今、何が問題になっているか?

 私たちのまわりに存在する環境問題。このブログでは、さまざまな環境問題を取り上げている。前回、もうすでに地球全体に広がっている、PCB、DDTなどの化学物質について述べた。これらの化学物質は環境ホルモンとも呼ばれている。

もちろん、環境ホルモン以外にも、土壌や河川、湖、海洋などは様々な物質で汚染され、たびたび問題を起こしてきた。最近は少しきれいになってきたとはいえ、土壌汚染、水質汚濁には今後も監視を続ける必要がある。

身近な問題としては「地球温暖化」「砂漠化」「オゾン層破壊」「大気汚染」「酸性雨」「土壌汚染」「水質汚濁」「ごみ問題」などがある。



 地球温暖化

 一番話題にのぼるのは地球温暖化であろう。地球の平均気温は1906年〜2005年の100年間で0.74℃(誤差は±0.18℃)上昇し、20世紀後半の上昇ペースが特に速く、地球の平均気温が上昇していることを示すデータが観測されている。

 地球温暖化は、人間の産業活動に伴って排出された温室効果ガスが主因となって引き起こされているとする説が主流である。「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)によって発行された「IPCC第4次評価報告書」によって、人為的な温室効果ガスが温暖化の原因である確率は「90%を超える」とされる。

「IPCC第4次評価報告書」の科学的知見によれば、2100年には平均気温が最良推定値で1.8〜4℃(最大推計6.4℃)、海面水位は平均推計で38.5cm(最大推計59cm)上昇すると予想されている。温室効果ガスの中では、特に二酸化炭素やメタンの影響が大きいという。IPCCはこの業績により2007年ノーベル平和賞を受賞している。


 砂漠化

 地球温暖化とともに問題となっているのが砂漠化である。砂漠化とは、植物に覆われた土地が不毛の地になっていく現象をいう。今日問題となっている砂漠化の多くは、森林伐採などの人類の活動が原因となって引き起こされたものである。

 昔は森林伐採により、土地が乾燥し砂漠化するといわれていたが、最近では地球温暖化との関連性が指摘されている。現在、アマゾンなどでは森林伐採により、CO2を吸収する熱帯雨林が減少、地球温暖化に拍車をかけているといわれる。また、地球温暖化によって、ある地域では集中豪雨や洪水が起き、違う場所では干ばつが起きて、砂漠化が進むことも問題になっている。


 オゾン層破壊

 オゾン層(オゾンそう)とは地球の大気中でオゾンの濃度が高い部分のことである。オゾンは、地上から約20〜50kmほどの成層圏に多く存在し、特に地上20〜25kmの高さで最も密度が高くなる。

 オゾンは、一酸化窒素、塩素原子などの存在によって分解される。これらは成層圏で自然にも発生するものであり、オゾンの生成と分解のバランスが保たれてきた。

 ところが近年、冷蔵庫、クーラーなどの冷媒や、プリント基板の洗浄剤として使用されてきたフロンなどの塩素を含む化学物質が大気中に大量に排出されたことで、成層圏で塩素原子が増加し、オゾン層の破壊が進んだ。

 その後、フロンガスなどの排出規制の効果で、1997年をピークに回復に転じたというNASAの報道がある。2006年5月、国立環境研究所の秋吉英治主任研究員らのグループは、南極上空のオゾンホールは2050年頃に消失するとの予測結果を発表した。しかし、フロンガス量は減少傾向にあるものの、40年以上も大気の中に留まるため、まだしばらくは大規模なオゾンホールが残る。2020年頃からオゾンホールが縮小し始め、2050年頃には1980年レベルまで回復するという。


 大気汚染

 大気汚染とは人間の活動によって、大気が有害物質で汚染され、人の健康(呼吸器に悪い影響を与える)や生活環境、動植物に悪影響が生じる状態のことである。光化学スモッグも大気汚染の一つである。

 大気汚染の原因となる主な物質は、NOx(窒素化合物)やSOx(硫黄酸化物)、粉塵(SPM:浮遊粒子状物質)や揮発性有機化合物(VOC)、ダイオキシンなど多岐にわたる。粉塵には、アスベストやスス、黄砂なども大気汚染物質に含まれる。

 発生源は、自動車などの排出ガス、工場などからの排煙、廃棄物の焼却排ガスなどである。交通の集中する大都市では自動車が主な原因の大気汚染が深刻な状況になっている。

 夏期晴れて暑いときに、光化学スモッグが発生することがある。1970年代、日本で起きた光化学スモッグとは違い、2000年以降は中国の汚染物質が偏西風に乗って日本まで流れてきており、最近発生する光化学スモッグは、中国からの汚染物質が原因とされている。

 酸性雨
 酸性雨とは、環境問題の一つとして問題視される現象で、大気汚染により降る酸性(厳密にはph5.6以下)の雨のことを指す。

 酸性雨の原因は化石燃料の燃焼や火山活動などにより発生する硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)、塩化水素(HCl)などである。これらが大気中の水や酸素と反応することによって硫酸や硝酸、塩酸などの強酸が生じ、雨を通常よりも強い酸性にする。

 日本における原因物質の発生源としては、産業活動に伴うものだけでなく火山活動(三宅島、桜島)等も考えられている。また、東アジアから、偏西風に乗ってかなり広域に拡散・移動してくるものもあり、特に日本海側では観測される。

 国立環境研究所の調査では日本で観測されるSOxのうち49%が中国起源のものとされ、続いて日本21%、火山13%、朝鮮12%とされている。


 土壌汚染

 土壌汚染とは、土壌中に重金属、有機溶剤、農薬、油などの物質が、自然環境や人の健康・生活へ影響がある程度に含まれている状態をいう。化学物質が事故などにより土壌に浸透したり、不法に土壌へ捨てられるなどして土壌の持つ浄化能力を超えて過剰に土壌へ入ると、土壌が持つ諸機能を損ない、地下水汚染を始めとした環境汚染を引き起こすことになる。

 最近では、築地市場を東京ガスの豊洲工場跡地に移転する計画が問題になっている。土壌中には環境基準を超えるベンゼン・シアン・鉛・ヒ素・六価クロム・水銀等の有害物質が残存している。この原因は、現在、主流の天然ガスと違い、以前は石炭からの蒸留によりガスを製造しており、この際の廃棄物であるタールに含まれる、ベンゼンや重金属類、製造工程にて用いられる化学物質により、土壌や地下水汚染が発生したものと考えられる。


 水質汚濁

 水質汚濁とは、公共用水域(河川・湖沼・港湾・沿岸海域など)の水の状態が、主に人の活動(工場や事業場などにおける産業活動や、家庭での日常生活ほかすべて)によって損なわれる事や、その状態を指す。

 原因としては自然現象の一部(火山噴火や地滑り、地質条件、野生動物の活動など)も含まれるが、特に問題視されるのは、生活および産業活動に伴って発生する廃棄物や排出水による汚染・汚濁など、対策が可能なものである。

 過去に起きた事例としては、1950年代から有明海では有機水銀汚染による水俣病、1960年代に神岡鉱山下流でカドミウム汚染によるイタイイタイ病などが発生した。

 最近でも、生活排水に含まれる、窒素、リンといった栄養塩類が過剰に存在する富栄養化により、藻類やプランクトンが爆発的に繁殖し生物多様性が失われ、この結果、生態系が不安定となり魚介類が死滅するなどの被害が起きている。

 閉鎖性海域では、多量に繁殖したプランクトン(主に夜光虫)そのものによる赤潮や、プランクトンの死滅が招いた酸欠水塊により、硫化水素が発生、これにより青潮(正体は硫黄)が発生、大規模な漁業被害が現在でも発生している。


 ごみ問題

 ごみ問題とは、生活や産業において発生したごみ、廃棄物(一般廃棄物、産業廃棄物を含む)に関する問題のこと。

 最終処分場の問題: まず人が生活していく上で、ごみ(廃棄物)は必ず発生するものであり、これらを焼却処理した場合でも最終的には焼却灰が発生し、これらを埋立する場所(最終処分場)が必要となる。

 最終処分場へ運び込まれる廃棄物には、重金属やダイオキシン類などの有害物質を含むものがあり、有害物質が一般環境中に拡散する問題が各地で発生している。


 ダイオキシンの問題: 塩素を含む廃棄物の焼却はダイオキシンが発生することが問題のいなっている。これに対しては廃棄物を高温で焼却する対策による、新型焼却炉の新設も進んでいる。


 建築廃棄物の問題: 建築廃材の中で特に問題になっているのが石膏ボードである。これが不法投棄され、そこから硫化水素が発生し、これを吸引した人8人が頭痛を訴え病院で手当を受けた。「松江市東横イン」の事件があった。


 不法投棄の問題: 不法投棄された「産業廃棄物」から、硫化水素、ダイオキシン、環境ホルモン、ヒ素、カドミウム、PCBなど、代表的な有害物質が検出されており、近くに住む住民にとっては重大な問題になっている。香川県豊島の問題が有名。


参考HP Wikipedia「地球温暖化」「砂漠化」「大気汚染」「土壌汚染」「水質汚濁」「ごみ問題」・国立環境研究所 → http://www.nies.go.jp/index-j.html 


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