生物の細胞には2種類ある?

 生物の体は細胞からできている。細胞の種類は大きく分けると2種類ある。どんな細胞があるのだろう?

 正解は核を持たない原核細胞と、核を持つ真核細胞である。原核細胞には大腸菌や納豆菌などのバクテリアや、極限環境から多く見つかる古細菌が含まれるのに対し、ヒト、動物、植物、菌類などは全て真核細胞から成り立つ。

 真核細胞に見られる細胞内共生とは?

 真核細胞の中には、核、ミトコンドリア、葉緑体、ゴルジ体など、様々な細胞内小器官(オルガネラ)があるが、このうちミトコンドリアと葉緑体は、それぞれ十億年以上前にバクテリアが真核細胞の中に入り込み、細胞内共生を続けた結果、細胞の一部であるミトコンドリアや葉緑体になったものだと考えられている。

 その証拠としてミトコンドリアと葉緑体は核とは別にDNAを持っていることが分かっている。ミトコンドリアDNA、葉緑体DNAは極端に短く、大部分の遺伝子は核DNAに取り込まれたものと考えられている。だから細胞を支配するのは、核DNAの働きによるものだと思われてきた。

 細胞分裂を支配するのはどっち?

 ところが今回、千葉大学を中心にした研究グループは、ミトコンドリアDNAと葉緑体DNAが先に分裂して、MP(テトラピロール)という物質をつくるとこれがシグナルとなり、細胞核の分裂を促進する役割を担っていることを発見した。これまでの考え方を覆す発見として注目されている。

 研究グループはミトコンドリアや葉緑体が、まるで寄生体(パラサイト)のように、宿主細胞の増殖を支配しているように見えることから、このシグナルを「パラサイト・シグナル」と名付けた。

 この研究では、ミトコンドリアや葉緑体が細胞分裂の「パラサイト・シグナル」を出すことが分かったが、ミトコンドリアと葉緑体の分裂の「シグナル」はどこが出すのかはふれていない。順番としては核DNAからのシグナルがあり、ミトコンドリアや葉緑体が分裂、次にこの「パラサイト・シグナル」がはたらくとも考えられるが、いかがだろうか?

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細胞増殖は寄生体が支配


 植物などの細胞に含まれるミトコンドリアと葉緑体が、細胞核の分裂を支配する役割を担っていることを、千葉大学などの研究チームが突き止めた。これまでの考え方を覆す発見として注目される。

 植物を構成する細胞は真核細胞と呼ばれる。ミトコンドリアは元々、好気性バクテリアで、葉緑体は光合成バクテリアだったのが、10億年以上前に真核細胞の中に入り込み、共生するようになったと考えられている。

 ミトコンドリア、葉緑体とも祖先と思われるバクテリアに比べるとゲノム中に含まれる遺伝子が極端に少なく、長い間の進化の過程で多くの遺伝子を細胞核のゲノムに奪われたためと考えられている。これが、真核細胞にあっては、ミトコンドリア、葉緑体とも寄生体として細胞核のゲノムに支配される関係にあると見られる大きな理由となっていた。

 千葉大学大学院園芸学研究科の田中 寛 教授と小林 勇気・東京大学博士研究員、兼崎友 ・東京大学研究員らの研究グループは、田中 歩・北海道大学教授、黒岩常祥・立教大学教授らと協力し、最も原始的な真核細胞からなる藻類「シゾン」を研究材料に選び、細胞核とミトコンドリア、葉緑体の増殖がどのように関係しているかを調べた。

 この結果、まずミトコンドリアと葉緑体がゲノムを複製し、この際、合成されるテトラピロール合成中間体が伝達役となり、細胞核のゲノム複製が引き起こされることを突き止めた。研究チームは、寄生体(パラサイト)が宿主の増殖を支配するという意味で、テトラピロール合成中間体の役割を「パラサイト・シグナル」と名付けた。

 真核細胞は、植物以外の動物や菌類の体も構成している。ヒトの細胞は、ミトコンドリアだけで葉緑体は持っていない。しかし、葉緑体を持たない真核細胞においても、共生に由来するミトコンドリアからのシグナル伝達系が細胞増殖を制御することがあれば、今回の研究成果は医学生物学分野においても今後重要な意味を持つ可能性がある、と研究者たちは言っている。(サイエンスポータル 2009年1月8日)

参考HP Wikipedia「真核生物」「原核生物」・千葉大学プレスリリース
 → http://www.chiba-u.ac.jp/general/press/2008/20090106_para.pdf
 

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