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記憶のしくみ
私たちの記憶はどのように形成されるのであろう?

神経細胞にはシナプスと呼ばれる神経回路のスイッチ素子が1細胞当たり数万個もあり、他の神経細胞と情報のやり取りをしている。

一つひとつの神経細胞は多くの記憶に関わっているが、記憶ごとに異なるシナプスを使い分けることで、個々の記憶を混同せずに正確に保存していると考えられている。

長期間保存される記憶では、その記憶に対応する特定のシナプスに細胞体から記憶関連たんぱく質が配達されることでそのシナプスの働きの変化が持続し、記憶が正しく長期間保存されると考えられている。

シナプスタグ仮説
ところが、1細胞あたり数万個存在するシナプスのうち、どのような仕組みで特定のシナプスのみに記憶関連たんぱく質を配達し、働かせているのかは分からなかった。これを説明するためにシナプスタグ仮説が提唱されていたが、タグの実体が不明のうえ、本当にそういう仕組みがあるのか実証されていなかった。

三菱化学生命科学研究所の井ノ口 馨グループリーダーらは、ラットを使った研究で、記憶関連たんぱく質が神経細胞のスイッチ素子へ正しく配達されるメカニズムを突き止め、記憶が正確に安定して保存される仕組みを発見した。

本研究グループは、Vesl-1Sという記憶関連たんぱく質に緑色蛍光たんぱく質(GFP)を融合させることで、神経細胞内における記憶関連たんぱく質の局在を可視化した。この分子の挙動を解析した結果、記憶関連たんぱく質は細胞内全てに配達された後、その時に使用されていたシナプスだけに取り込まれることが明らかになり、仮説が正しいことが実証された。

さらに、シナプスタグの実体は、シナプス後部のスパインの入り口にあるゲートの開閉であることを発見した。

期待される応用例
シナプスタグに生じる異常は、トラウマ記憶をそれとは無関係な種々の状況と結びつけてしまうPTSDの症状に関わると想定されるので、シナプスタグ機構を制御することによるPTSD治療法の開発への展開が期待される。

異なる出来事の複数の特徴を1つにまとめて覚えることにより連合記憶ができるが、シナプスタグ機構は連合記憶の保持に必要と思われます。統合失調症などの精神疾患の症状には、記憶の連合が不正確になり事実と異なる組み合わせで記憶をつなぎ合わせることが原因となっていると想定されるものもあるため、シナプスタグ機構を制御する薬を開発することにより、統合失調症などの改善薬になる可能性がある。

脳卒中などで脳細胞が損傷を受けた時、生き残った他の脳部位や再生した末梢に連絡する脳部位が機能を代替することが知られている。この時、リハビリテーションで体を動かすことにより新規の機能部位でシナプス伝達の改善が起きると考えられている。シナプスタグ機構を適切に制御する方法の開発が、リハビリテーションの効率を改善するのに役立つ可能性がある。

参考HP 科学技術振興機構 「記憶を正確に保存する神経細胞のしくみ 

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