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蛍光とは何だろう?
蛍光とは、X線や紫外線、可視光線が照射されてそのエネルギーを吸収することで電子が励起し、それが基底状態に戻る際に余分なエネルギーを電磁波として放出するもの。

蛍石に蛍光ペンの光を当てると、美しい蛍光を発する。ノーベル賞で話題になった、オワンクラゲは、エクオリン(Aequorin)というタンパク質が発光して、そのエネルギーをもとに緑色蛍光タンパク質(GFP)が光るのも蛍光である。

GFPは238個のアミノ酸から成り、分子量約27kDaのタンパク質。 化学的に非常に安定した構造を持ち、pH5〜12の間で蛍光が見られる。凍結融解したものや70℃程度に加熱したものでも蛍光する。

さて、蛍光タンパク質にはどんなものがあるのだろうか?

蛍光タンパク質の開発
1990年代に緑色蛍光タンパク質(GFP)の遺伝子がわかってから、遺伝子操作により数多くの蛍光色変異体が開発された。その色は緑よりも長波長の黄、橙、赤色の蛍光を発するものであった。一方、短波長の青や紫色の蛍光を発する蛍光タンパク質は未だに種類が少なく、多くの研究者から長年その開発が求められていた。

2009年4月7日、北海道大学電子科学研究所ナノシステム生理学研究分野の永井健治教授らは既存の蛍光タンパク質の中で最も波長の短い蛍光を発する群青色蛍光タンパク質シリウス(Sirius)の開発に成功した。

蛍光タンパク質の多くは、GFP を構成するアミノ酸の一部を他のアミノ酸に置換してつくられる。また、サンゴやイソギンチャクなど、オワンクラゲ以外のたくさんの生物種から新しい蛍光タンパク質が発見されてきた。

研究グループはシアン色の蛍光を発するGFP の変異体に着目し、アミノ酸の一つである、66番目のトリプトファンをフェニルアラニンに置換した。この変異体では全く蛍光が観察されなかったが、蛍光の明るさが改善されることが期待される場所にアミノ酸の置換を導入したところ、紫外光を吸収し、群青色の光を発する蛍光タンパク質を得ることができた(図1)。

蛍光タンパク質「Sirius」
さらに、このタンパク質全体にランダムにアミノ酸変異を導入することによって、蛍光の明るさを元の80倍まで改善させることに成功した。この明るさを改善した群青色蛍光タンパク質を、恒星の中で最も明るい青色の星にちなんで“Sirius(シリウス)”と命名した。

こうして得られた、Siriusの吸収極大は355nm、蛍光極大は424nm であり、青色蛍光タンパク質BFP の380nm および450nm よりも、さらに短波長側に移行している。これは、1994年にBFP が報告されてから、実に15年振りに蛍光の最短波長記録を更新したことになる。蛍光色のバリエーションが増えることにより、従来では不可能だった細胞内の複数の部位やタンパク質を同時にかつ鮮明に可視化することができるようになる(図2)。

Sirius は、光で励起した際に、非常に褪色しにくい(BFP比で約60倍安定)という特性を持っている。さらにSirius の驚くべき特徴は、pH感受性が皆無ということである。一般的に使われている蛍光タンパク質EGFP は、生理的条件であるpH7を下回る環境下では、急激に蛍光の明るさが減衰してしまう。一方でSiriusは、強酸性下(pH3以下)においても、蛍光の明るさが全く変わらない蛍光タンパク質であることが分かった。

さらに、Sirius は太陽光の紫外線の約90%を占めると言われるUV-A の波長の光を最も多く吸収し、これを生体組織に無害な可視光の蛍光に変換することから、紫外線による肌へのダメージを防ぐ、全く新しい日焼け止めとして用いることができるかもしれません。この他、群青色に発光する絹糸や園芸植物などの開発など様々な産業応用が期待される。

参考HP Wikipedia「蛍光」「GFP」・
生理学研究所「
世界最短波長の蛍光を発する群青色蛍光タンパク質(Sirius) 

光る遺伝子 オワンクラゲと緑色蛍光タンパク質GFP
Marc Zimmer
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