ケシの花というと...?

 ケシというとアヘンの原料である。ケシの開花後、10〜20日経った未熟果(カプセル)に切り込みを入れるなどすると乳液状の物質が穫れ、これを乾燥させると黒い粘土状の固形物になる。これがアヘンである。アヘンは約10%ほどのモルヒネを含む。

 アヘンの産地はどこだろう?

 以前は、東南アジアの「黄金の三角地帯」で多く栽培されていたが、抑制対策が功を奏してその地帯での栽培は大きく減少した。2007年の国連の報告書によれば、アヘンの82%はアフガニスタンで栽培されている。



 ケシは食べられる?

 日本ではアヘン法で栽培が禁止されているケシであるが、ケシの実や種を私たちは食べていると聞くと驚く。いったいどの食品に使われるのだろうか?

 正解はアンパンやケーキ、七味唐辛子などに使われる。

栽培品種にもよるが、種子にはモルヒネが含まれていないか、含まれていてもごく微量である。長年にわたって食用に供されてきた歴史があるため、普通どの国においてもポピーシードは規制対象となっていない。

 日本においても「アヘン法」では種子は取り締りの対象から外されており、ゆえに所持していても法的には問題にならない。最近問題になった、大麻の種も自由に取引できる。しかし、これらの種は発芽すると、罪になるので注意が必要だ。


 ヒナゲシの花咲く季節

 さて、桜が散ってから、急に暖かくなり、様々な花が咲き乱れる季節になった。我が家では、窓から眺める、隣の公園の八重桜が美しい。また道沿いにはハナミズキの街路樹が植えてあり、白く美しい花を咲かせている。

 また、道路沿いのあしもとにはオレンジ色のヒナゲシの花も咲き出した。もう咲くのかと思って調べると、昨年の秋に発芽したものが、春になると咲くのだという。本来は発芽しても冬の寒さで、枯れてしまい、越冬できないはずだが、近年の温暖化の影響で春に開花するようになった。


 外来種ナガミヒナゲシ

 このヒナゲシ、綺麗なので誰かが種をまいたのだと思っていたのだが、何と外来種が野生化して広がったものだという。このヒナゲシはナガミヒナゲシといって、地中海原産である。ただし、モルヒネは含まれていないので安心だ。

ナガミヒナゲシは1961年、国内では初めて東京都世田谷区で報告された。1990年代後半以降になると、本州の内陸部や日本海側へも生育地を広げた。花は美しいが、その急増ぶりから在来種との競合、農地での雑草化などが心配されている。

 これだけ全国に広がったのは、自動車に運ばれたためらしい。何しろケシ(芥子)粒というくらい、種は小さく軽い。また、自動車の通る道路沿いに群生しているのは、コンクリートが溶けてアルカリ性になった土壌が、生育環境に合っているのだそうだ。

 細く可憐に見える花が、実はたくましく、したたかな花であったとは意外な話だ。 


 外来ヒナゲシ、暖冬と車社会で分布拡大 東農大調査

 ナガミヒナゲシの赤い花が都市部の道ばたや空き地で目立つ季節になった。この地中海地方原産の外来植物が国内で分布を広げたのは、暖かな冬と車社会のおかげだった――。こうした研究結果を、東京農業大の根本正之教授(応用植物生態学、雑草学)らのグループがまとめた。

 ナガミヒナゲシは1961年、国内では初めて東京都世田谷区で報告された。1990年代後半以降になると、本州の内陸部や日本海側へも生育地を広げた。花は美しいが、その急増ぶりから在来種との競合、農地での雑草化などが心配されている。

この研究で博士号を取った吉田光司さん(28)によると、発芽するのは秋と翌春。秋発芽の個体は低温にさらされると枯れるが、東京都内のように冬が暖かくなった地域では越冬可能で、春になると急速に育ち、多くの種子をつける。

春に発芽した個体も開花するが、個体の大きさや種子の数は越冬個体より少なかった。このため、温暖化もしくは都市の高温化で「越冬できる地域が広がって種子も増え、分布が広がった」とみている。

都市部では幹線道路沿いに目立って増えている。東京都稲城市などで道路や駐車場との関係も調べた。ナガミヒナゲシの多い駐車場は幹線道路から近い傾向があり、落ちた種子が車に付いて運ばれたとみられる。

根本教授は「種子ができる前に道路沿いの個体を除くことが拡大防止に有効だろう」と話している。(asahi.com 2009年4月18日) 

参考HP Wikipedia「ナガミヒナ ゲシ」「ヒナゲシ」「ケシ」「アヘン」 


移入・外来・侵入種―生物多様性を脅かすもの
川道 美枝子,堂本 暁子,岩槻 邦男
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