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インフルエンザに流行の兆し ウイルスと戦う抗体
インフルエンザが流行の兆しを見せている。我が家でもインフルエンザの予防接種を受けに行った方が良さそうだという話になった。12月14日日テレの「サンデーNEXT」という番組(あさ8:00〜9:30放送)では、新型インフルエンザ対策としてダチョウの抗体をつくる会社「オーストリッチファーマ」の紹介をしていた。

ダチョウが何でインフルエンザに役立つのだろう?

我々の体には、体外から侵入してきたウイルスや細菌などの異物を撃退する、免疫という生体防御システムが備わっている。その中でウイルスや細菌の増殖を抑えてくれるのが抗体である。


 
予防接種では、あらかじめ無害化した病原菌を注射しておき、抗体を体につくらせておく。病原性のウイルスや細菌が感染しても、抗体ができていれば症状を弱めることができるしくみだ。こうした抗体の性質は、病気の予防だけでなく、最近はさまざまな用途で利用されている。
 
鶏卵の30倍もあるダチョウの卵で抗体生産
すでに、マウス、ウサギやニワトリに抗原を注射して、体内にできた抗体を、マウス、ウサギは血液から、ニワトリの場合は卵黄から精製するという方法で抗体生産が行われている。しかし、少量の血液や小さな卵から抗体を生産するのはコストが高くなり、大量生産も難しかった。
 
そこで、目をつけたのがダチョウの卵。京都府立大学大学院生命環境科学研究科の塚本康浩教授が、ダチョウの卵を活用して抗体を低コストで大量に生産できる新しい技術を開発した。
 
もともと、家禽の感染症の研究を続けていた塚本教授は、ニワトリに比べてダチョウ感染症に強く、鶏卵の25〜30倍もの大きさの卵を産むことに注目。ダチョウを活用すれば、大量の抗体を生産できるのではないかと考えた。
 
その狙いは当たった。抗体生産のために動物に注射する抗原は高額。当然、1個体で生産できる抗体が少量だと生産コストは高いものになってしまう。その点、ダチョウの場合、1個の卵黄から4gもの高純度の抗体を生産できる。飼育施設も複雑なものを建設する必要はないため、低コストで大量の抗体生産が可能になった。
 
通常のダチョウなら半年に40個。優良な個体なら半年で100個の卵を産むので、ダチョウ1羽で半年に160〜400gの抗体の生産が可能だ。これはウサギ800羽での抗体生産量に相当する。塚本教授の目論見通り、大きな卵のダチョウを活用することで抗体の生産性は大いに高まった。

大量生産だけじゃない!予想を上回るダチョウ抗体の性能
さらに、当初はダチョウの大きさに注目して、抗体を生産しようとしたが、ダチョウ抗体は予想以上の性能を持っていることが明らかになってきた。
 
同じ種の動物に作らせていても、抗体は個体ごとで微妙に違っている。そのため、従来の方法では製品間の品質にバラツキがあった。ダチョウ抗体の場合、1羽で大量に生産できるので品質のバラツキは極めて少なくなる。

増殖能力を不活性化した複数のインフルエンザウイルスで抗原を作り、高病原性鳥インフルエンザウイルスを中和させる実験を行ったところ、従来の抗体と比較してダチョウ抗体にはウイルスを無害化する高い能力があることが確かめられた。
 
さらに、ニワトリを用いた抗体と比べて、ダチョウ抗体は熱に対する耐性があることも明らかになった。高温でもウイルスに対する無害化活性を維持できれば、さまざまな加工ができ、これまでにない用途でのダチョウ抗体活用が期待できる。
 
インフルエンザウイルスを遮断する抗体マスクを製品化
ダチョウの高い抗体の能力が商品になると考えた塚本教授は、兵庫県内のダチョウ牧場に協力を要請、抗体の大量生産体制を整えた。また、JSTの「独創的シーズ展開事業大学発ベンチャー創出推進」に採択され、本格的に事業展開するための企業「オーストリッチファーマ」を設立。ダチョウ抗体の商品化に向けて乗り出した。

最近、このダチョウ抗体作製技術を用いて、高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N1)を中和する、低コストで高品質のH5N1感染防御用フィルターを開発。さらに、ヒトのインフルエンザウイルスH1N1、H3N2、B型の感染を不活性化しうる、ダチョウ抗体を表面に付着させた、マスク用フィルターを作製したところ、上記のウイルスのすべてが効率よく中和されることが検証された。

さらにニワトリを用いた感染実験により、H5N1ウイルスの空気飛沫感染がこのフィルターにより防御されることが実証された。このダチョウ抗体担持素材は、すでにこの秋、高病原性鳥インフルエンザウイルスのをはじめ、ほとんどすべてのインフルエンザに効果が期待できるマスクとして加工、販売されている。

広がるダチョウ抗体製品の可能性 
他にも、抗体の低コストかつ大量生産が可能になれば、従来の生産方法では使えなかった用途にも抗体の利用が期待できるようになる。例えば、ダチョウ抗体にはフリーズドライ製法でも活性を失わないという特性があることから、錠剤として製品化することも可能。
 
近年多発している、ノロウイルスによる食中毒は、糞便を介して感染が広がることが知られている。そのため、ノロウイルスに対する抗体をダチョウに作らせ、錠剤にしてトイレの貯水タンクに入れておけば、流すたびに抗体が便器に供給され、ノロウイルスの無害化が期待できる。介護施設などでの需要は大きい。

このように、ダチョウ抗体は耐久性に優れ、さまざまな製品に応用が可能である。

参考HP 科学技術振興機構報 第534号 → 
ダチョウ抗体を用いた鳥インフルエンザ防御用素材の開発でベンチャーを設立
JSTNews → ダチョウ抗体の可能性 

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