くになるなどの問題があり一時は使われていなかった。その後どうなったのだろう?

日本は高度成長時代には大気汚染が深刻な問題であったが、過去40年にわたり環境対策技術や効率的な燃焼方法を開発するなど環境負荷を低減する努力を行なってきた結果、排煙からSOxを99%、NOxを91%除去して“ほとんど空気”にして排出している。現在日本では、電気の約30%は石炭火力で作られている。

世界を見れば中国では80%、アメリカでは50%の発電に石炭が利用され、ヨーロッパでも多く利用されている。世界中の発電の40%を担っている石炭火力は、まさに“なくてはならない存在”である。

中国やインドなど環境対策が不十分なまま発展している国々で大気汚染が大きな問題となっており、日本の最先端技術を海外で活用していくことが大いに期待されている。

石炭ガス化複合発電(IGCC)とは?
しかし、環境省は同規模の天然ガス火力発電に比べて、排出量が2倍以上になる石炭火力発電を問題視しており、今後、CO2排出量を大幅削減する対策を併用しない新設計画には反対する方針を固めているという。

そこで期待されているのが、石炭ガス化複合発電(IGCC)である。

石炭ガス化とは石炭の主成分である炭素と水素、酸素を一酸化炭素(CO)と水素を主成分とする可燃性ガスに転換する技術。このガスを燃焼させタービンを回して発電する。

IGCC 2000時間連続運転成功!
2008年10月、東京電力など全国の電力会社10社の出資で設立した「クリーンコールパワー研究所」では、ガス化した石炭を燃やし発電する「石炭ガス化複合発電」(IGCC)の実証試験で、2000時間超の長時間連続運転に成功したと発表した。

石炭ガスは燃焼させてガスタービンを回すほか、回収した排熱で蒸気タービンを回し、発電する。また、酸素で石炭をガス化する施設は、米国など3カ国4カ所で約10年前から商用化されているが、空気でのガス化は世界初。

高効率発電によってCO2の排出量は、最新の石炭火力発電に比べて約15%減り燃料電池を組み合わせると合計約30%の削減になる見通しだ。2009年度まで運転最適化試験などを行い、5〜10年後の商用化を目指すという。

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石炭ガス化複合発電:2000時間超の連続運転に成功−いわきの研究所/福島


いわき市岩間町の「クリーンコールパワー研究所」社(大西博康社長)は、ガス化した石炭を燃やし発電する「石炭ガス化複合発電」(IGCC)の実証試験で、2000時間超の長時間連続運転に成功したと発表した。電力需要の高い6〜9月の3カ月間をノンストップで発電できることが証明され、「商用化に向け大きく前進した」としている。

同社は、東京電力など全国の電力会社10社の出資で設立。2001年度から研究を続け、昨年度から試験運転を始めた。総事業費は2001〜2009年度で計980億円(経産省補助を含む)。

同社によると、IGCCは粉砕した石炭と空気を反応させてガス化し、燃焼させてガスタービンを回すほか、回収した排熱で蒸気タービンを回し、発電する。酸素で石炭をガス化する施設は、米国など3カ国4カ所で約10年前から商用化されているが、空気でのガス化は世界初という。

実証機は1日1700トンの石炭を使い、出力は25万キロワット。実証段階の発電効率は42%と火力発電並みだが、実用段階では約2割の向上を目指す。CO2などの排出量を抑えるほか、従来より融点の低い石炭が適するため、利用可能な石炭を拡大できるという。

2009年度まで運転最適化試験などを行い、5〜10年後の商用化を目指す。大西社長は「試験運転開始から1年で長時間運転に成功し、日本の高い技術が証明された」と話した。(毎日新聞 2008年10月8日)

石炭ガス化複合発電(IGCC)とは何か? (出典:クリーンコールパワー研究所


石炭ガス化複合発電( IGCC : Integrated coal Gasification Combined Cycle)とは、石炭を高温高圧のガス化炉で可燃性ガスに転換し、そのガスを燃料としてガスタービンと蒸気タービンによる複合発電を行うシステムのことである。次にその特徴と利点を述べる。

発電効率の向上と地球温暖化対策
固体の石炭をガス化することで蒸気タービンにガスタービンを組み合わせた発電ができるため,従来の石炭火力の発電効率約42%に対して商用段階のIGCCでは48〜50%の発電効率が見込まれる。
これにより石油火力とほぼ同等のCO2排出量で石炭利用発電が可能となる。

適用炭種の拡大
資源量が最も豊富な石炭の利用技術であり,従来の石炭火力では利用が困難な灰融点の低い石炭に適合するため,わが国全体の利用炭種の拡大が可能となる。

大気環境特性
システムの高効率化により,発電電力量(kWh)あたりのSOx,NOx,ばいじんの排出量が低減できる。

スラグの有効利用
従来型石炭火力では,多量の石炭灰が発生しますが,IGCCではガラス状のスラグとして排出されるため容積がほぼ半減できる。
またスラグは,セメントの原材料や路盤材等としてリサイクルが可能。

その他特性
<温排水の低減>
IGCCはガスタービンを用いたコンバインドサイクル発電なので従来の石炭火力に比較して温排水量を約3割低減できる。
<用水使用量の低減>
従来の石炭火力の排煙脱硫装置は,燃料を燃やした後の排ガス段階でばい煙処理を行うので,多量の用水が必要であったが,IGCCは燃料ガス段階で処理を行うので用水使用量を大幅に低減できる。
 

海外炭が日本を救う
村井 了
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