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新固体電解質の発見
電池の液もれは、いやなものである。古くなった電池をそのままにしておくと液がもれだし、手を汚すばかりでな、まわりの金属を、赤く錆びさせ、ボロボロにすることもある。

最近の電池は液もれが少なくなったが、危険性はいつもつきまとう。あの原因は電池の中に入っている電解質溶液。ボタン電池や乾電池など、市販されている電池のほとんどに、液体状態の電解質が用いられている。もし、液体でなく固体の電解質があれば、こんなことは起きないのだが、そもそも固体の電解質って存在するのだろうか?

今回、九州大学、科学技術振興機構、理化学研究所、高輝度光科学研究センターが共同で、室温でも非常に高いイオン伝導性を持ち、大気下で安定かつ耐熱性の高い固体電解質の開発に世界で初めて成功した。このすばらしい、新固体電解質の発見により、これまでにない安定で高性能な電池の実現が可能だという。

そもそも電解質とは何か?
電解質とは溶媒中に溶解して、電気を通す物質のことである。このとき電解質は陽イオンと陰イオンに電離する。これに対し、溶媒中に溶解しても電離しない物質を非電解質という。

この結果、電解質溶液は高い電圧(数ボルト程度)をかけると電気分解することができる。「電解質」という呼び名はこのことから付けられた。

一般的には電解質は塩酸のような「酸」、水酸化ナトリウムのような「塩基」、または塩化ナトリウムのような「塩」のような物質である。さらに、高温低圧の条件下においては、気体も電解質として振舞うことが知られていた。気体の場合はイオンとは呼ばず、プラズマと呼ぶ。

固体電解質は存在するか?
このように液体、気体の状態でも電気を通す電解質は存在する。それでは固体のままでイオンにより、電気を通すものはあるのだろうか?

固体電解質は、イオン結合性の高い物質で、外部から加えられた電場によってイオンを移動させることができる固体である。金属や半導体では、主に電子の移動によって電流が流れるが、固体電解質は主にイオンの移動によって電流が流れる。

移動する荷電粒子がイオンであるという点では電解質の溶液と同様であるが、媒体が固体であるためイオンの移動速度が小さく、低温での導電性は低い。固体の電解質にはどんなものがあるのだろうか?

固体電解質としてはジルコニア(化学式:ZrO2)が古くから使われている。ジルコニアを介して、酸素イオンが高分圧側から低分圧側へ移動する。酸素イオンはマイナスに帯電していることから、高分圧側がカソード、低分圧側がアノードとなる。この性質によって酸素センサーあるいは燃料電池を構成することができる。

超イオン伝導体とは何か?
ヨウ化銀 (AgI)やヨウ化銅 (CuI)も固体電解質である。固体でありながら、溶液並みのイオン伝導度を示すので、「超イオン伝導体」として古くから知られている。

しかし、ヨウ化銀(AgI) の超イオン伝導性は、147℃以上でのみ実現するため、例えば、室温では伝導度が4桁以上低くなってしまうことが実用化の課題とされてきた。

また、これまでの超イオン伝導性物質は、大気中において不安定であることや(RbAg4I5)、加熱によって超イオン伝導性が失われる(AgI-Ag2O-B2O3)などの課題があり、実用化には至っていなかった。

ナノ粒子の超イオン伝導体
今回の研究では、硝酸銀(AgNO3)水溶液、ヨウ化ナトリウム(NaI)水溶液及び銀イオン伝導性の有機ポリマーであるPVP(poly-N-vinyl-2-pyrrolidone)の水溶液を、常温常圧下で混合、ろ過、乾燥するといった非常に簡便な方法で、AgI ナノ粒子を合成することに成功した。また、溶液の濃度や混合手順を変えることで、約10 nm から40 nm の範囲で、異なるサイズのナノ粒子を作り分けることにも成功した。

これらのナノ粒子に関して、超イオン伝導状態(α相)とイオン伝導性の低い通常状態(β相、γ相)との間の相転移挙動を調べるため、「SPring-8」 のBL02B2 ビームラインにおける高輝度X線回折測定などにより構造変化を詳細に調べたところ、α相からβ/γ相への相転移温度が、ナノ粒子のサイズが小さくなるにつれ、転移がより低温で起こること、を発見した。

特に、10 nm 程度のナノ粒子においては、転移開始温度が40℃と、従来のAgI よりも100℃以上低く、超イオン伝導状態が室温付近まで保たれることを発見。この転移温度は、これまで報告されているAgI 関連物質では最も低い温度。

さらに、10 nm のナノ粒子に関して、冷却・加熱を行いながら、イオン伝導度測定を行った。その結果、通常状態に変化した後の4℃という低い温度においても、従来のAgI よりも10 万倍以上高いイオン伝導性を示すことを発見した。これは、AgI に限らず、2つの異なる元素からなる物質群の中では最も高いイオン伝導度の値。

今回の発見は電池の液もれをなくすだけでなく、燃料電池、電気自動車など幅広い分野での応用が可能な素晴らしい発見である。 

参考HP Wikipedia「電解質」・九州大学プレスリリース「バッテリー電解質の性能を世界で初めて固体かつ室温で実現

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