科学大好き!アイラブサイエンス!このブログでは、最新科学ニュースをくわしく調べ、やさしく解説!みるみる科学がわかります。
まだまだ謎の多い光合成
植物はどうやって生きているのであろうか? 

もちろん、光合成により、自ら栄養分をつくり出しているからである。現在では小学校で光合成を学んでいるが、150年前にはまだ、光合成は発見されていなかった。

1862年、ドイツの植物生理学者ユリウス・フォン・ザックスは、葉緑体を顕微鏡で見たときに現れる白い粒は取り込まれた二酸化炭素に関係があるのではないかと考えた。彼は当時既に知られていたヨウ素デンプン反応を参考に、日光に十分当てた葉にヨウ素液をつけた。すると葉は紫色に変色した。この結果、植物はデンプンを作り、それを使って生きていることを発見した。

では、葉緑体のしくみはどうなっているのだろうか?

1915年、ドイツの化学者リヒャルト・ヴィルシュテッターは、葉緑体に含まれる植物色素「クロロフィル」や他の植物色素の研究し、ノーベル化学賞を受賞した。受賞理由は「植物色素物質に関する研究」であった。彼は複雑なクロロフィルの構造を明らかにし、ヘモグロビンの色素であるヘムの構造とにていることを示した。

光合成の暗反応「カルビン・ベンソン回路」
それでは光合成では、どうやってデンプンがつくられるのだろうか?

1950年、米国の化学者メルヴィン・カルヴィンは、アダム・ベンソンとともにカルビン・ベンソン回路を発見し、二酸化炭素からデンプンがつくられる過程を明らかにした。この功績により、1961年にノーベル化学賞を受賞した。

カルビン・ベンソン回路は暗反応とも呼ばれる過程で、二酸化炭素の固定を行なう炭酸固定反応である。カルビン・ベンソン回路は10以上の酵素からなる複雑な回路であるが、放射性同位体である炭素14をトレーサーとして用いることにより、これを解明した。

こうして今日、くわしく光合成の働きがわかってきたが、もちろんまだまだわかっていないことも多い。その一つが、クロロフィルが葉緑体の中で、どのような集合体を形成しているかである。このクロロフィルの集合体は、単独のクロロフィル分子より、少ない光で効率的に光合成を行うことが知られていた。

バクテリオクロロフィルのクロロソーム解明
今回、物質・材料研究機構(理事長:岸 輝雄)ナノ計測センターの清水 禎グループリーダーらの共同研究チームは、炭素とマグネシウムの固体NMR等の手法を用いて、葉緑素の一種であるバクテリオクロロフィル c と呼ばれる分子が実際の生体内でどのような構造になっているのかについて、その詳細を解明することに成功した。

バクテリオクロロフィルは、およそ百個規模の分子が寄り集まってクロロソームと呼ばれる積層構造をしていることまでは知られていたが、6種類提案されていた積層構造のうち一種類に特定されることを実験結果から示すことができた。

更に、分子同士を結合させて積層構造を作る原因が、水分子とマグネシウムとの化学結合であることも示すことができた。これらの発見は世界でも初めてである。

バクテリオクロロフィルを太陽電池に応用
緑色光合成細菌は、光の少ないところでも成育できる藍藻類などのことである。これに含まれる葉緑体は、集光機能が極めて効率的にできている。

この働きは、バクテリオクロロフィルの集合体クロロソームの積層構造にあることがわかっていた。この機能の全容を解明できれば、日光が十分でない環境でも効率良く働く太陽電池に応用する可能性がある。

また、生体物質で重要な役割を果たしているマグネシウムを、NMRで直接観測する技術を手に入れたことは、生体機能の核心に迫る上で極めて重要なことである。
 

参考HP Wikipedia「光合成」「光合成細菌」「カルビン・ベンソン回路」
物質・材料研究機構「
光合成細菌が持つ集光機能物質の構造を世界で初めて解明  

光合成事典

学会出版センター

このアイテムの詳細を見る
Newton (ニュートン) 2008年 04月号 [雑誌]

ニュートンプレス

このアイテムの詳細を見る

ブログランキング・にほんブログ村へ  ランキング ←One Click please