熱機関とは何か?

 熱機関とは、燃料の化学的エネルギーを燃焼という過程を通して機械的エネルギーに変換する原動機・エンジン。内燃機関と外燃機関に分けられる。

 内燃機関は、ガソリンエンジンなどのように燃焼ガスで直接ピストンを押したり、タービンを回転させるなどの仕事をするものである。熱効率が良い反面、燃料の性質に制約がある。

 外燃機関は、蒸気機関車などのように、燃焼ガスを直接使うのではなくて、燃焼の熱を作動ガス(主に水蒸気)に与え、この作動ガスがピストンを押したり、タービンを回転させるなどの仕事をするものである。熱効率が低いが、燃料は液体(重油)・固体(石炭)・原子力・太陽熱・廃熱でもよく自由度がある。



 ニューコメンの蒸気機関

 歴史から見ると先に開発されたのは外燃機関であった。蒸気を機関に使うというアイデアは、ギリシャ時代からあったのだが、蒸気の高圧に耐えられる容器がうまくできず、爆発事故で多くの人々の命を奪った。

 イギリスの発明家・企業家であるトーマス・ニューコメンは、1712年にに鉱山の排水用として、世界初の蒸気機関を製作した。

 この蒸気機関は、蒸気に冷水を吹き込んで冷やし、蒸気が水に戻るときに生じる負圧(真空減圧)でピストンを吸引する方式であった。発明の動機はニューコメンが住んでいた村の鉱山のわき水を汲み出す、自動の「つるべ井戸」であったために往復運動を回転運動に変えていない。

 運転速度は、毎分12サイクル程度であったという。ニューコメンはこれで商売的に大成功した。なお冷水で冷やすときシリンダも冷えるので燃料効率は低く、掘り出した石炭のうち実に1/3程度がこの揚水ポンプのために消費されていたという。


 ワットの蒸気機関

 スコットランドの数学者・エンジニアであるジェームズ・ワットは、1769年に新方式の蒸気機関を開発した。これはニューコメンの蒸気機関の効率の悪さに目をつけて改良したものである。

 ニューコメンが水蒸気を冷やすのに、シリンダも冷やしてしまい、熱効率が悪くなったのを、水蒸気を復水器という別の装置まで導き、そこで蒸気を冷やす事でシリンダーが高温に保たれることとなり、熱効率が増した。

 さらに、ニューコメン機関では冷えた蒸気が縮む時の「引きの力」だけを使ってポンプを動かしていたわけだが、ピストンの往復運動を回転運動に変える機構を追加、またシリンダーの両側から交互に蒸気を入れることで「押し」にも「引き」にも蒸気圧を使うことの出来る「複動機関」を開発(1782)した。

 蒸気機関の開発では、ボイラーの爆発で多くの犠牲者を出していた。ワットは安全のために蒸気圧は上げなかった。他の者にも「高圧蒸気は使うな」と厳しく禁じていた。


 トレビシックの蒸気機関

 1801年、イギリスのリチャード・トレビシックは、ワットが禁じた高圧の蒸気を使って動く、蒸気自動車を開発した。これにより機関のパワーがアップ。大きさも 1/5 にまで小さくなった。1804年、トレビシックはこれを使って蒸気機関車を世界で初めてレールの上で走らせた。鉄道の誕生である。

 蒸気機関は大変便利なものであるが、その反面、ワットの心配は的中、ボイラーはしばしば破裂事故を起こす。大きな事故としては1865年4月27日に、アメリカ南北戦争終結の直後、南軍の兵士2200人を乗せていたミシシッピ川の蒸気船スルタナ号の汽缶が破裂し、1200人以上の死者を出すという、米国交通史上でも最悪といわれる事故が起きている。

 こうした、ボイラー事故の対策として、保険会社がつくられ、損害保険が発達したというから驚きだ。保険会社の審査により、蒸気機関の安全性は向上したが、燃料として使われた石炭は、大気汚染や地球温暖化という、環境問題を引き起こした。


参考HP Wikipedia「蒸気機関」「熱機関」・講座技術の社会史「安全基準と第三者検査」・EMANの物理学「蒸気機関の歴史」 


蒸気機関からエントロピーへ―熱学と動力技術
D.S.L. カードウェル
平凡社

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